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Google「Vertex AI」が AI 開発ツールの大本命と言われる理由

こんにちは、クラウドエース編集部です。

ChatGPT をはじめとして、AI のビジネスへ活用が今まで以上に加速しています。実際に多くの企業が DX 予算の使い道として、 AI による付加価値向上や業務改善を挙げています。
 

このような状況の中、AI / 機械学習 をアプリやシステム開発に組み込むためのプラットフォームにも大きな注目が集まっています。その中でも、特に支持されているのが Google Cloud が提供する AI 開発ツール「Vertex AI」です。
 

今回は、なぜ数多くの AI 開発プラットフォームの中でも Vertex AI が高い注目を集めているのか、その理由について解説します。

Vertex AI とは

画像の引用元: https://cloud.google.com/blog/ja/products/ai-machine-learning/create-generative-apps-in-minutes-with-gen-app-builder
 

Vertex AI とは、Google Cloud が提供するフルマネージドの機械学習プラットフォームです。これを利用することで、機械学習モデルの構築からデプロイまでを包括的に行うことができます。
 

これまで、機械学習モデルの構築をするとなると、データの収集、処理、トレーニング、デプロイ、モニタリングなど、それぞれ目的ごとに細分化されたツールを組み合わせて行う必要がありました。結果として、ツール間のデータの互換性が低くなってしまったり、モデルの構築までに時間がかかり過ぎてしまったりという問題が生じていました。
 

このような課題を解決し、開発者が容易に機械学習モデルを構築・デプロイできるようにするために誕生したのが、Vertex AI です。Vertex AI では、ひとつのプラットフォーム上でデータの取り込みから、分析・実装までのワークフローを一貫して行えます。これにより、短時間で、より簡単にモデルを構築することが可能となります。
 

実際に多くの企業が Vertex AI を利用して機械学習モデルの構築を効率化しています。例えば、アメリカで家具の大手ECサイトを運営する Wayfair は、Vertex AI を導入することで大規模なモデルのトレーニング ジョブを 5~10 倍高速化しています*。さらに同社は、試験回数の増加、コーディングの削減、本番環境に導入するモデルの増加という結果も出しています。
 

*参照元:https://www.forbes.com/sites/googlecloud/2021/11/29/3-steps-to-scale-ml-models-and-drive-more-business-impact/?sh=4a8bcd903431
 

このように、Vertex AI はエンジニアやデータサイエンティストの業務負荷を大きく削減してくれる AI 開発サービスです。これを使うことで、開発者はより快適に、より創造的に AI 開発を進められるようになります。
 

Vertex AI の特徴・強み

ここからは、なぜ他社の AI 開発プラットフォームと比べて、Google のVertex AI がAI 開発において優位性を持つのか、その具体的な理由について見ていきましょう。
 

独自の多彩な機能を搭載

1 つ目は、他社プロダクトにはない、Vertex AI 独自の多彩な機能が搭載されていることです。
 

例えば、VertexAI には機械学習モデルのハイパーパラメータを自動的にチューニングできる機能が搭載されています。これにより、エンジニアがモデルのチューニングに必要としていた時間を大幅に削減し、多くのトレーニングにリソースを割けるようになります。
 

また、VertexAI ではグラフ構造学習もサポートされています。グラフ構造学習とは、ノードとエッジから構成されるグラフデータを対象とした学習手法で、SNS 分析や化学分子の特性予測、レコメンドシステムなどの領域で大きな価値を発揮します。
 

さらに、VertexAI には機械学習のワークフローを構築・管理・実行する機能も備わっています。ワークフローを自動化し、モニタリング・管理をすることも可能で、これを利用することでデータの取り込みから本番環境へのモデルのデプロイまでの時間を大きく短縮できます。これは、実際にビジネスへ AI を組み込むために非常に重要な役割を果たしてくれます。
 

このように、機械学習のモデル構築に必要なあらゆるツールが包括的に利用できることが、Vertex AI の大きな強みです。
 

Google Cloud との統合

2 つ目は、Vertex AI はGoogle Cloud の各プロダクトとシームレスに統合できることです。
 

Vertex AI は、ストレージやデータベースなど、他の Google Cloud プロダクトと簡単に連携できます。特に、BigQuery に代表される Google のデータ分析ツールとの組み合わせが可能なことは、大きな強みと言えます。
 

例えば、Vertex AI と BigQuery を統合することで、 データの保存と取り込み、ML モデルの構築、トレーニング、デプロイ、大規模なモデルの管理までの全てを1 つのプラットフォームで行えるようになります。
 

AI / 機械学習には優れたデータインフラが必須です。そして、Google は検索で培われた非常に高度なデータインフラを持っています。このような高性能なデータプラットフォームと連携させて AI 開発できることが、Vertex AI の特徴です。
 

最小限の専門知識でトレーニング可能

3 つ目は、最小限の専門知識でトレーニングが可能なことです。
 

AI 開発ツールがこれだけ大きく注目を集めている中でも、まだそれを活用するのは難しいと感じている人も少なくありません。機械学習のエンジニア人材不足も相まって、プラットフォームの使いにくさや複雑さが開発の生産性を下げる原因となっているケースも多いでしょう。
 

Vertex AI の特徴のひとつは、他社の AI プラットフォームと比較して運用難易度が低いことです。Vertex AI のトレーニング方法には「AutoML トレーニング」と「カスタムトレーニング」があります。AutoML トレーニングでは、コンピュータビジョン、言語、構造化データ、会話などのトレーニング済み API を利用することで、ノーコードで簡単にトレーニングができます。カスタムトレーニングでは、高度な機械学習コーディングがサポートされており、競合製品に比べてトレーニングに必要なコードの行数を約 80% 削減可能*とされています。
 

このようなサービスにより、最低限の知識で機械学習モデルを構築できることも、Vertex AI の大きな強みと言えるでしょう。
 

*参照元:https://cloud.google.com/blog/ja/products/ai-machine-learning/how-businesses-use-google-cloud-vertex-ai
 

Google Cloud 各プロダクトとの連携

Vertex AI は、Google Cloud の他のプロダクトと組み合わせることで、データ分析、データ管理、モデルのトレーニングとデプロイなど多くのタスクをより効率的に行うことができます。ここからは、Google Cloud の代表的なプロダクトについて、Vertex AI と連携させることのメリットについて紹介します。
 

BigQuery との連携

BigQuery は、ビッグデータの高速分析を行うフルマネージド、サーバーレスのデータウェアハウスです。BigQuery と Vertex AI を連携させることで、大量のデータに対するインサイトが得やすくなり、それを基にした機械学習モデルの作成・改良を行えるようになります。
 

Cloud Storage との連携

Cloud Storage は安全・高速なオブジェクトストレージサービスです。無制限にデータを保存でき、保存したデータは必要に応じて何度でも取得できます。Cloud Storage と Vertex AI を連携させれば、機械学習モデルのトレーニングに必要な大量のデータにより簡単に容易にアクセスし、管理できるようになります。
 

Dataflow、Dataproc との連携

Dataflow は、サーバーレスかつフルマネージドのデータ処理サービスで、Dataproc は、オープンソースのデータツールを利用してデータ解析を行うためのサービスです。
 

これらの大規模なデータ処理・分析を行うプロダクトとVertex AIを組み合わせることで、大規模なデータの前処理や変換を行い、その結果を機械学習モデルのトレーニングに簡単に利用できるようになります。
 

Pub/Sub との連携

Pub/Sub は、リアルタイムのメッセージングサービスです。これを Vertex AI と連携させれば、リアルタイムデータを機械学習モデルのトレーニングや予測に利用することが可能となります。
 

Vertex AI が企業活動にもたらす変革

これまで、「AI / 機械学習をビジネスに活用する」と言っても、一部の特定業務に限られることがほとんどでした。例えば E コマースにおける商品のレコメンド機能や、マーケティングにおける需要予測、チャットボット作成などです。しかし、幅広い機能を持つ Vertex AI を活用することで、AI / 機械学習の適用範囲も大きく広げられます。
 

Vertex AI により、今後は AI が一部の業務だけでなく、ビジネス全体に組み込まれるようになると考えられるのです。具体的には、各業界において以下のようなユースケースが考えられます。
 

  • 産業の自動化と効率化: 製造業での品質管理や予防保全、物流業での需要予測やルート最適化、エネルギー業界でのスマートグリッド管理など、産業を包括的にサポートする
  • 自動運転技術: 自動運転システムの開発において、画像認識、物体検出、センサーデータの解析などのタスクに利用される
  • 医療診断と治療支援: 医療画像の解析、病気の予測と早期発見、治療方法の最適化などに役立てられる
  • 自然言語での対話型 AI システム:本物の人間が対応しているかのような顧客サービス、チャットボット、仮想アシスタントなどを実現
  • 金融予測とリスク管理: 株価予測、クレジットスコアリング、不正検知、投資戦略の最適化などのタスクに利用される

このように、Vertex AI を利用することで、単一のタスクを自動化するだけでなく、ビジネス全体のプロセスの中に AI を簡単に組み込めるようになることが予想されます。
 

まとめ

ここまで、Google Cloud のVertex AI が AI / 機械学習の開発ツールとして高く支持されている理由について解説してきました。本記事を参考に、Vertex AI を機械学習のモデル構築にぜひ活用してください。

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