クラウドエース株式会社マーケティング部では、「業務を半分に減らし、成果を1.5倍にする」という目標を掲げ、日々の業務の見直しに取り組んでいます。本プロジェクトではまず、私たちが日々の業務で行っている「考える」「思い出す」「調べる」「話す」「聴く」「決める」「入力する」といった頭の使い方を一つひとつ分けて整理し、どの業務にどのような作業が含まれているのかを見える化しました。そのうえで、「AIに任せられること」「AIと一緒に進めること」「人がやるべきこと」を改めて整理しました。単に時間を短くするだけでなく、メンバーが企画やお客様への提案など、人にしかできない仕事に集中できる環境づくりを目指しています。

課題

  • コラム・技術解説記事の新規執筆では、競合調査・構成案作成・本文執筆・ファクトチェック・公開までに月24時間を要しており、執筆量と更新頻度がボトルネックとなっていた。
  • 1to1パーソナライズメールの作成では、対象企業ごとの最新ニュース調査と課題仮説の言語化に月30時間を要しており、配信品質と配信量の両立が困難だった。
  • LLMOの効果測定では、生成AIに何十パターンものプロンプトを入力して、自社がどのように評価されるかの確認・レポーティングに月5時間を要しており、非効率だった。

対応と結果

  • SEOノウハウを詰め込んだプロンプトで構成案・記事草案を生成し、人間が確認と清書を実施。月24時間から12時間への短縮に成功し、安定運用ができるようになった。
  • Gemini Enterpriseで作成したAIエージェントを活用し、各企業の最新動向を深く分析。一社一社の状況に即した提案を届けられる体制を構築。月30時間から3時間への短縮に成功し、品質を維持しながら配信量の拡大を進められるようになった。
  • Gemini APIで特定プロンプトを定期検索させ、回答の推移や自社の言及有無をスプレッドシートに蓄積。月5時間から30分への短縮に成功し、リサーチの負担を大幅に軽減した。

仕事の「頭の使い方」を見える化し、AIに任せる業務を見極める

本プロジェクトの出発点は、マーケティング部の全業務を一度しっかりと棚卸しすることでした。「何をしているか」だけでなく、「どのような頭の使い方で仕事を進めているか」に着目し、各タスクを細かな作業単位に分解していきました。たとえば競合分析レポートの作成であれば、「調べる(情報収集)」「思い出す(過去データの参照)」「考える(分析・解釈)」「決める(示唆の抽出)」「入力する(レポートにまとめる)」といった要素が組み合わさっていることが見えてきます。
この分解をメンバー全員の業務に対して行い、「マーケティング部の業務タスク一覧」として整理しました。各タスクについて、AIに任せられる度合い(1〜5段階)と削減インパクトを評価したところ、コラム執筆(月24時間)、1to1パーソナライズメール(月30時間)、LLMOの定点観測(月5時間)など、「調べる・入力する」中心の業務が、まずAIに任せるべき領域として浮かび上がりました。一方、「ひらめく」「決める」といったアイデア出しや判断を伴う領域は、人が担うべき仕事として位置づけ、AIと人の役割分担を明確にしています。

SEO・LLMOコンテンツ領域の進化──時短だけでなく、分析の精度も向上

特に大きな変化が生まれたのが、SEO・コンテンツ領域です。社内ガイドラインである「SEO対策メソッド」に沿って、共有Gem「SEOコンテンツスペシャリスト」をはじめとするカスタムGemをチーム全員で活用する体制を整え、キーワード選定から構成案・記事草案の作成、メタディスクリプションの生成までをAIで一気通貫にサポートできるようにしました。
数字で見ると、SEOメタディスクリプションの一括作成は約90%、コラムの新規執筆は約50%の時間削減を実現し、平均作業時間は24時間→12時間に短縮されました。創出された時間は、競合との差別化ポイントの検討や、自社ならではの実績・推奨設定といった「人にしか書けない情報」を盛り込むことに充てられるようになりました。
質の面でも、AI検索(LLMO)への対応として、Gemini APIを用いて毎月50件のプロンプトを定点観測し、自社がどの程度言及されるか計測する仕組みを内製。月5時間の作業を30分に圧縮できました。コンテンツ作成のAI活用に加えて、LLMOの効果検証も自動化するというこれらの作業により、効率的な生産はもちろん、分析をもとにした改善実施のサイクルを実現できました。なお「ファクトチェックは必ず人が行う」というルールを徹底し、スピードと信頼性を両立しています。

部全体への横展開とOps改革──成果と今後の展望

上記AIによる業務時間削減で得られたノウハウは、IS(インサイドセールス)/メールマーケティングOpsへも広がっています。施策の一つである1to1パーソナライズメールは、Gemini Enterpriseで作成した複数のAIエージェントを活用。対象企業ごとの最新ニュース調査と分析、課題仮説の文面作成により、作業時間が月30時間から3時間へと短縮。企業へのアプローチにおいて、品質を維持しながら配信量の拡大を進められる体制を整えました。また、休眠顧客向けシナリオメール、名寄せやリスト重複チェック、リードソース別の商談化率分析のサポートなど、インサイドセールスの業務も、AIによる「本質的な気づき」を活かす形へと進化しています。
業務効率化やプロセス最適化の領域では、Slackログからのタスク自動起票、会議録画の自動収集GAS、マーケティング部の各施策における連携提案もAIによって行われ、誰もが恩恵を受けられる仕組みづくりを進めています。
ご紹介したのは一部で、これらAI活用によって得られた恩恵をトータルすると、試算ベースでマーケティング部全体では月間約200時間相当の工数削減効果が見込まれています。今後は、AIが生み出す気づきを活かしたキャンペーン企画の精度向上、マーケティング業務に特化したAIエージェントの内製、さらに全社展開によるスケールを計画しています。AIと人の最適な役割分担を追求し続け、生産性と創造性を両立する新しい働き方を実現していきます。

プロジェクトリーダーの声

正直なところ、最初は「本当に業務を半分に減らせるのだろうか」と半信半疑でした。しかし、メンバー一人ひとりの業務を「頭の使い方」で分解し、「マーケティング部の業務タスク一覧」として整理すると、驚くほど多くの時間を「調べる」「入力する」といった作業に費やしていたことに気づかされました。
同時に、数字の可視化によって「ここまで時間を使っていたのか」という共通認識がチームに生まれました。今では、AIが下準備を整えてくれている間に、私たちは「この施策で本当にお客様に価値を届けられるか」「マーケティング部として、どのような強みを会社に提供できるか」といった本質的な議論に時間を使えるようになりました。AIは仕事を奪う存在ではなく、私たちが人にしかできない仕事に集中するための頼れるパートナーである。そう実感しています。

長汐 祐哉


この記事を共有する