Compute は、GCP(Google Cloud)が提供するクラウドコンピューティング関連のプロダクト群で、アプリケーションやサービスを実行するための仮想マシンやコンテナ環境を提供しています。本記事では GCP の主要な5つのプロダクトについて概要やメリット、機能、ユースケースなどを解説いたします。 また、Amazon の AWS や Microsoft の Azure も同様にコンピューティングのプロダクトを提供しており、GCP の各プロダクトと類似する AWS や Azure のプロダクトについても紹介していきます。ぜひ、クラウド活用の際の参考にしていただけましたら幸いです。目次 ToggleCompute Engine(コンピュートエンジン)App Engine(アップエンジン)Kubernetes Engine(クーバネテスエンジン)Cloud Functions(クラウドファンクション)Anthos(アンソス)まとめCompute Engine(コンピュートエンジン)Google Compute Engine(GCE)は、GCP の仮想マシン(VM)インフラストラクチャサービスであり、ユーザーがクラウド上で柔軟でスケーラブルなコンピューティングリソースを簡単に利用できるようにします。GCE は、オンデマンドで VM インスタンスを作成、実行、停止できるため、高速な開発やテスト環境の構築が可能です。 GCE では、さまざまなサイズの VM インスタンス、オペレーティングシステム、ストレージオプションを選択できるため、アプリケーションやプロジェクトのニーズに合わせて最適な環境を構築できます。また、オートスケーリング機能により、リソース使用量に応じてインスタンス数を増減でき、コスト効率の高い運用が実現します。 GCE は、他の GCP サービスとシームレスに連携できるため、クラウドストレージ(Google Cloud Storage)、データベース(Cloud SQLやFirestore)、ML フレームワーク(TensorFlow)などの統合が容易に行えます。これにより、システム全体の開発や運用の効率が向上します。 総合的に見ると、GCE は、高速で柔軟なコンピューティングリソースをクラウド上で提供しており、、幅広いアプリケーションやビジネスニーズに対応可能なサービスです。ユースケースウェブアプリケーションのホスティング: GCE を使用して、ウェブアプリケーションやモバイルアプリのバックエンドをホストできます。オートスケーリング機能を活用することで、トラフィックの変動に応じて VM インスタンスの数を自動的に調整し、コストとパフォーマンスを最適化できます。バッチ処理: 大量のデータを一括で処理するバッチジョブを GCE で実行できます。例えば、データ分析、ログ分析、リアルタイム以外のデータ処理などが考えられます。GCE のプリエンプティブル VM インスタンスを使うことで、コストを抑えつつ、大量のコンピューティングリソースを活用できます。CI/CDパイプライン: GCE を使って継続的インテグレーション(CI)や継続的デリバリー(CD)のパイプラインを構築できます。開発チームは、コードの変更を自動的にビルド、テスト、デプロイすることで、開発速度を向上させることができます。ゲームサーバー: オンラインゲームのサーバーを GCE でホストすることができます。高速で安定したインターネット接続と、グローバルなインフラストラクチャを活用することで、ゲームのロード時間を短縮し、ラグの無いスムーズなゲームプレイを実現します。これにより、世界中のプレイヤーが遅延なくゲームを楽しむことができます。機械学習や AI: GCE を使って、機械学習モデルの学習やその学習結果を使った予測処理を行うことができます。Google が提供する強力な GPU や TPU を活用することで、高速なモデル学習が可能となります。また、TensorFlow や PyTorch などの機械学習フレームワークとの統合も容易です。AWS、Azure、GCP 類似プロダクトの特徴や強みGoogle Cloud Engine (GCE): Google のデータセンターが強みで、低遅延ネットワークを提供します。さらに、Live Migration 技術によりメンテナンス時のダウンタイムを削減できます。Amazon Elastic Compute Cloud(EC2): 市場シェア No.1 を誇り、多様なインスタンスタイプが利用可能です。また、AWS の幅広いサービスとの統合性が魅力です。Azure Virtual Machines: Microsoft 製品とのシームレスな連携が特徴。特に企業向けソリューションやハイブリッドクラウド環境での利用に強みがあります。App Engine(アップエンジン)Google App Engine(GAE)は、GCP の Web アプリケーションプラットフォームです。PaaS サービスの一つでもあります。GAE を使うことで、アプリケーションの開発、実行、スケーリングを簡単かつ効率的に行うことができます。 GAE は、主に Web アプリケーション、モバイルバックエンド、API、マイクロサービスの開発などに使用されます。開発者は GAE を使用することで、スケーラブルで信頼性の高いアプリケーションを構築し、それをグローバルに展開することができます。 また GAE は、スケーリングに関する問題も解決します。トラフィックが増加した場合には、自動的にリソースが追加されるため、アプリケーションのパフォーマンスを維持し、ユーザーに快適な体験を提供できます。 GAE は他の GCP サービスと統合されています。GCP の管理ツールである Google Cloud Console を使用すれば、開発者はアプリケーションのデプロイ、モニタリング、管理を一元的に行えます。ユースケースWebアプリケーションの開発:Python、Java、Node.js、Go、Ruby、PHP などの複数のプログラミング言語を使用して Web アプリケーションを開発できます。さらに、GCP が提供するデータベースやストレージなどのサービスを使用すれば、アプリケーションに簡単に新しい機能を追加したり、拡張したりできます。モバイルバックエンドの構築:GAE はモバイルアプリケーションのバックエンドとしても利用できます。開発者は、Google Cloud Endpoints を使用して、RESTful API を作成し、モバイルアプリケーションとの通信を簡単に行えます。ゲームサーバーの構築:GAE はゲームサーバーの構築にも最適です。例えば、Google が提供する高速でスケーラブルな NoSQL データベース「Cloud Datastore」を使用することで、ゲームのプレーヤーデータを管理できます。マイクロサービスの開発:GAE はマイクロサービスアーキテクチャの開発にも適しています。GCP の非同期のメッセージング サービス「Pub/Sub」を使用することで、異なるサービス間であっても非同期的に通信できるようになります。高負荷サイトのホスティング:高負荷の Web サイトやアプリケーションのホスティングにも利用できます。自動スケーリング機能により、トラフィックが急増した場合でも、アプリケーションのパフォーマンスを維持できます。AWS、Azure、GCP 類似プロダクトの特徴や強みGoogle App Engine(GAE):NoSQLデータストア「Google Cloud Datastore」を利用可能です。トラフィックの増減に対して柔軟に対応できるなどスケーラビリティが高く、高速なアプリケーション開発を実現できます。AWS Elastic Beanstalk:豊富なデプロイツールが用意されており、アプリケーションの開発、デプロイ、管理を一元的に行うことができます。マルチ AZ 構成をサポートしており、高可用性も確保されています。Azure App Service:サポートされる言語が多いため、多言語のアプリケーション開発に向いています。サービスプランによってはコンテナを使用することができ、アプリケーションのカスタマイズ性が高いです。Kubernetes Engine(クーバネテスエンジン)Kubernetes Engine(GKE)は、GCPで提供されるフルマネージドの Kubernetes サービスです。Kubernetes は、コンテナ化されたアプリケーションをデプロイ、スケーリング、管理するためのオープンソースのコンテナオーケストレーションツールであり、世界中の企業で広く利用されています。 GKE は、Kubernetes クラスタのプロビジョニング、クラスタのアップグレード、パッチ適用、ネットワーキング、モニタリング、セキュリティなどの機能を提供し、Kubernetes の管理作業を簡素化します。機能とメリットスケーラビリティ:簡単にスケールアップ・ダウンが可能で、負荷増加時にもスムーズに対応できます。セキュリティ:Kubernetes のセキュリティ機能を利用して、アプリケーションとデータを保護します。また、GCP が提供する強力なセキュリティ機能も利用できます。モニタリング:統合されたモニタリング機能により、Kubernetes クラスタとアプリケーションの健全性を監視することができます。自動化:アプリケーションのデプロイ、スケーリング、アップグレードを自動化できます。統合:GCP の他のサービスと統合でき、GCP 上でのアプリケーションの開発・運用を簡素化します。 このような機能により、アプリケーションのデプロイやスケーリングをより迅速かつスムーズに行うことができるため、GKE はクラウドネイティブなアプリケーションの開発や運用に適しています。ユースケースマイクロサービスアプリケーションのデプロイ:複数のマイクロサービスを含むアプリケーションをデプロイできます。サービスディスカバリ、ロードバランシング、スケーリング、および自動復元などの Kubernetes の機能が自動化されるため、マイクロサービスアーキテクチャの実装が簡単になります。大規模なアプリケーションのスケーリング:コンテナ化されたアプリケーションを簡単にスケーリングできます。負荷を処理するのに十分なリソースがない場合、自動的に追加のノードを作成して、負荷を分散します。また、ノードがダウンした場合でも、自動的にノードを置き換えます。CI/CDの自動化:GKE は、DevOps プロセスを自動化するための強力なツールでもあります。コンテナイメージを簡単にデプロイできるように、Google Cloud Registry などのクラウドストレージサービスと統合されています。また、Jenkins や CircleCI などの CI/CD ツールとも統合されており、DevOps プロセスの自動化を簡単にしてくれます。ハイブリッドクラウドの構築:オンプレミス環境とクラウド環境の両方で動作するため、ハイブリッドクラウド環境の構築にも使えます。オンプレミスとクラウドのリソースを自動的に統合し、一元化された管理と監視を可能にします。AWS、Azure、GCP 類似プロダクトの特徴や強みKubernetes Engine(GKE):Googleのグローバルネットワークを利用した高速な通信が可能です。GCP のツールやサービスと強力に統合でき、GCP 上でのアプリケーションの開発・運用をスムーズに行えます。Amazon Elastic Kubernetes Service(EKS):AWS の多様なサービスとの連携が可能で、AWS 上のインフラストラクチャとのシームレスに統合できます。カスタマイズ可能なインストールやバージョンアップにも対応しており、Kubernetes に熟練したユーザーに適しています。Azure Kubernetes Service(AKS):仮想ネットワーク内で Kubernetes クラスタをプロビジョニングするためのツールが備わっています。クラウド環境内でのハイブリッドアプリケーションの展開に適しています。Cloud Functions(クラウドファンクション)Cloud Functions は、GCP のサーバーレスコンピューティングサービスです。Cloud Functions を使えば、指定したイベントをきっかけに関数を実行してくれるため、ユーザーはコードを書くことに集中してアプリケーションを開発できるようになります。 Cloud Functions では、ユーザーはコードをデプロイし、それを呼び出すためのトリガーを定義することで、イベント駆動のアプリケーションを構築できます。また、Cloud Functions はフルマネージドのサービスであり、ユーザーがオペレーションに費やす時間やリソースを最小限に抑えることができます。 Cloud Functions がサポートしているトリガーは、多岐にわたります。Google Cloud Pub/Sub や Google Cloud Storage など GCP のサービスからのトリガーだけでなく、HTTP リクエストや Cloud Scheduler など、外部からのトリガーにも対応しています。また、JavaScript、Python、Go、Ruby、.NET などの複数の言語でコードを書くことができます。 Cloud Functions は、主にイベント駆動型のマイクロサービス、Webhook の処理、バックグラウンドジョブの実行、サードパーティの API の集約などに使われます。コードが呼び出されるごとの課金となるため、一時的な処理や頻繁に実行されない処理を実行するための適切なサービスと言えます。ユースケース・機能イベント処理:イベントをトリガーとして起動するコードを記述できます。例えば、新しいメールが受信された場合、そのメールを処理する関数を記述・実行できます。データ処理:Google Cloud Storage、Firebase Realtime Database、Cloud Firestoreなど、GCP のデータストレージサービスと連携できます。これらのサービスからデータを取得・処理し、必要なタスクを完了できます。Webhook 処理: 外部システムから送信された Webhook の処理にも適しています。例えば、GitHub から送信された Webhook を処理して、自動的にビルドを実行できます。バッチ処理: 定期的なタスクを自動化することもできます。例えば、特定の時間になったら、データベースからデータを抽出して、処理を実行させることが可能です。API エンドポイント: REST API のエンドポイントとしても使用できます。これは、外部からのリクエストに応答するために使用され、データの取得や更新、処理などを実行できます。AWS、Azure、GCP 類似プロダクトの特徴や強みCloud Functions: JavaScript、Python、Go、Java、.NET Core などの言語に対応。Google Cloud Storage や Google Cloud Pub/Sub、Firebase などのサービスからのトリガーを使用して、自動的にコードを実行できます。小規模な処理やサーバーレスアプリケーションの開発に適しています。AWS Lambda: Node.js、Java、C#、Go、Python、Ruby などの言語に対応。Amazon S3、Amazon DynamoDB、Amazon Kinesis などの AWS のサービスからのトリガーを使用して、自動的にコードを実行できます。幅広いサービスとの連携ができるため、ビッグデータ処理やモバイルバックエンドの開発に適しています。Azure Functions: C#、Java、JavaScript、PowerShell、Python などに対応。Azure Blob Storage、Azure Event Grid、Azure Cosmos DB などの Azure のサービスからのトリガーを使用して、自動的にコードを実行できます。Visual Studio や Visual Studio Code などの統合開発環境での開発がしやすく、企業向けのアプリケーションの開発に適しています。Anthos(アンソス)Anthos は、GCP が提供するマルチクラウド・ハイブリッドクラウドプラットフォームです。このプラットフォームは、クラウドネイティブアプリケーションを構築・実行するための環境を提供します。また、GCP 上だけでなく、オンプレミスや他のクラウドプロバイダーの環境でも利用することができます。 Anthos は、Kubernetes、Istio、Cloud Run などの様々なクラウドネイティブテクノロジーを組み合わせたプラットフォームです。このプラットフォームを使うことで、Kubernetes を使用したアプリケーションのデプロイやサービスメッシュの設定、サーバーレスコンピューティングの実行など、幅広いアプリケーションを展開できるようになります。 Anthos の大きな特徴として、GCP、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure など、さまざまなクラウドプロバイダーの環境でも動作するという点です。これにより、プラットフォーム間の移行やリソースの統合容易になり、企業はクラウドプロバイダーに依存することなく、最適な環境でアプリケーションを展開できるようになるのです。 なお、Anthos はセキュリティにも重点を置いており、ポリシーコントロールや監査、ログ管理、リスクマネジメントなどの機能を提供しています。これにより、マルチクラウド環境でも安全にアプリケーションを展開できます。 このように Anthos は、企業や開発者にとって、クラウドネイティブなアプリケーションを開発、管理、保護するための包括的なプラットフォームと言えるでしょう。ユースケースハイブリッドクラウド環境でのアプリケーションの管理:GCP だけでなく、他のクラウドプロバイダー上に展開されたアプリケーションも統合的に管理できるため、異なるクラウドプロバイダー間でのアプリケーション移行が容易になります。コンテナ化されたアプリケーションの管理:Anthos は、Kubernetes をベースにしたコンテナオーケストレーションエンジンである Google Kubernetes Engine(GKE)と統合されています。そのため、コンテナ化されたアプリケーションを簡単にデプロイ、管理することができます。マイクロサービスアーキテクチャでのアプリケーションの管理:Anthos は、Google の Istio プロジェクトをベースにしたサービスメッシュ機能を提供しています。そのため、複数のマイクロサービスを組み合わせて構成されるアプリケーションを効率的に管理できます。アプリケーションのハードニングとセキュリティの向上:Anthos は、Google のセキュリティエキスパートが設計した機能を備えています。例えば、セキュリティ向上のために、アプリケーションを実行するノード上でランダムに生成されたアクセス許可が適用される Google の gVisor コンテナランタイムを使用できます。AWS、Azure、GCP 類似プロダクトAnthos の類似プロダクトとして、Microsoft Azure では Azure Stack、AWS では AWS Outposts というプロダクトが提供されています。それぞれのプロダクトでできることは以下の通りです。 サービスAzure StackAWS OutpostsAnthosオンプレミス◯◯◯クラウドに接続◯◯◯ハイブリッドクラウド◯◯◯オンプレミスとクラウド間のアプリケーションの移行◯◯◯オンプレミスとクラウド間のデータの移行◯◯◯マルチクラウド環境での使用××◯Kubernetes◯◯◯ハイブリッドクラウド管理Azure PortalAWS Management ConsoleGoogle Cloud Console対応 OSWindows、LinuxWindows、LinuxWindows、Linux まとめGCP の各種コンピューティングリソースは、それぞれ異なる要件と目的に対応するように設計されています。GCE は汎用的なコンピューティングリソースを提供し、GAE はアプリケーション開発とデプロイメントを簡単にします。一方、GKE はコンテナ化されたアプリケーションの管理を助け、Cloud Functions はイベント駆動型のワークロードに適しており、Anthos はハイブリッドとマルチクラウド環境の運用を支えます。企業は自身のニーズに最適なソリューションを構築することができます。Google Cloudのコンピューティングリソースを理解し、適切に活用することで、ビジネスの拡大とイノベーションを加速することが可能です。 弊社クラウドエースは、Google Cloud のプロバイダとして、1,000社以上の企業様に Google Cloud を導入いただいております。クラウドの導入支援や、Google Cloud での開発支援など、お客様一社一社のビジネス要件を理解し、ニーズに合った最適なクラウドソリューションをご提案しております。ぜひ、Google Cloud をご検討中でしたら下記よりお問い合わせいただけましたら幸いです。クラウドエースへのお問い合わせはこちら AWS、Azure、GCP 3大クラウドサービス比較表のDLはこちらから