
Google、Opalを発表 – 生成AIアプリ構築の新時代を切り開くノーコードツール
こんにちは、クラウドエース編集部のinoです。
2025年7月下旬、Google Labsはプログラミングの知識が一切なくても、まるでAIと会話する感覚で、自分だけのAIミニアプリを構築できるノーコードツール「Opal」を発表しました。
アプリ構築というと少し大げさに聞こえるかもしれないですが、本記事でも紹介しているように実際に日々の業務でのちょっとしたお困りごとをChatGPTやGeminiを使う感覚で解決できるツールを目指していると思われます。
この記事を読めば、Opalが持つポテンシャル、既存ツールとの違い、そして何より、あなたのビジネスをどう変革しうるのかが分かります。
Opalとは?-「会話」でAIアプリを作る新体験
Googleが発表したOpalは、一言で言うと「自然言語で指示するだけでAIミニアプリを構築・共有できるツール」です。
これまでGoogle AI Studioのようなツールは比較的開発者向けでしたが、Opalは私たちのようなビジネスパーソンや個人事業主など、コードを書かないユーザーをメインターゲットに据えたツールという点が特徴的です。では、「会話でAIアプリを作る」とは具体的にどういうことでしょうか。
例えば、あなたがOpalにこう話しかけたとします。
“毎月の売上データをスプレッドシートから読み取って、要点をまとめたレポートをドキュメントで作成して” |
Opalは、この指示を理解し、裏側で「データの入力」「要約の生成」「レポートの出力」といった一連の作業(ワークフロー)を自動的に組み立てます。ユーザーは、コードを一行も書くことなく、ただやりたいことを言葉で伝えるだけで良いのです。
さらに、Opalが組み立てたワークフローは視覚的に表示されるため、「AIが今何をしてくれているのか」を直感的に理解でき、細かな調整も可能です。
このように、具体的な指示だけでなく、アイデアや「こんな感じ」といった雰囲気(Vibe)を伝えるだけで開発が進むスタイルは、「バイブコーディング」とも呼ばれています。Opalは、専門知識ではなく、あなたの「こうしたい」という想いを形にする、新しい時代のツールなのです。
Opalで何ができる?具体的な機能がわかるユースケース
Opalの真価は、Googleが保有する多様なAIモデルやツールと連携できる点にあります。現時点で連携するモデルの具体的な名称は公表されていませんが、将来的にはテキスト生成の「Gemini」ファミリー、画像生成の「Imagen」、さらには動画生成の「Veo」といったGoogleの最新AIモデルとの連携が強化されることで、より複雑なタスクを自動化できると期待されています。
例えば、以下のようなアプリが、あなたの指示一つで実現可能です。
ブログ記事執筆アプリ | トピックを指定するだけで、AIがリサーチから構成作成、本文執筆までを自動で行います。将来的には、画像や動画生成AIとの連携が深まれば、記事に合った画像の生成や、内容を要約したショート動画の作成まで一気通貫で行えるようになるかもしれません。 |
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YouTube学習支援アプリ | 参考書代わりにYouTube動画のURLを渡せば、AIがその内容を要約し、理解度をチェックするためのクイズを自動で生成してくれます。 |
SNS投稿支援アプリ | 新製品の情報などを入力するだけで、X(旧Twitter)向けの魅力的な投稿文を複数パターン作成してくれます。 |
ビジネスプロファイラー | 競合企業のサイトURLを入力すると、事業内容や強み・弱みを分析し、分かりやすいレポートとしてまとめてくれます。 |
これらはほんの一例です。テキストだけでなく、Googleドライブ上のファイルや画像などもインプットとして使えるため、アイデア次第で活用の幅は無限に広がります。
他のAI開発ツールとの違いは?Opalの立ち位置
Opalの独自性を理解するために、同じGoogleが提供する「Google AI Studio」や、競合であるMicrosoftの「Microsoft Copilot Studio」と比較してみましょう。これらは一見似ているようで、解決しようとしている課題が明確に異なります。
Opal | Google AI Studio | Microsoft Copilot Studio | |
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解決する課題 | 個人のアイデアやタスクの超高速プロトタイピング | 開発者による生成AIモデルの実験とプロンプト調整 | 企業データと連携したカスタムCopilot(AIボット)の構築・拡張 |
メインターゲット | ビジネスパーソン、企画担当者など(非エンジニア) | 開発者、AIエンジニア | ビジネスユーザー、IT管理者、プロの開発者(エンタープライズ) |
開発スタイル/思想 | 自然言語での指示(バイブコーディング) | GUIでのプロンプト試行とコード生成 | グラフィカルな対話ビルダーとプラグイン/コネクタによる拡張 |
強み | 圧倒的な手軽さとスピード。アイデアを即座に形にする力。 | 最新のGeminiモデルへの迅速なアクセスとAPI統合の容易さ。 | Microsoft 365との緊密な連携。エンタープライズ向けの管理機能。 |
この比較からもわかるように、各ツールはその目的とターゲットユーザーが明確に異なっています。
まずGoogle Opalは、プログラミング知識のないビジネスパーソンが主役の「アイデアの実験場」です。「こんなことができたら便利かも」という個人のひらめきを、その場で即座に形にすることに特化しています。
一方、Google AI Studioは、開発者が最新AIモデルの性能を試し、自社のアプリに組み込むための調整を行う「AIモデルの性能評価ラボ」と位置づけられます。最終的なゴールは、あくまでAPIを介したシステムへの統合です。
そしてMicrosoft Copilot Studioは、Teamsのような社内システムと深く連携させ、企業独自のAIチャットボットを構築・管理するための、より大規模なエンタープライズ向けプラットフォームと言えるでしょう。
つまりOpalの真価は、大規模なシステム開発ではなく、あくまで個人やチームレベルの業務を、手軽に、そして素早く効率化する点にあるのです。
Opalがビジネスの現場にもたらす効率化3選
Google Opalは、ビジネスの現場に革命的な効率化をもたらす可能性を秘めています。特に、これまでIT専門部署を持てなかった中小企業やスタートアップにとって、その価値は計り知れません。
Opalがもたらす無数のメリットの中から、特に代表的な3つのポイントをご紹介します。
- 現場主導の「超高速DX」が加速する
- PoC(概念実証)のコストと時間を大幅に削減
- Google Workspace連携による無限の可能性
ここからは、これらのメリットがビジネスの現場でどのように活用されうるのか、一つずつ具体的に解説します。
現場主導の「超高速DX」が加速する
これまでDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるには、現場の課題をIT部門に伝え、開発を依頼する…という長いプロセスが不可欠でした。
Opalがあれば、現場の担当者が自らの手で、その日のうちにアイデアをアプリとして形にすることが可能です。これにより、業務改善のサイクルは劇的に加速します。
PoC(概念実証)のコストと時間を大幅に削減
「このアイデアは本当にうまくいくのか?」を検証するための試作品(プロトタイプ)開発には、少なくないコストと時間が必要でした。
Opalを使えば、ほぼゼロコストで、数時間後には関係者に動くアプリを共有してフィードバックを得ることが可能です。これにより、イノベーションの種をリスクなく、スピーディに育てていくことができるでしょう。
Google Workspace連携による無限の可能性
将来的には、Googleドキュメント、スプレッドシート、GmailといったGoogle Workspaceとの連携がさらに強化されると見込まれています。
例えば、「受信した請求書の内容を自動でスプレッドシートに転記し、承認依頼のメールを作成する」といった一連の業務フローを自動化できる未来もそう遠くはないでしょう。
Googleサービス内でデータが完結するため、セキュリティ面での安心感が高いのも企業にとっては大きなメリットです。
2025年7月時点ではOpalはパブリックベータ版として提供
素晴らしい可能性を秘めたOpalですが、現時点(2025年7月)では米国限定のパブリックベータ版としての提供であり、日本国内での利用開始時期は未定です。また、出力が英語に限定される場合があるなど、まだ発展途上の部分もあります。
しかし、Googleがこの分野に本格参入したインパクトは絶大です。今のうちからOpalで何ができるのかを理解し、自社の業務にどう活かせるかを考えておくことが、未来の競争優位性に繋がるはずです。
まとめ
今回は、Googleが発表した革新的なノーコードAIアプリ構築ツール「Opal」について解説しました。
- プログラミング不要!自然言語で誰でもAIアプリが作れる
- Googleの最新AIと連携し、リサーチから動画生成まで自動化
- ビジネスの現場主導で、超高速なDXと業務改善を実現する
Opalは、一部の専門家のものであったAI開発を、すべてのビジネスパーソンに解放する「民主化」の象徴になるかもしれません。「アイデアを即アプリ化して検証する」「ちょっとした日々のタスクを自動化する」それを誰もが当たり前のように日々行う未来。それはすぐそこまでやってきていると思います。
私たちクラウドエースは、引き続きGoogleの最新動向をウォッチし、皆様の業務効率化のヒントになるような情報をお届けしていきます。本記事で紹介したOpalについても引き続き最新情報のアップデートを行っていきたいと思いますので、ぜひクラウドエースのコラムをチェックしていただけると嬉しいです。