クラウドエースのテクニカルサポートチームは、Google Cloudのプロフェッショナルとして、常に「高品質の回答を、最速で届けること」を追求しています。本プロジェクトは、単なる効率化を目指したものではありません。膨大な技術情報やドキュメントの「調査・集約」をAI Agentが一人の専門担当者として迅速にサポートすることで、エンジニアが「エラー原因の正確な特定や仕様の確認」という、人間にしかできない本質的な技術検証に集中できる環境を構築しました。AI Agentとエンジニアが役割を補完し合うことで、より確実で安定したサポートを提供することを目指しています。

課題

  • Google Cloudの急速な進化に伴い、最新ドキュメントの調査に多大な時間を要していた。
  • AI Agentによる自動回答はハルシネーションのリスクを伴うため、信頼性が第一のサポート業務において導入には慎重な判断が必要だった。利便性とエンタープライズ品質の両立が最大の壁となっていた。
  • 社内ガイドラインに沿った回答作成に時間をかける必要があり、トラブルシューティングやスピーディーな回答という本質的な部分に使う時間を圧迫していた。

対応と結果

  • AI Agentが関連ドキュメントを即座に抽出し、回答案を構成する仕組みを導入。調査時間を大幅に短縮した。
  • クラウドエースのガイドラインを遵守し、AI Agentの生成回答に対する、業務担当者の最終確認を必須化。AIのスピードと、プロフェッショナルによる確かな判断を組み合わせた、隙のないサポート品質管理体制を確立した。
  • AI Agentを適用することにより対象プロセスの工数を大幅に削減。本質的な業務に十分な時間を割けるようになった。

業務の「棚卸し」とAI Agentへの戦略的置き換え

本プロジェクトの出発点は、現行業務(AS-IS)の徹底的な分解でした。テクニカルサポートチームの全タスクを、「顧客受付」「チケットアサイン」「参考情報調査」「回答文作成」「レビュー」といった作業単位に細分化しました。
それぞれのタスクに対し、「難易度」「自動化による効果」「定量的インパクト」の観点から5段階評価を実施。その結果、特に「公式ドキュメントからの参考情報の調査」や「1次回答のドラフト作成」といった、情報を集約・整理する工程においてAIの活用メリットが最大化されることが判明しました。
一方、テクニカルサポートとしての最終的な「正当性の判断」や、お客様への送信作業については、エンジニアが担うべき重要な領域として定義。このように「AI Agent」を業務フローのどこに組み込むべきかの役割分担を明確にすることで、迷いのないAI導入を実現しました。

「Human-in-the-Loop」によるエンタープライズ品質の担保

AIを実務に導入する際、最も重視したのは「品質の担保」と「ガバナンス」の両立です。
クラウドエース株式会社の「生成AIの社内利用ガイドライン」に則り、AIが生成した回答文をそのまま顧客へ回答するのではなく、AIが作成した案に対し、担当者本人に加えてレビュアーがチェックする既存のフローを踏襲するようにしました。
「AIの回答を完全に正しいものだと妄信せず、人間が最終確認する」という前提のもと、いつ、誰がチェックを行ったかのログを記録することで、AIの利便性を享受しつつ、エンタープライズ企業にふさわしい信頼性の高いサポート体制を維持しています。

「時間を作る」ことで実現する、一段上のプロフェッショナル支援

今回のプロジェクトで得られた「大幅な工数削減」という成果は、決して作業を簡略化した結果ではありません。むしろ、お客様に提供する情報の「確実性」を高めるための投資です。
これまでは、エンジニアが技術ドキュメントの海から正解を探し出す「検索・抽出」という作業に多くのエネルギーを割いていました。しかし、この部分はAI Agentが最も得意とする領域です。AIが過去の事例や最新の技術ドキュメントを瞬時に解析し、回答の「土台」を整えることで、エンジニアは「そのエラーがなぜ起きているかの原因特定」や「仕様の裏付け」といった、より深い技術検証に時間を使えるようになりました。
これは「作業」をAIに任せ、「思考と検証」という専門家の領域を強化する試みです。チーム内でのナレッジ共有体制も強化され、クラウドエース全体として、より確実なテクニカルサポートを迅速に提供できる組織へと進化を遂げています。

プロジェクトリーダーの声

「AIを導入する」と聞いた時、私たちが最も恐れたのは、回答の画一化や質の低下でした。私たちの誇りは、お客様に寄り添い、プロとして確かな答えを出すことにあるからです。しかし、実際に取り組んで気づいたのは、AIは「作業」を代行してくれますが、「責任」と「品質へのこだわり」は人間にしか持てないということです。AIが技術ドキュメントの検索や下書きを数分で終えてくれるおかげで、私たちは「この回答でお客様のトラブルは確実に解決するか?」という、技術的解決に今まで以上に向き合えるようになりました。このプロジェクトは、決して「仕事を楽にするため」のものではありません。エンジニアがその専門性を最大限に発揮し、お客様へ迅速に価値を届けるための「品質向上プロジェクト」です。AIという強力なパートナーを得て、私たちのサポートは次のステージへ進んだと確信しています。

小島 竜太


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