GoogleのAIリサーチツール「NotebookLM」に、よりパワフルな上位版「NotebookLM in Pro」が登場しました。
「無料版でも十分高機能だけど、Pro版は何がすごいの?」「料金を払う価値は本当にある?」
こうした疑問を解消するため、本記事ではNotebookLM in Proの基本から無料版との決定的な違い、料金プラン、そして具体的な始め方まで、最新情報を徹底的に解説します。
Pro版の価値は、一度に扱える資料の数が大幅に増加する点。本稿を読めば、あなたのリサーチなどの業務にその処理能力が必要かどうかが明確になるはずです。
NotebookLM in Pro(旧Plus)とは?
NotebookLM in Proとは、Googleが提供するAIリサーチアシスタント「NotebookLM」の有料上位プランです。無料版の基本機能はそのままに、一度に扱える情報量を大幅に向上させています。Pro版の最大の違いは、機能の有無よりも「一度に分析できる資料の量」にあります。
無料版でも数十の資料をソースとして読み込めますが、Pro版ではその6倍にあたる数百個の資料を一度にノートブックへ投入し、横断的な分析や対話が可能になります。これは、単に機能が追加されるというより、扱える情報量の変化によって、リサーチの質そのものを向上させるアップグレードと考えると分かりやすいかもしれません。
この「一度に扱える情報量が大幅に向上する」という特徴は、様々な専門分野で大きな効果を発揮します。例えば、論文を読み込む学生や研究者、複数の市場調査レポートから戦略を練るビジネスアナリストやコンサルタント、過去の判例を調査する法律専門家、複雑な技術仕様書を扱う開発者など、幅広い専門職の業務効率を向上させるでしょう。
なお、NotebookLM in Proは単体で契約するものではなく、「Google AI Pro」プランの特典の一部として、または法人で対象のGoogle Workspaceプランを利用している場合は、追加料金なし、あるいはアドオンとしてPro機能が利用できることがあります。くわしくは後述しています。
Googleが提供するAI搭載リサーチアシスタントの進化版
NotebookLMは、一般的な検索エンジンとは異なり、あなたがアップロードした特定の資料(ソース)だけを情報源とする、パーソナルなAIアシスタントです。
その頭脳部分は常にアップデートされており、現在はメイン機能であるテキストチャットに、AIモデル「Gemini 2.5 Flash」が搭載されています。このモデルは、応答速度を重視した軽量版でありながら、複雑な問いに応えるための高度な推論能力も兼ね備えているのが特徴です(※ただし、このモデルが採用されるのはテキストチャットでの応答のみで音声や動画の要約など一部の機能では、異なるAIモデルが利用されます)。
NotebookLM in Proが「進化版」と位置付けられる理由は、無料版が「いくつかの資料について質問に答えてくれるアシスタント」だとすれば、NotebookLM in Proは「数百の資料群をすべて統合した一つの知識体系そのもの」と対話するような体験を提供するからでしょう。これにより、個々の資料を要約するだけでなく、人間では見過ごしてしまうような、資料と資料の間に隠された未知の関連性を発見するといった、新たなリサーチの段階に進むことが可能になります。
NotebookLM in Proが目指す「リサーチとインサイト抽出の新しい形」
Pro版が目指すのは、単なる情報整理の効率化に留まりません。それはリサーチと、そこから得られる洞察(インサイト)の質そのものを変えることです。
従来のリサーチでは、人間が一つ一つの資料を読み解き、頭の中で情報を繋ぎ合わせる必要がありました。しかしPro版では、一度に数百個の資料を読み込ませ、「すべての資料を理解したAI」をパートナーとして対話できます。
これにより、例えば「複数の市場レポートで共通して指摘されている成長分野は?」といった、これまで多大な時間を要した、あるいは不可能だった問いへの答えを瞬時に得ることが可能に。点として散らばっていた情報がAIとの対話を通じて線として繋がり、これまで見過ごされてきた新たな関係性や隠れたパターン、つまり「インサイト」が抽出されるのです。これが、Pro版が実現するリサーチの新しい形です。
【比較表あり】無料版NotebookLMとNotebookLM in Proの5つの主な違い
ここからは、無料版とPro版の具体的な機能差を5つのポイントに絞って比較します。
前述の通り両者に搭載されているAIモデルは同じですが、Pro版はその能力をより大きな規模で活用できる点が大きな違いです。Pro版の価値は単なる機能追加ではなく、一度に扱える情報量や利用回数の上限が大幅に増える点にあります。
まずは、以下の比較表で全体像をつかんでください。そのうえで、各項目の詳細を解説していきます。
機能/項目 | 無料版 | NotebookLM in Pro |
---|---|---|
作成できるノートブックの数 | 100冊 | 最大500冊 |
ノートブックあたりのソース数 | 50件 | 最大500回 |
1日のチャット質問回数 | 50回 | 最大500回 |
1日の音声生成 | 3回 | 最大20回 |
回答のカスタマイズ | ✕ | 〇 |
「チャットのみ」共有 | ✕ | 〇 |
ノートブックの分析機能 | ✕ | 〇 |
1ソースあたりの単語数 | 最大50万語 | 最大50万語 |
違い①:ノートブックあたりのソース数の上限
NotebookLM in Proと無料版の最も大きな違いが、1つのノートブックに追加できる資料(ソース)の数です。無料版の上限が50件であるのに対し、NotebookLM in Proでは300件まで増加します。
この上限数の違いが、どのような価値を生むのでしょうか。例えば、ビジネスパーソンであれば、ある製品について過去1年間にWeb上で書かれた数百件の製品レビュー、数十人分の詳細な顧客インタビューの文字起こし、社内に蓄積された数十件のサポートログやアンケートの自由回答といった、合計300件近いフィードバックを一括で投入できます。
その上で、「機能Aに関する肯定的な意見と否定的な意見の比率は? また、その理由として最も多く挙げられている具体例は何か?」といった、人間では数週間かかるような定性分析を瞬時に行うことが可能です。
「では、それほど大量の資料を読み込ませて、AIの回答の質や精度は落ちないのか?」という点が最も気になるかもしれません。NotebookLMの強みは、アップロードした資料(ソース)にのみ基づいて回答を生成する「グラウンディング」という仕組みにあります。AIがインターネットの情報や無関係な知識で勝手に回答を補完し、不正確な情報(ハルシネーション)を生み出すリスクが極めて低く設計されています。
つまりNotebookLM in Proは、この高い信頼性を保ったまま扱える情報量を大幅に拡張したものであり、資料の数が増えても回答の精度が落ちにくいのが大きな利点です。
違い②:1日の音声生成の上限
NotebookLM in Proと無料版では、読み込ませた資料の内容をAIが音声で要約してくれる「音声生成(Audio Overview)」機能の、1日あたりの利用回数が異なります。
これは、PDFやWebサイトなどのテキスト資料をAIが分析し、その内容をまるでポッドキャスト番組のように2人のAIが対話形式で解説してくれる音声を自動で作成する機能です。
無料版では、この音声の作成が1日3回までに制限されています。一方、NotebookLM in Proではこの上限が1日最大20回まで引き上げられます。専門的で長文の資料を効率的にインプットしたい場合に特に有効です。
例えば、大手製薬企業の開発担当者が、新薬開発の初期段階で、競合他社が公開している数百件の類似化合物の特許情報や、関連する臨床試験の論文を網羅的に調査する必要があるとします。NotebookLM in Proであれば、まず関心のある20本の論文の音声要約を一括で生成し、内容を耳からインプットすることで、深く精読すべき最重要文献を迅速に特定できます。これにより、リサーチの初動にかかる時間を大幅に短縮し、プロジェクト全体の効率を高めることが可能です。
違い③:作成できるノートブック数と質問回数の上限
NotebookLM in Proでは、長期的なプロジェクトや複数のテーマを並行して管理する上で重要となる、ノートブックの作成数とAIへの質問回数の上限も引き上げられます。
無料版で作成できるノートブックの上限は100冊、1日あたりのAIへの質問回数は50回です。一方、NotebookLM in Proでは、ノートブックの作成数が最大500冊、質問回数が1日あたり最大500回へとそれぞれ増加します。
では、どのような場合にこの上限を超えるのでしょうか。例えば、多数のクライアントを抱えるコンサルタントが、クライアントごとに「競合分析」「市場トレンド」「議事録」といった複数のノートブックを作成してプロジェクトを管理する場合、クライアントが20社を超えると無料版の上限に達してしまいます。
また、新しいプロジェクトの開始時など、集中的にリサーチを行う日には、数十の資料を基に「AとBの共通点は?」「Cについて5つの要点でまとめて」「その根拠は?」といった深掘りの質問を繰り返すため、1〜2時間で50回の質問上限に達してしまうことも考えられます。NotebookLM in Proは、こうした使い方を支えるための上限設定となっています。
違い④:回答のカスタマイズ
NotebookLM in Proでのみ利用できる機能の一つに、AIからの回答を自分の目的に合わせて調整できる「回答のカスタマイズ(高度なチャット設定)」があります。具体的には、回答のスタイルを「ガイド風」や「アナリスト風」といったプリセットから選択したり、回答の長さを調整したり、あるいは自由な役割をAIに指示することが可能です。
「アナリスト」スタイル
例えばコンサルティング業界で、クライアント企業の複数の事業報告書から次期戦略を提案する必要がある場合に、この機能があると単なる要約ではなく、注力すべき事業領域とその根拠といった、具体的な戦略提言の形で回答を得ることができます。
「ガイド」スタイル
例えば社内のIT部門で、新しいシステムの仕様書やマニュアルを基に、社員向けのFAQを作成しナレッジとして共有する必要がある場合に、この機能があると専門用語を避けた丁寧なガイド形式で、社員からの想定質問に対する回答をAIに自動生成させることができます。
「カスタム」スタイル
例えば製薬業界の研究者が、専門的な臨床試験の論文データを、専門家ではない役員向けに報告する必要がある場合に、この機能があると「専門用語を避け、誰にでもわかるように説明して」とAIに指示することで、複雑な情報を聞き手に合わせて分かりやすく加工させることができます。
違い⑤:高度な共有設定と分析機能
NotebookLM in Proでは、作成したノートブックを他のユーザーと共有する際に、より高度な設定や分析機能が利用できます。
一つは、共有範囲をカスタマイズできる「チャットのみ」共有です。無料版では元の資料とチャット履歴の全てが共有されますが、NotebookLM in Proでは資料へのアクセスは許可せず、AIとのチャット履歴のみを共有できます。これにより、機密情報を含む資料を扱う場合でも、分析結果だけを安全に共有することが可能です。
もう一つが「ノートブックの分析」機能です。例えばマーケティング部門が、顧客からよくある質問とその回答をまとめたノートブックを、カスタマーサクセス部門に共有したとします。この機能を使えば、カスタマーサクセスの担当者が「どの質問を最も多く参照しているか」「どのような追加の質問をAIに投げかけているか」といった利用状況のデータを確認できます。これにより顧客が本当に困っている課題や、まだマニュアル化されていない潜在的なニーズをデータから把握し、サービス改善に役立てることが可能です。
NotebookLM in Proの料金プランと利用条件
NotebookLM in Proの機能は、単体で購入するのではなく、対象となるGoogleの有料プランに加入することで利用可能になります。加入方法は、個人のGoogleアカウントか、法人・組織のアカウントかによって大きく異なります。
個人のGoogleアカウントの場合
個人ユーザーが利用する場合、「Google AI Pro」(月額2,900円 ※2025年9月時点)または、さらに上位の「Google AI Ultra」プランに加入することで、NotebookLM in Proの機能が有効になります。
法人・組織のGoogleアカウントの場合
企業や教育機関などでGoogle WorkspaceやGoogle Cloudを利用している場合、アップグレード方法は契約状況によって異なります。
・Google Workspaceの場合
所属する組織のGoogle Workspace管理者に依頼し、NotebookLM in Proの機能が含まれる上位のWorkspaceプランや、Gemini Educationプランにアップグレードすることで利用可能になります。なお、Workspaceのプランの詳細については公式ドキュメントをご参照ください。
・Google Cloudの場合
Cloud管理者に依頼し、「NotebookLM Plus for Enterprise」などの特定のエンタープライズ向けプランへのアクセス権を付与してもらうことで利用可能になります。
いずれの場合も法人・組織のユーザーは、まず自社のIT管理者やGoogle Workspaceの管理者に相談する必要があります。
NotebookLM in Proはどんな人におすすめ?具体的な活用シーン
NotebookLM in Proは、特に大量のテキスト情報を日常的に扱い、そこから深い洞察や新たな知識を生み出す必要がある専門職や学生にとって、強力なツールです。
ここからは、無料版の上限では物足りないと感じるであろう具体的なユーザー像と、活用シーンを解説。どのようなかたちでNotebookLM in Proが活用できるのかを見ていきましょう。
ケース①:製造業における「部品選定・調達」
例えば、製造業の設計・調達部門のケースです。世界中のサプライヤーから集めた数千点におよぶ「ネジ」の製品カタログ(PDF)を、すべてノートブックに読み込ませます。
その上で、「耐熱温度が150℃以上、塩水噴霧試験で72時間以上の耐性を持ち、かつ欧州のRoHS指令に準拠しているM3規格のネジを、アジア地域のサプライヤーから3社提案して」といった、複数の条件を組み合わせた複雑な問いを投げかけることができます。
これにより、従来は担当者が経験と勘を頼りに、数日かけて行っていた部品選定とコスト見積もりのプロセスを、数分に短縮できる可能性があります。
ケース②:法務・知財分野における「リスク分析」
次に、法務・知財部門での活用例です。過去数十年分の自社および競合他社の特許公報を数百件読み込ませ、「『データ圧縮』に関する当社の特許Aと、競合B社の特許Cで、技術的に重複していると解釈されうる記述を、根拠となる条文と共に抜き出して」といった指示が可能です。
これは膨大な資料の中から、人間では見落としがちな潜在的な特許侵害のリスクや、自社の強みとなる技術的優位性を発見する作業です。
ケース③:人事・採用における「候補者スクリーニング」
人事・採用部門でも応用できます。ある専門職のポジションに応募してきた数百人分の職務経歴書をすべて読み込ませ、「必須スキルであるPythonの経験が5年以上あり、かつ歓迎スキルであるAWS認定資格を保有し、さらに過去に5人以上のチームのマネジメント経験があると記述している候補者を5名、該当箇所を引用してリストアップして」といった指示が可能です。
これにより、採用担当者が一次スクリーニングにかけていた膨大な時間を削減し、より有望な候補者との面談に集中することを可能にします。
NotebookLM in Proへのアップグレード手順
NotebookLM in Proの利用を開始する手順は、個人で利用するGoogleアカウントか、法人で利用するGoogle Workspaceアカウントかによって異なります。ここでは、それぞれのケースについて、ゼロから使い始めるまでのステップを解説します。
個人ユーザーの場合
個人のGoogleアカウントでNotebookLM in Proを使い始める手順は、比較的シンプルです。
1.NotebookLMにアクセス
まず、NotebookLM にアクセスし、ご自身のGoogleアカウントでログインしていることを確認します。
2.設定からアップグレードを選択
画面左上の設定アイコン(歯車マーク)を開き、メニューから「Plusへアップデート」を選択してください。
3.プランへの加入
Googleのプラン選択ページに移動したら、画面の指示に従って「Google AI Pro」プランへの加入手続きを完了させます。
手続きが完了すると、特別な有効化作業は不要でお使いのNotebookLMは自動的にPro版の機能へアップグレードされます。
法人(Google Workspace)ユーザーの場合
企業や教育機関のGoogle WorkspaceアカウントでNotebookLM in Proを利用する場合、組織の管理者が設定を行う必要があります。従業員が個人でアップグレードすることはできません。
1.Google Workspace管理コンソールにログイン
まず、管理者権限を持つアカウントで、Google Workspaceの管理コンソールにログインします。
2.「Gemini for Google Workspace」アドオンの購入
メニューから「お支払い」>「サービスを追加 / アップグレード」に進み、「Gemini for Google Workspace」のアドオンを選択します。画面の指示に従い、必要なライセンス数などを決定し、購入手続きを完了します。
(※利用できるのは、Business Standard、Enterpriseなど一部のWorkspaceプランに限られます)
3.ユーザーへのライセンス割り当て
購入後、管理コンソールの「ユーザー」管理画面から、NotebookLM in Proの機能を利用させたい従業員(または組織部門単位)に対して、購入した「Gemini for Google Workspace」のライセンスを割り当てます。
ライセンスが割り当てられた従業員は、自身のWorkspaceアカウントでNotebookLMにアクセスすると、自動的にPro機能が有効になった状態で利用を開始できます。
アップグレード手順の注意点
アップグレードには以下のような注意点があります。
- 画面上の表記が「Plusへアップデートする」となっている場合がありますが、現在「NotebookLM in Pro」と呼ばれている機能と同じものです。
- 個人のGoogleアカウントでアップグレードする場合、基本的には「Google AI Pro」プランへの加入が必要です。
- 企業や教育機関のGoogle Workspaceアカウントを利用している場合は、別途プランのアドオンとして追加されることもあります。
- このアップグレード手順は、モバイルアプリからも同様に行うことが可能です。
まとめ
本記事では、GoogleのAIリサーチアシスタント「NotebookLM in Pro」について、無料版との違いから料金プラン、具体的な活用シーンまでを網羅的に解説しました。
NotebookLM in Proの最大の価値は、無料版と同じ高性能なAIを使いつつ、一度に扱える情報量(ソース数や質問回数など)の上限が大幅に引き上げられる点にあります。さらに、回答のカスタマイズや高度な共有・分析機能といった、NotebookLM in Proでしか利用できない機能も用意されています。
例えば、数百の製品カタログから特定の条件に合う部品を探す製造業の調達担当者や、多数の応募者の職務経歴書から最適な候補者をスクリーニングする人事担当者など、無料版の上限では不可能な、より専門的で大規模な情報分析を行うビジネスパーソンにとって、NotebookLM in Proは業務の質と効率を向上させる有効な手段となるでしょう。
まずは無料版でNotebookLMの基本機能を試し、ご自身の使い方で上限に物足りなさを感じた際に、Pro版へのアップグレードを検討してみてはいかがでしょうか。