システム運用を「守り」から「攻め」へ!ビジネスを加速させる新常識「bre (Business Reliability Engineering)」とは?

こんにちは!クラウドエースのエモーショナル エバンジェリスト、ラリオスです。

ビジネスの成長を加速させるため、多くの企業がクラウドを導入し、新しいシステムやアプリケーションを開発しています。しかし、その輝かしいリリースが無事に終わった後、「運用」という長く、そして重要なフェーズで、見えない課題に直面しているケースは少なくありません。

たとえば、みなさんの組織では、このようなお悩みはありませんか?

  • コンテナやサーバーレスといった最新技術を導入したものの、それを使いこなせる専門人材が社内に不足している。
  • 話題の生成 AI を活用したシステムを構築したが、その後の安定運用まで見通せる知見や人手が足りない。
  • 毎月のクラウド請求額が想定を超えているが、どこに無駄があるのか特定できず、具体的なコスト削減に着手できない。
  • 監査や審査を前にセキュリティ強化が必要だと感じているが、どこから手をつければよいかわからない。
  • 24 時間 365 日の安定稼働が求められるシステムなのに、深夜や休日の監視体制が万全とは言えない。
  • 日々の障害対応や問い合わせに追われ、本来注力すべき新機能の開発や、ビジネス価値を高めるための改善活動が後回しになっている。

これらは、いわばインシデントの発生を防ぎ、現状を維持するための「守りの運用」です。もちろん、システムの安定稼動はビジネスの根幹であり、非常に重要です。しかし、この「守りの運用」だけにリソースを割かれ続けていては、変化の速い市場で競争優位性を維持し、ビジネスをさらに成長させることは難しいかもしれません。

今回のコラムでは、こうした「守りの運用」から脱却し、システム運用をビジネス成長に貢献する「攻めの活動」へと変革するための新しい考え方、「bre (Business Reliability Engineering)」について、その核心をわかりやすく解説していきます。

SRE のその先へ|ビジネス信頼性エンジニアリング (bre) という新しいアプローチ

前の章で挙げたような運用の課題を解決する鍵として、近年「SRE (Site Reliability Engineering)」という考え方が注目されています。みなさんも一度は耳にしたことがあるかもしれません。

SRE は、Google が提唱し実践している、サイトやサービスの信頼性 (Reliability) を向上させるためのプラクティスです。その核心は、ソフトウェア エンジニアリングの力を用いて、これまで手作業で行っていた運用業務を自動化し、信頼性を客観的なデータ(SLI や SLO といった指標)で管理することにあります。これにより、エンジニアは繰り返しの作業から解放され、より創造的で価値の高い開発業務に集中できるようになります。

そして、私たちが提唱する「bre (Business Reliability Engineering)」は、この SRE の考え方をさらに一歩進め、そのスコープをシステムの信頼性から「ビジネス全体の信頼性」にまで拡張したアプローチです。

bre が目指すのは、単にシステムを安定稼動させることだけではありません。それを大前提としながら、「事業内容やニーズが変化する中で当初の目的を達成できるように改善していくこと」、つまり、システム運用をビジネスの成長に直接結びつけることにあります。

具体的には、以下のような状態を実現することを目指します。

  • システムの安定稼動
    障害を未然に防ぎ、万が一発生しても迅速に復旧できる、盤石な「守り」の体制を構築します。
  • コストの最適化
    クラウドの利用状況をつねに監視・分析し、継続的にコストの見直しと改善を行います。
  • サービスレベルの向上
    システムのパフォーマンスや応答速度など、ユーザー体験に直結するサービスレベルを改善し続けます。
  • ビジネス価値への貢献
    運用を通じて得られるデータに基づき、ビジネスの成長に繋がるような能動的な改善提案や、新たな機能開発へと繋げていきます。

つまり bre は、従来の「何か問題が起きたら対応する」という受け身の運用保守とは一線を画します。システムの安定という「守り」を固めつつ、コスト最適化や機能改善といった「攻め」の活動を両立させることで、システムを企業の競争力を高めるための「ビジネス ドライバー」へと変革していくための、新しいアプローチです。

次の章では、この bre を具体的にどのように実現していくのか、その活動を支える 2 つのサービスについて詳しく見ていきましょう。

bre を構成する「守り」と「攻め」の仕組み

bre という考え方を実践するためには、それを支える具体的な仕組みが必要です。クラウドエースの bre サービスは、主に「IT サービス マネジメント サービス」と「エンジニアリング サービス」という、2 つで構成されています。

これら 2 つのサービスが「守り」と「攻め」の役割を担い、連携することで、システムをビジネス成長の軌道に乗せていきます。

守りの要|IT サービス マネジメント サービス

まず、ビジネスの土台となるシステムの安定、つまり「守り」を盤石にするのが  IT サービスマネジメントサービスです。具体的には、以下のような活動を通じて、お客様のシステム環境の日常を支えます。

  • 24 時間 365 日のシステム監視と迅速な障害復旧
  • 日々の疑問や問題に対応するサービスデスク
  • リソース、コスト、サービスレベルの継続的なモニタリング
  • システムの構成情報の正確な管理
  • インフラやアプリケーションの脆弱性への対応

そして、とくに重要なのが「月次レポーティング」です。ここでは、システムの稼働実績やコスト状況をただ報告するだけではありません。現状を客観的なデータで可視化し、潜在的な課題や改善の余地を明らかにします。このレポートで明らかになった課題、たとえばコスト超過の原因となっているリソースの特定や、システムの性能ボトルネックの解消といった改善も、このサービスの範囲で実施します。

これらのサポートは、必要な時に必要な分だけ専門家の支援を受けられる、柔軟な「チケット制」で提供され、お客様の継続的な安定運用を支えます。

攻めの中核|エンジニアリングサービス

IT サービス マネジメントサービスによって「守り」が固められ、課題が「可視化」されたら、次はいよいよビジネスをさらに加速させる「攻め」のフェーズです。その中核を担うのが、エンジニアリング サービスです。

このサービスでは、クラウドエースの専門エンジニアが、より能動的かつ戦略的な活動を通じて、お客様のビジネスをさらに前進させます。

  • ビジネスの変化に応える機能開発
    市場のニーズや事業戦略の変化に合わせて、必要な機能を追加開発します。
  • 開発・運用プロセスの改善
    日々の運用を自動化したり、開発からリリースまでのプロセスを効率化したりすることで、チーム全体の生産性を向上させます。

このように「守り」のサイクルでシステムの健康状態を維持・可視化し、改善を実行する一方、「攻め」のサイクルで継続的な進化を促す。この 2 つのサービスが連携して機能することで、システムは単なるインフラではなく、ビジネス価値を創出し続ける資産へと成長していきます。

さて、次の章では、これらの活動をさらに効果的にする、クラウドエースならではのユニークな特徴についてご紹介します。

クラウドエースの bre がもつユニークな特徴|生成 AI との深い関わり

クラウドエースの bre は、生成 AI と 2 つの側面で深く関わっています。これは、私たちのサービスがもつユニークな特徴です。

1 つ目は、「お客様が開発した生成 AI システムの運用を支援する」という側面です。

「生成 AI を使った画期的なサービスを開発したものの、その後の運用をどうすればよいか分からない」というお悩みは、多くの企業が直面する新たな課題です。bre は、このような最先端のシステムに対しても、これまでに培ってきた運用ノウハウを適用し、安定稼動を強力にサポートします。

2 つ目は、「bre サービス自体の高度化に生成 AI を活用する」という側面です。

私たちの bre サービスでは、サービスの提供過程でプラットフォームに連携されるさまざまな情報(システムアラート、問い合わせ内容など)を、サービスの効率化・高度化を目的として生成 AI のインプット情報として活用することがあります。もちろん、お客様のデータを AI の学習や改善に利用することは一切ありません。

この取り組みにより、たとえば障害の予兆検知や、人間では気づきにくいコストの無駄の発見、あるいは過去の対応履歴に基づいた、より精度のよい改善提案などが期待できます。

このようにクラウドエースは、「AI を活用したシステムの運用」と「AI を活用した運用支援」の両面から、お客様のビジネスをサポートできる体制を整えているのです。

まとめ|システム運用を「コストセンター」から「ビジネス ドライバー」へ

今回のコラムでは、システム運用を「守り」から「攻め」へと変革する新しい考え方、「bre (Business Reliability Engineering)」について解説しました。「守り」を固める  IT サービス マネジメント サービスと、「攻め」を担うエンジニアリング サービスが連携し、さらに生成 AI を活用することで、システムの信頼性とビジネスの信頼性を両立させる。これが bre の基本的な考え方です。

システム運用は、しばしばコストだけがかかる「守りの部門」と見なされがちです。しかし、私たちが提唱する bre は、その考え方とは一線を画します。

bre の目的は、システムの安定稼動を大前提としながら、運用を通じて得られたデータに基づき、継続的な改善を実施することです。これにより、単なる現状維持に留まらず、コストの最適化やサービスレベルの向上、さらにはビジネスの成長に繋がる機能開発といった「攻めの価値」を生み出します。

導入初期にはシステムの安定化や改善活動にコストがかかる場合もありますが、bre は継続的な自動化によって、将来的な運用全体のコストを最適化することを目指します。

つまり bre は、システム運用を単なる「コスト」ではなく、将来のビジネス成長に向けた「投資」と捉えるアプローチなのです。

もし、みなさんの組織で現在のシステム運用に課題を感じていたり、「攻めの運用」によるビジネス価値向上に関心をおもちでしたら、ぜひ一度、私たちクラウドエースにご相談ください。

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