2025/12/24 レジャー・エンタメ フリュー株式会社 伴走支援 事業成長を支える基盤刷新 サイロ化したクラウド環境を統制せよ。フリューが踏み出した全社ガバナンス改革とデータ基盤再構築の舞台裏 プリントシール機事業をはじめ、キャラクター・マーチャンダイジング、ゲーム、アニメなど多角的なエンタテインメント事業を展開するフリュー株式会社(以下、フリュー)。各事業部でGoogle Cloudの利用が拡大する一方、アカウント管理や運用ルールが統一されておらず、管理外のプロジェクトが散在することが大きな課題となっていました。 複雑化した環境を是正し、全社的なガバナンス確立と将来のデータ活用基盤を構築するため、同社はクラウドエース(以下、弊社)をパートナーに迎え、大規模な環境整備プロジェクトを始動させました。 (左から) クラウドエース株式会社 技術本部 第一開発部 / 荒木 元気 技術本部 コンサルティング部 / 猪原 哲明 技術本部 第一開発部 / 阿部 正平 事業推進本部 第一事業部 / 神田 洋輔 フリュー株式会社 ガールズ総合研究所リサーチ部 部長・経営戦略統括部 ICT戦略部 副部長 / 村木 宏壽氏 経営戦略統括部 ICT戦略部 / 吉村 彩氏 経営戦略統括部 ICT戦略部 / 宇城 祐輔氏 経営戦略統括部 ICT戦略部 副部長 / 稲富 研人氏 管理ルール不在により統制されていないプロジェクトが散在。複雑な現状打破のパートナーとしてクラウドエースを選定 (左から) フリュー株式会社 経営戦略統括部 ICT戦略部 / 宇城 祐輔氏 経営戦略統括部 ICT戦略部 / 吉村 彩氏 経営戦略統括部 ICT戦略部 副部長 / 稲富 研人氏 ガールズ総合研究所リサーチ部 部長・経営戦略統括部 ICT戦略部 副部長 / 村木 宏壽氏 フリューでは、プリントシール機ビジネスや各種Webサービスにおいてデータ分析を目的としたGoogle Cloudの利用が進んでいましたが、当時はデータガバナンスを専門とする組織が存在せず、各部署のエンジニアが個別に環境を構築していました。その結果、退職者のアカウントが削除されずに放置されていたり、使途不明な定期実行クエリが稼働するなど、管理の不備が常態化。セキュリティリスクやコストの無駄が大きな課題となっていました。 当時の状況について、ガールズ総合研究所リサーチ部 部長・経営戦略統括部 ICT戦略部 副部長の村木 宏壽氏は次のように振り返ります。 「前任者からの引き継ぎが不十分なまま、いざ蓋を開けてみれば組織化が全くされていない状態でした。管理されていないプロジェクトや管理者不明のアカウントが常態化していて、ガバナンスが効いていない状況に強い危機感を抱いていました」(村木氏) フリューは早急な基盤構築を求めましたが、ドメイン証明を含む複雑なアカウント整理や不透明な環境への対応は難易度が高く、既存の取引先や他社からは支援を見送られてしまうような状況でした。 課題解決に向けてパートナーを探すなかで、クラウドエースを選定した決め手は、複雑な初期状況に対する柔軟な対応力だと村木氏は語ります。 「当時、Google Cloudの請求代行でお取引のあった会社様など複数社に相談を持ち掛けましたが、前任者の引き継ぎがない不透明な環境の整理から相談に乗っていただけたのはクラウドエース様だけでした。ドメイン認証を伴うアカウントの統合・管理など、他社では対応が難しいと言われるような複雑な状況にも親身に対応いただけたことが、選定の大きな理由です」(村木氏) プロジェクトは段階的に進められ、フェーズ1ではCloud IdentityによるID管理基盤の整備とResource Managerによる組織階層の設計を実施。フェーズ2以降では、稼働中のサービスを含む既存プロジェクトの安全な移行に向けた詳細なリスク調査と計画策定が行われました。 サービスを止めないことを最優先に。段階的アプローチと新技術の活用で安全な移行を実現 クラウドエース株式会社 技術本部 コンサルティング部 / 猪原 哲明 事業推進本部 第一事業部 / 神田 洋輔 技術本部 第一開発部 / 阿部 正平 技術本部 第一開発部 / 荒木 元気 本プロジェクトで最も重視されたのは、既存のサービスへの影響をゼロに抑えることでした。管理外にあるプロジェクトを統合環境へ移行する必要がありましたが、その中には実サービスで稼働しているプロジェクトも含まれており、強引な移行は大きなリスクを伴うと判断されました。 この課題に対し、弊社はアカウント統合とプロジェクト移行の2フェーズに分け、包括的なリスクアセスメントに基づいた慎重な計画を立案しました。 まず、プロジェクト前半のアカウント統合のPMを務めた猪原は、お客様の心理的負担と業務負荷を下げることに注力しました。 特にフリューが懸念していたのが、既に組織外で取得済みの、会社メールアドレスでのGoogleアカウントへの影響でした。この点に対し弊社は、Cloud Identityのコンソール上で対象アカウントを一覧で確認し、移行の要否を個別に判断しながら進められる手法を提示。具体的な手順を可視化して説明したことで、お客様の不安を解消しました。 当時の工夫について、クラウドエース 技術本部 コンサルティング部の猪原 哲明はこう語ります。 「お客様は多忙であり、かつ稼働中の本番システムが含まれていることから、慎重に進めたいというご要望がありました。そこで、単に我々が作業を代行するだけでなく、お客様が任意のタイミングで実施できるよう、詳細な手順書を成果物として作成することで合意しました。挙動を確認しながら段階的に移行できるよう提案することで、安心感を持ってプロジェクトを進めていただけるよう工夫しました」(猪原) 続く組織全体へのプロジェクト移行フェーズでは、クラウドエース 技術本部 第一開発部の阿部 正平がPMを務め、リスクの徹底した可視化に取り組みました。阿部は当時のアプローチについて次のように振り返ります。 「稼働中のシステムや機微な情報を扱うため、既存サービスへの影響をゼロにすることは絶対条件でした。その制約のなかで、適切な技術を用いて詳細な調査を行い、移行に伴うリスクを定量的に可視化することに注力しました。結果として、客観的なデータに基づいた安全な移行計画をご提示できたと考えています」(阿部) また、これら両方のフェーズで実務を担当したクラウドエース 技術本部 第一開発部のエンジニアの荒木 元気は、最新技術の活用とわかりやすさの追求についてこう加えます。 「移行調査では、サービスごとの大量のドキュメントを読み込み、影響範囲を網羅的に確認する必要がありました。そこで当時登場したばかりのNotebookLMを活用し、人力よりも遥かに効率的、かつ、漏れのない調査を実現しました。また、私自身も当時は学習中の身だったからこそ、一連の支援を通じて専門用語に頼らずGoogle Cloud初心者のお客様にもわかりやすい説明を常に心がけ、資料作成を行いました」(荒木) こうした専門的な支援について、村木氏は次のように評価します。 「こちらの知識が不足している部分でも、専門的な知見から『何ができて、何ができないか』を明確に示していただき、我々の組織の状況やフェーズに合わせた現実的な改善案を提示してくれました。不具合発生時の切り戻し手順なども含め、緻密な計画を立てていただけたことで、安心してプロジェクトを進めることができました」(村木氏) また、当時入社したばかりでプロジェクトに参加した吉村氏も、こう続けます。 「Google Cloudの管理経験がない状態からのスタートでしたが、クラウドエース様には、自分たちが自律的に動けるようにご指導いただきました。手順書を一緒に作成するなど、最終的な『自走』を意識した支援のおかげで、無事にプロジェクトを完遂できました」(吉村氏) ガバナンスと現場主導のDX市民開発の両立へ。生成AI活用を見据えた新たなデータ活用基盤の幕開け 今回のプロジェクトを通じて、フリューはGoogle Cloud環境における堅牢なガバナンス体制の第一歩を踏み出しました。Cloud Identityの導入により、これまで見えていなかった管理外のアカウントやプロジェクトが可視化され、組織的な管理が可能になったことは大きな前進になりました。 フリュー 経営戦略統括部 ICT戦略部の宇城 祐輔氏は、今回の基盤構築の成果と今後の展望について次のように語ります。 「今回の取り組みは、 Google関連のサービスをより深く、強く使うための環境を整える小さな一歩でありながら、大きな前進につながる取り組みでした。今後はGoogle WorkspaceやGeminiなどのAI推進も見据え、組織としてセキュリティとガバナンスを担保しながら、各事業部の業務改善につなげていきたいと考えています」(宇城氏) また、フリューの経営戦略統括部 ICT戦略部 副部長の稲富 研人氏は、具体的な活用イメージについて言及します。 「たとえば、フィギュア制作の企画段階におけるブレインストーミングなどでGeminiを活用できないかという相談が現場から寄せられています。安全にデータを利活用するためには、ガバナンスの効いた環境が不可欠です。その意味で、安心して新しい技術にチャレンジできる土台が整ったことは非常に大きな成果だと感じています」(稲富氏) フリューは今後、この基盤を活用し、顧客理解の深化、新規事業開発、さらには現場主導のDXを推進していく方針です。 こうしたフリューの展望を受け、本プロジェクトを担当したクラウドエース 事業推進本部の神田 洋輔は、今後の支援についてこう結びます。 「今後は生成AIの活用など、より攻めのDXが求められるフェーズに入ります。 Gemini Enterpriseをはじめとする最新のソリューション提案や技術支援を通じて、フリュー様のデータドリブンな組織変革を引き続き伴走支援させていただきたいと考えています」(神田) エンタテインメントを通じて新しい価値を創造し続けるフリューの挑戦を、クラウドエースはこれからも確かな技術力と伴走支援で支えてまいります。 利用したサービス Google Cloudコンサルティング 豊富な実績と高度な技術力を持つエンジニアが、インフラ構築、アプリ開発、データ分析、生成AI、サイバーセキュリティ対策に至るさまざまな分野で、お客様のご要望に合わせた最適なご提案を行います。 この記事を共有する