
株式会社MC
介護業界のDXを推進する株式会社MCの組織変革 ―クラウドエースの伴走支援で実現した、データドリブンな文化の構築―
埼玉県三郷市を中心に、住宅型有料施設や訪問介護・看護事業所など、多岐にわたる介護サービスを展開する株式会社MC。株式会社MCでは、複数の SaaS 利用により社内データが点在し、集計や分析が困難という課題を抱えておられました。 この課題を解決するため、Google Cloud と Looker Studioを活用したデータダッシュボード「MCレポート」の内製化を決断。クラウドエース(以下、弊社)の伴走支援と実践的なトレーニングを通じて、専門知識の少ない職員でもデータ分析を担える環境を構築しました。本記事では、データに基づいた迅速な意思決定と、職員の意識改革という組織文化の変革にまで繋がった株式会社MCの取り組みについて詳しく伺います。
株式会社MC DX推進担当 主任 / 横山 公一氏
株式会社MC 経営企画室 室長 / 朝藤 猛氏
(後列左から)
クラウドエース株式会社 技術本部 / 許 世龍
クラウドエース株式会社事業推進本部 / 池永 貴裕
株式会社MC 事務局 副主任 / 小菅 海斗氏
株式会社MC 代表取締役社長 / 嶋 淳氏
株式会社MC HR担当 課長 / 吉野 千代美氏
データに基づいた意思決定を目指して。散在する情報が経営判断の足枷に
介護と看護の現場で質の高いサービスを提供してきた株式会社MC。DX を推進するなかで複数の SaaS を導入した結果、各システムにデータが散在し、経営判断に必要な情報を横断的に活用ができないという課題に直面していました。
当時の状況について、嶋氏は次のように語ります。
「これまでは、経営判断をする時に現場の意見を聞きながら進めていました。しかし、現場の感覚的な判断だけでは、こちらが意図していることとの間に食い違いが生じることが多く…。 なので、実際のデータを見せながら『今、こういう状況だから、こういう経営判断をした』というエビデンスがほしい、と強く感じていたんです」(嶋氏)
さらに、介護業界全体としてデータ活用が進んでいない現状にもどかしさを感じていたと、嶋氏は続けます。
「他の業界では当たり前に行われているデータ活用が、なぜ介護業界にはないのだろうと。調べてみると、そもそもそうした考えを持つ事業者自体が少ない。であれば、我々が先んじて取り組むことに価値があるのではないかと考えたのが、今回のプロジェクトのきっかけです」(嶋氏)
しかし、SaaS で管理していたインシデントレポートや経費精算のデータなど 、各システムに蓄積された情報を統合し、分析するには専門的な知識が必要でした。どこに何の情報があるのか把握しづらく、データは経営判断や業務改善に十分に活かされていなかったそうです。
決め手は「福祉への深い知見」と「伴走支援」。二人三脚で描いたデータ活用への道筋
データ活用の必要性を感じていたものの、何から手をつければ良いか具体的な道筋が見えていなかった株式会社MCの転機となったのは、Google Cloud Next Tokyo’24 への参加でした。
当初は、蓄積されたインシデント報告書をAIで分析し、職員の業務負荷を軽減するといったアイデアに魅力を感じておられたのだそう。 しかし、そのためには高度な技術力が必要であり、実現可能なパートナーを探すなかで Google Cloud 社から弊社をご紹介いただきました。
数ある企業のなかから弊社を選んでいただいた決め手について、横山氏は担当者の存在が大きかったと語ります。
「いろいろな企業に相談しましたが、『介護業界の事例はない』と言われることがほとんどでした。そんななか、クラウドエースさんは福祉に関する知識と経験をもつ方が窓口として担当してくださり、介護業界特有の言語や課題について深く理解してくれました。 我々の言葉足らずな説明や要望に対しても、週に1回のペースで提案資料を作ってきてくれるなど、非常に熱心に対応してくれたのが印象的でした」(横山氏)
弊社は、将来的なAI活用も見据えつつ、まずは地に足の着いた成果を出すための段階的なアプローチをご提案しました。具体的には、ステップ1として「データの可視化」に着手し、点在するデータを Google Cloud へ集約して誰もが状況を把握できるダッシュボードを構築すること。そして、その基盤をもとにステップ2で「分析の高度化・予測」、ステップ3で「業界への展開」へとつなげていくロードマップです。
この提案が、株式会社MCの現状に最も合致していました。弊社が持つ業界への深い理解と、実現可能なステップを共に描かせていただくことで、このたびの取り組みがスタートいたしました。
「できなかったことができるように」 IT スキルに差があっても安心なハンズオントレーニング
データ分析基盤の「内製化」を目指し、弊社は全4回にわたる実践的なトレーニングを提供しました。参加者のなかには、CSV データ自体に初めて触れる職員の方もおられるなど、IT スキルにはばらつきがありました。そのような状況で、株式会社MCの実データを用いた対面でのハンズオン形式は非常に有効だったと、吉野氏と小菅氏は語ります。
「IT に詳しくない私でも、対面で画面を一緒に見ながら丁寧に指導していただいたので、本当に分かりやすかったです。初歩的な質問も気兼ねなくでき、その場で疑問を解消しながら進められたことで、データ活用の基礎から深く理解できました」(吉野氏)
「案件が始まるまで Google Cloud とは何か、BigQuery とは何か全く分からない状態でした 。正直、難しかったですが、初歩的なところから丁寧に教えていただいたおかげで、基本的な操作はできるようになったと実感しています」(小菅氏)
このわかりやすさの裏には、トレーニングを担当した許の試行錯誤がありました。
「社内のメンバーにも相談しながら、初めて分析ツールに触れる方がつまずきやすい点も考慮し、資料を作成いたしました。お客様の詳しい状況をお伺いした結果、専門的な SQL の知識がなくても分析を進められるデータ キャンバスの活用を軸に提案を組み立てていきました」(許)
クラウドエース株式会社
技術本部 / 許 世龍
事業推進本部 / 池永 貴裕
本トレーニングを通じ、参加された職員の方々には、Cloud Storage に CSV データをアップロードするだけで BigQuery にデータが格納される仕組みや、データ キャンバスの活用法などを習得いただきました。これにより、データ活用の心理的なハードルが大幅に下がったと、ご好評の声をいただいています。
データ分析基盤の内製化がもたらした、レポート品質の向上と挑戦する組織風土の醸成
トレーニングを経て、株式会社MCはデータ分析基盤「MCレポート」の構築を自社の手で進めておられます。 その結果、具体的な成果が次々と現れ始めました。
「先日、職員を対象に働き方に関するアンケートを実施し、その結果をMCレポートで可視化して経営層にプレゼンテーションしました。 Looker Studio を使えば、役職や年齢層といった条件でデータを絞り込み、役職者が見たい情報に即座にアクセスできる。これまでもレポートを作成することはありましたが、Python コードが書ける人にしか作れず、内容も固定的でした。 今では、データの解釈がより深まり、レポートの質そのものが格段に向上したと感じています」(横山氏)
この取り組みは、副次的な効果も生み出しています。嶋氏は、組織内に生まれた変化を次のように語ります。
「新しいツールを導入することへの抵抗感が、明らかに減ってきました。 以前は何か新しいことを始めるたびに不満の声が上がっていましたが、挑戦する会社であるという雰囲気が生まれつつあります。時代の変化に即座に対応できる組織風土が醸成されてきたことは、大きな成果だと感じています」(嶋氏)
データに基づいた意思決定基盤の構築は、同時に職員一人ひとりの意識を変革し、組織全体を未来へと向かわせる原動力となっているのです。
このたびの目覚ましいスキルアップと成果について、営業担当の池永は株式会社MCの全社的な協力体制があったからこそだと振り返ります。
「皆様がとても前向きかつ協力的に取り組んでくださったおかげで、プロジェクトは想定以上の成功を収めることができました。皆様がこの短期間で発揮された吸収力とスキルの向上には、大変感銘を受けております」(池永)
まとめ・今後の展望
弊社は複数のSaaSに散在していたデータを統合し、分析する基盤「MCレポート」の内製化をご支援しました。この取り組みを通じ、IT の専門家ではない職員の方々がデータ活用の担い手となり、データドリブンな意思決定に向けた大きな一歩を踏み出されました。
今後の展望について、朝藤氏は次のように語ります。
「現在は経営層向けのレポートが中心ですが、今後はシフト作成や人員配置の最適化など、一般職員の業務効率化にもつなげていければと思っています。 感覚で行っていたものをデータに基づいて改善していきたいと考えています」(朝藤氏)
さらに、その視線は自社だけに留まりません。
「将来的には、この取り組みで得たノウハウを、我々のような小さな施設でも導入しやすいツールとして展開し、 自社で開発したシステムを他の介護事業者さんにも使っていただくことで、業界全体の課題解決に貢献できればと願っています」(嶋氏)
弊社はこれからも、株式会社MCの挑戦に寄り添い、同社が描く介護業界の DX 推進という未来の実現に向けて、技術的な支援を続けてまいります。
※Google Cloud および Google Cloud 製品・サービス名称は Google LLC の商標です。
利用したサービス
データ分析基盤構築支援 / BigQuery ML(機械学習)活用支援
社内外の散在データをGoogle Cloudで一元管理。ビッグデータ活用をはじめ、データウェアハウスBigQueryを用いてデータ統合・分析基盤の設計と構築を実施いたします。経験豊富なエンジニアが大規模データの収集から処理・分析までの最適な仕組みをご提案。データ活用全体を支援し、ビジネスの変化に即応できる柔軟でスケーラブルな環境を実現します。
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