DAO とは 概要や仕組みを5分で入門
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こんにちは、クラウドエース編集部です。
仮想通貨について調べている中で「 DAO 」という言葉を目にすることもあるのではないでしょうか。DAO とはブロックチェーン上で成立する組織の新しい形であり、Web3 や NFT への関心の高まりが加速する 2022 年、より大きな注目を集めると考えられています。
この記事では、DAO とは何なのか、具体的にどのようなサービスがあるのか、利用時の注意点、そして自分で DAO を運営するにはどうすれば良いのかまで紹介していきます。
DAO(分散型自律組織)とは?
それでは、「自律分散型組織」とは一体何をする組織なのでしょうか。簡単に言えば、DAO は暗号資産投資家たちの集まりのようなものです。同じ目的を持つ人たちが集まって資金を集め共同で管理し、あるプロジェクトに共同出資したり、NFT を収集したり、独自のコミュニティを築いたりします。
このように、DAO が作られる目的はさまざまですが、それぞれの組織の在り方には共通点があります。それは、意思決定において中央で指令を下す管理者や企業が存在せず、ネットワークに参加するメンバー全員が同等の発言権を持っているということです。
各 DAO はそれぞれ独自のガバナンストークンを発行しており、それを購入することで組織に参加し、意思決定のための投票権を保有できる仕組みとなっています。
そして、組織に集まった資金の使途や管理方法に関わる意思決定の際には、投票により賛成が過半数を超えるとスマートコントラクトにより実行されます。スマートコントラクトとは、ブロックチェーンシステム上に設定されたルールに従って自動的に取引が実行されるプログラムのことです。
このようにブロックチェーン上に構築される DAO は、年齢や性別、国籍関係なく世界中の人々が参加できます。また、すべての契約や取引、権利関係の構築がデータの書き換えができないブロックチェーン上に履歴が残るため、透明性と公平性が高いことが大きな特徴です。
実際の DAO の事例やプロジェクト
ここまで、DAO 概念や目的について紹介してきました。続いては、具体的にどのような DAO プロジェクトが存在しているのかについて見ていきましょう。
BitDAO
世界に数多く存在する DAO の中でも、特に大規模で管理金額も大きいのが「 BitDAO 」です。
BitDAO はシンガポールの仮想通貨取引所「 Bybit 」が全面的にサポートしている DAO です。具体的には、同社が年間約 10 億ドルの資金提供を予定していると言われています。そのほか、PayPal の創業者である Peter Thiel 氏をはじめとした多くの著名人・投資家も資金提供をしていることでも知られています。
BitDAO の設立目的は、将来性の高い DeFi や NFT に関するプロジェクトに資金提供・流動性の供給をすることです。DeFi とは「分散型金融」のことで、中央管理者が存在しない金融仲介サービスを指します。具体的には、取引所やレンディング(貸付)サービスなどが挙げられます。
スタートアップの DeFi プロジェクトへ出資し、成長を支援するという取り組み内容から、BitDAO は今後の成長がとても期待できる DAO と言えるでしょう。
Ninja DAO
Ninja DAO は、OpenSea で作られる NFT の「 CryptoNinja NFT 」の公式コミュニティです。日本国内最大級の DAO であり、CryptoNinja NFT の最新情報を共有したり、メンバーによる様々な活動が行われたりしています。
NFT オーナーであるかどうかに関わらず、CryptoNinja NFT に魅力を感じた人たちが参加しており、情報交換やメンバー同士の様々な活動・プロジェクトを行っています。二次流通を OK とする CryptoNinja NFT の特性を活かし、小説、音楽イベント、ゲーム制作、コスプレなど多様なプロジェクトが考案されているようです。
ちなみに、 CryptoNinja NFT は「オーナー分散率 100%」「二次流通の最低価格 18.5 ETH(約 650 万円/2022 年 5 月現在)」といった非常に人気の高い NFT プロジェクトです。
このような圧倒的人気から、今後さらなる成長の可能性が高い DAO と予想できるでしょう。
Compound Grants
Compound Grants は、仮想通貨のレンディングサービスを提供する DeFi「 Compound 」に関連した DAO です。
Compound は仮想通貨の貸し手と借り手を繋げるプラットフォームであり、資金を預けることで金利収入を得たり、利用実績に応じて COMP というガバナンストークンがもらえたりします。
そして Compound Grants は、このような Compound のエコシステムに貢献する新しいプロジェクトやアイデア、イベントの立ち上げなどをサポートする DAO です。
この DAO は、Compound の流動性を高め、あらゆるアプリケーションと統合できるように資金を提供することで、さまざまな社会的課題解消に繋げられるという考えのもとで構成されています。Compound は DeFi の中でも歴史が深く有名であり、今後も注目を集めることが予想されます。
Usebraintrust
Usebraintrust は、フリーランスと雇用者をつなぐ仕組みを提供する DAO です。
これまではフリーランスが仕事を探す場合、マッチングサービスなどを利用することが主流でした。しかし、多数のフリーランスが集まるサービスでは、案件を獲得するために過剰な賃金の値下げが行われ、労働に対する適切な支払いが行われないという課題がありました。
この問題を解消するのが Usebraintrust です。Usebraintrust ではマッチングサービスという仲介業者を排除することで、労働者と企業を直接繋ぎます。具体的には、Usebraintrust ユーザーであるフリーランサーは賃金の 20% を還元するシステムとしています。これにより個人が手元に入る給料を稼ぐためには価格を上げる必要が生じ、結果としてフリーランスの低賃金労働を防ぐ仕組みが作られるのです。
また、フリーランスを利用する企業側も数 % の処理手数料を DAO に支払います。さらに、新メンバーを招待するとトークンが進呈される制度もあります。これにより、質の高い仕事ができる人が Usebraintrust に集まるというメリットもあります。
新しい働き方に合ったサービスと言えるでしょう。
DAO の欠点やリスク、今後の課題
ここまで紹介した通り DAO には透明性や公平性を保てるなどのさまざまなメリットがあります。しかし、同時に DAO ならではの課題も抱えています。ここからは、DAO の欠点やリスクについて紹介していきます。
ハッキングのリスクがある
1 つ目は、ハッキングの可能性があることです。
ブロックチェーン上で取引が行われる DAO では、どうしてもハッキングのリスクが残ります。
実際に、2016 年にはイーサリアム上の分散型投資ファンドの「 The DAO 」がハッキングを受け、約 360 万 ETH(当時の価格で約52億円)を盗まれる事件が発生しています。同事件では、参加者の合意により、ブロックチェーンを盗難前の状態に戻すことで資産を取り戻しています。
しかし、DAO では法的な整備が追い付いていない部分も大きいため、たとえ被害を受けても補償されるとは限りません。このようなリスクを理解した上で参加する必要があるでしょう。
意思決定に時間がかかる
2 つ目は、意思決定に時間がかかりやすいことです。
先述の通り、DAO の大きな特徴は中央に管理者を置かずに民主的に運営することです。これはメリットでもありますが、一方で意思決定が遅くなってしまうというデメリットにも繋がります。
原則として、意思決定の際にはガバナンストークンによる投票が必要になるので、万が一サービスがハッキングにあった場合や、欠陥が見つかった場合などの不測の事態に対して、スピーディに対応できないリスクがあるのです。
中央集権的な従来の企業組織などのように、問題に迅速に対応できないことは一つのデメリットと言えるでしょう。
実際に DAO を運営するには
先述の通り、DAO への参加は組織が発行しているトークンを購入すれば可能となります。それでは、自分で DAO を運営したい場合にはどうすれば良いのでしょうか。
DAO が成立するためには、「投票メカニズム」「ガバナンストークン」「コミュニティ」「資金管理・投票・提案のシステム」が必要となります。従って、DAO を運営するにあたっては、このような技術を提供してくれるサービスを利用する必要があります。
特に代表的な DAO を作成・運営するアプリケーションとしては「 Aragon 」が挙げられます。DAO を作成しガバナンストークンを発行したり、それを使って意思決定したりできるサービスで、いくつもの有名プロジェクトが Aragon を利用しています。
Aragon での DAO 運営方法は簡単で、以下の流れで新たな DAO を作成できます。
- Ethereum ネームサービス のドメイン登録をする
- DAO 作成費用 (0.2 ETH +ガス代) を支払う
- ENS(Ethereum Name Service)にリンクした組織を作成する
- 投票期間や必要な支持率などの設定を行う
- DAO をローンチする
詳しい作成方法は、Aragon の公式 HP からチェックすることができます。
まとめ
ここまで、DAO の概要や具体的なサービス、注意点などを紹介してきました。DAO への参加や設立で悩んだ際には、本記事を参考にしてみてください。

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