
Kubernetesとは 概要や、Dockerとの違いを5分で入門
こんにちは。クラウドエース編集部です。
さまざまな企業・サービスが登場し続け、毎日いくつものアプリケーションが開発されている現在。「複数ホストでの管理が煩雑になってきた」「アプリ公開や修正が自動化できれば良いのに」、そんな風に感じる場面もありますよね。
そんな中、複数コンテナを管理・自動化できるプラットフォームとして注目されているのがKubernetesです。本記事では、Kubernetesとは何かという基本的な部分から、Dockerとの違い、利用する具体的なメリットまで解説していきます。
Kubernetesとは?
Kubernetesとは、コンテナの運用管理と自動化を行うために設計されたオープンソースソフトウェアです。読み方は「クバネティス」もしくは「クーベネティス」。ギリシャ語で、操舵手・パイロットを意味します。省略して「K8s」と表記されることもありますね。
Kubernetesの操作対象は、Dockerをはじめとするコンテナです。コンテナは各種アプリケーションを実行してくれますが、それ自体を管理したり、別サーバーと連携したりはできません。そのため、複数ホストでコンテナを運用したい場合などは、管理が煩雑になってしまいます。
Kubernetesは、このような問題を解決してくれるシステムです。Kubernetesを使えば、複数ホストでコンテナを運用する場合に、ネットワークやストレージなどの連携管理が可能となるのです。このような仕組みは「コンテナオーケストレーション」とも呼ばれます。
後ほど詳しく紹介しますが、Kubernetesには自己回復機能が備わりトラブルに強かったり、柔軟なスケーリングにより無駄な CPUを削減できたりと、他にもさまざまなメリットがあります。
そもそも「コンテナ」って?
Kubernetesをより深く理解するために、「コンテナとは何か」についても復習しておきましょう。コンテナとは、アプリケーションの動作環境を仮想構築する技術のことで、ホストとなるOS上にアプリケーションやライブラリなどをまとめたものです。
仮想化ソフトウェアとよく似た技術ですが、コンテナは、コンテナを1つの単位としてシステムから分離できます。従来の仮想化ソフトウェアでは、1つの仮想環境の中にすべてのリソースを構築していく必要がありました。これは異なる OS 環境を使いたい場は良かったのですが、実際の開発では「OS周辺は同じでいいのに」ということも多く、毎回 OS まで作るリソースが無駄になっていました。
しかし、コンテナを利用すれば、複数のOSが実行しているシステムを1つにまとめられます。OS周辺の環境は共通利用しながら、アプリケーションを動かすためのCPUやメモリはコンテナ単位で管理するため、リソースを無駄に使わずに済むようになったのです。
ところが、コンテナにも不便な点があります。それは、コンテナはホストOSごとに独立した環境を構築するため、別ホストで運用する場合には管理が煩雑になってしまうことです。
そこで登場したのが、複数ホストでコンテナを管理・運用できるKubernetesというわけです。
Dockerとは何が違うの?
Kubernetesについて学んでいく過程で、多くの人が抱く疑問が「Dockerとは何が違うの?」というものです。確かに Dockerも Kubernetes同様に、コンテナを用いてアプリケーションを実行するソフトウェアのひとつです。ただし、両者はそれが実行される場所、および利用目的が大きく違います。
実行される場所について言えば、Kubernetesはクラスタで実行されるのに対して、Dockerは単一ノードで実行されます。「クラスタ」とは、コンテナの配置や削除を行うときに指示を出す部分で、「ノード」とは、クラスタを構成している各サーバーを指します。
利用目的について言うと、上述の通り、Kubernetesの利用目的は各コンテナを管理することです。一方で、Dockerの目的はアプリケーションを各コンテナに分離することです。
Kubernetes | Docker | |
---|---|---|
実行場所 | クラスタ | 単一ノード |
利用目的 | コンテナの管理 | アプリケーションのコンテナ分離 |
まとめると、上の表のように KubernetesとDockerはそれぞれ異なります。また、この2つは、使用目的が異なるため、どちらかのみを利用するのではなく、連携して使うことでコンテナを上手く活用できることを覚えておきましょう。
例えば、管理対象が大きくなってDockerが増えた場合などには、Kubernetesを活用することで複数の Docker ホストを管理する手間が減り、コストを削減にも繋げられます。その他、コンテナのスケジューリングやオートスケーリング、データの管理など、Dockerだけでは実現しにくいことが、Kubernetesを利用すると可能となります。
Kubernetesを利用する7つのメリット
ここまで、Kubernetesの概要について紹介してきました。それでは、Kubernetesを利用するとどのようなメリットがあるのでしょうか?ここからは、以下の7つのポイントについて紹介します。
- アプリケーションの効率的な新機能リリースが可能
- 障害に強い自己回復機能
- オンプレミス・クラウドの両環境で利用可能
- 高速・軽量な起動で開発スピードを加速できる
- 柔軟にスケーリングできる
- サービスディスカバリーで動作を把握できる
- セキュリティを強化できる
それぞれについて、具体的に見ていきましょう。
アプリケーションの効率的なリリースが可能
Kubernetesを利用するメリットの1つ目は、アプリケーションの公開を自動化できることです。万が一、アプリケーションに不具合があった場合には、修正後のバージョンへ入れ替えたり、ロールバックをしたりする作業も自動で行われます。
Kubernetesを使えば、効率的かつ柔軟なアプリケーションの公開や新機能のリリースが可能となるのです。
障害に強い自己回復機能
Kubernetesを利用するメリットの2つ目は、障害に強いことです。先ほど少し触れた通り、Kubernetesには自己回復機能が備わります。そのため、コンテナがダウンしたり、操作ミスで削除してしまったりした場合も、自動回復が可能です。障害に強く、いざという時にも焦らずに操作ができるのは、大きなメリットでしょう。
オンプレミス・クラウドの両環境で利用可能
Kubernetes利用のメリットの3つ目は、オンプレミスとクラウドのどちらでも利用できることです。オンプレミスでの利用の場合、 Kubernetes用のソフトウェア・ハードウェアを使えます。クラウドでの利用の場合は、パブリッククラウド上で提供される Kubernetes用のサービスを利用しましょう。
このように、自社サーバーでもクラウドでも使えるため、環境依存を気にすることなく自由に使えます。
高速・軽量な起動で開発スピードを加速できる
Kubernetesを利用するメリットの4つ目は、高速な起動ができることです。Kubernetesで従来の仮想ソフトウェアよりも動作が軽量化されているため、アプリケーションの効率的な開発が可能となっています。
アプリケーションは市場の需要が変わる前にリリースすることが大切です。開発スピードを加速させることは、そのまま成果の向上に繋がるでしょう。
柔軟にスケーリングできる
Kubernetes利用のメリットの5つ目は、柔軟なスケーリングを行えることです。これは、Kubernetesに搭載されるPodの「水平オートスケーリング機能」によるものです。この機能により、会社の規模や状況に応じてリソースの最適化が可能となります。
余計なコストを効率的に削減できるため、生産性の向上に繋げられます。
サービスディスカバリーで動作を把握できる
Kubernetesのメリットの6つ目は、「サービスディスカバリー」によって動いているサービスを見つけやすくなることです。Kubernetesの大きな特徴は、複数のアプリケーションを同時に実行できることです。しかし、「実行アプリケーションの数が増えると、動いているサービスを見つけることが難しくなるのでは?」と疑問に思う人もいますよね。
ところが、Kubernetesにはサービスディスカバリーという仕組みがあります。これは、サーバー上のアプリケーションのポート番号や IP アドレスを知らせてくれるものです。これにより、どのアプリケーションが動いているのかをすぐに把握することが可能です。
セキュリティを強化できる
Kubernetesを利用するメリットの7つ目は、セキュリティを強化できることです。Kubernetesには、パスワードや SSHキーなどの情報を保全する機能が備わります。加えて、Kubernetesではコンテナを再構築せずに、アプリケーションの構成情報の更新が可能です。そのため、情報管理の面においてもセキュリティが高いと言えます。
Google CloudのGKEでKubernetesを活用
Google Cloudには、GKE(=Google Kubernetes Engine)というKubernetesをベースとしたコンテナ環境が用意されています。これを利用することで、Kubernetesの機能をフルに活用することができます。
ここでは、GKEを活用する具体的な3つのメリットについて紹介します。
- セキュリティ・コンプライアンス管理が簡単
- エラーをすぐに発見できる
- 多様なサービスと統合できる
1つずつ、詳しく解説していきます。
セキュリティ・コンプライアンス管理が簡単
GKE のメリットの1つ目は、セキュリティおよびコンプライアンス管理が簡単に行えることです。Kubernetesは、高い安全性よりも柔軟性と使い勝手の良さが優先された拡張性の高い設計となっています。言い換えると、必要に応じて最適なセキュリティ機能を装備できるということですね。
具体的に、Kubernetesをより安全にする機能をいくつか見てみましょう。「Dataplane V2」を利用すると、クラスタを作成する際の Kubernetesネットワークポリシーを有効にできます。「ネットワークポリシーロギング」では、クラスタのネットワークの可視化が可能です。そして「GKEゲートウェイコントローラ」を利用すれば、柔軟性はそのままに、標準的な制御とセキュリティが提供されます。
このような機能を活用することで、セキュリティやコンプライアンスに関する管理が簡素化が可能となるのです。
エラーをすぐに発見できる
GKEのメリットの2つ目は、エラーをすぐに発見できることです。GKEでアプリケーションを開発すると、自動的にモニタリングされます。例えば、GKEダッシュボードでは、クラスタ、空間、ノード、ワークロード、サービス、Pod、コンテナの指標を総合的に表示できます。さらに、それらすべてに関わる Kubernetes のアラートも見えるのです。
このように、GKEでは設定不要で、全体を俯瞰してエラーを発見することができます。これはトラブルシューティングや最適化に必須の機能と言えるでしょう。
CI/CDパイプラインの構築とスケーリングの簡略化
3つ目のメリットは、CI/CDパイプラインの構築とスケーリングの簡略化が叶うことです。従来、CI/CDパイプラインの構築とスケーリングには、サーバーの設定や構成ファイルの更新の確認など、複数の手動作業が必要でした。しかし、Kubernetes 固有のサーバーレスのCI/CDプラットフォームであるCloud Buildを使うことで、このプロセスを簡略化できるのです。
例えば、Cloud BuildではDockerfileなしでコンテナを構築できます。構築には、独自のコンテナイメージを用意できるほか、事前構築されたイメージも選択でき、時間の節約が可能です。事前のサーバーのプロビジョニングや、キャパシティ購入も不要となります。
加えて、Cloud Buildでは、数回のクリックのみで GKEのCDパイプライン作成ができます。これらのパイプラインには、Kubernetesのデプロイの処理機能も実装されているため、パイプラインの設定と管理のコストにも繋げられるでしょう。
まとめ
ここまで、Kubernetes の概要や利用するメリットについて紹介してきました。現在、アプリケーションの開発においては、異なる環境でも同じく動作するシステムに加え、柔軟性や市場投入までの時間短縮が求められています。Kubernetes を使えば、それらを実現することが可能です。
ぜひ本記事を参考にしながら、Kubernetes を活用してみてください。
また、Kubernetes の生みの親は Google であり、Google Kubernetes Engine は、Kubernetes をマネージドで利用したいという全ての企業様にとって高いパフォーマンスを提供できるプロダクトとなっております。
クラウドエースは Google Cloud マネージドサービスパートナーとして、Kubernetes を利用した開発において多数の実績があります。ぜひ導入をご検討の企業様はご相談ください。
この記事を通じて、Kubernetesの基本的な概念やDockerとの違い、そしてその強力なメリットについてご理解いただけたことと思います。日々のアプリケーション開発で直面する「複数ホストでの管理の煩雑さ」や、「アプリ公開や修正の自動化」といった課題に対し、Kubernetesが一つの有力な解決策となる可能性を感じていただけたのではないでしょうか。
しかし、実際にKubernetesを導入し、その真価を日々の運用で最大限に引き出すには、さらに踏み込んだ知識や具体的なノウハウが不可欠です。「Kubernetesの運用を始めたけれど、セキュリティやコスト管理はどうすれば?」「GKE (Google Kubernetes Engine) を使うと何がどう変わるの?」といった、次なる疑問やより実践的な課題意識が生まれてくることでしょう。
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