2026/07/17 不動産・建築 大東建託パートナーズ AI・機械学習 コスト最適化・運用改善 多種多様な請求書類を生成AIで自動データ化。月4万件の支払処理からの解放がもたらした組織の進化 全国で建物の管理事業を展開する大東建託パートナーズ株式会社(以下、「大東建託パートナーズ」)は、グループ全体で社会的に意義のある組織を目指し、障がい者雇用を含めた多様な人材の活躍を推進しています。そうした組織としての進化を図る上で、ボトルネックとなっていたのが現場の事務作業の負担です。 大東建託パートナーズでは、全国の管理物件から届く毎月約4万件もの支払処理において、目視確認と手入力作業が大きな業務負荷となっていることが長年の課題でした。この課題を解決するため、クラウドエース株式会社(以下、「弊社」)が支援を行い、Google CloudのAIプラットフォーム「Vertex AI」(※)を活用したOCRシステムを構築。AIによる自動化と人による判断を最適に組み合わせることで、単なる業務効率化に留まらず、従業員の働きがい向上と業務サポート体制の強化を同時に実現しました。 ※Vertex AIは導入当時の名称です。現在は「Gemini Enterprise Agent Platform」として展開されています。 (左から) 大東建託パートナーズ株式会社 事業戦略企画部 DX推進課 / 長谷川 翔大氏 業務サポートセンター 業務サポート課 / 村田 舞子氏 業務サポートセンター 業務サポート課 / 加納 樹里氏 業務サポートセンター 業務サポート課 / 柳沢 美瑛氏 クラウドエース株式会社 事業推進本部 第一事業部 / 浅尾 春臣 事業推進本部 第一事業部 / 池永 貴裕 ガオ株式会社 代表取締役 / 嘉門 延親 毎月4万件、全国180拠点以上に個別に届く「紙」の請求書類の処理が大きな負担に 大東建託パートナーズの業務サポートセンターは、業務の集約化および効率化の推進を目的として設立された組織です。同センターは業務削減の1つとして、全国180以上の営業所に個別に届く水道・電気料金などの請求書類を集約し、支払業務の一元化を実施しました。この取り組みによって一元化された支払業務は、人の手による緻密な確認作業で高い品質を維持してきましたが、さらなる効率化を目指し、デジタル技術による抜本的な業務変革(DX)へと踏み出すことになりました。 当時の状況について、同プロジェクトを推進する業務サポートセンターの柳沢氏は次のように振り返ります。 大東建託パートナーズ株式会社 業務サポートセンター 業務サポート課 / 柳沢 美瑛氏 「全国の拠点から届く請求書類は毎月約4万件にものぼります。その多くが自治体が発行する紙の書類であり、フォーマットも千差万別です。これらの一枚一枚を、担当者が目視で確認し、どの物件の支払いなのかを特定した上で、基幹システムへ手入力していく。この繰り返しが、私たちの日常でした」(柳沢氏) この膨大な作業は、特に支払いが集中する繁忙期において、組織全体に重い負荷をかけていました。実務を担う村田氏は、当時の切実な状況を次のように語ります。 大東建託パートナーズ株式会社 業務サポートセンター 業務サポート課 / 村田 舞子氏 「センターのメンバーだけでは捌ききれない場面もあり、特に忙しい時期には他部署の社員に応援を頼んで業務を回すことも少なくありませんでした。お金を扱う業務ですから、一文字のミスも許されないというプレッシャーの中で、膨大な紙と格闘し続けるのは、精神的にも非常にハードな環境でした」(村田氏) 従来のOCRでは突破できなかった「手書き」と「非定型」の壁 大東建託パートナーズでは以前からAI-OCRの導入を検討してきましたが、既存のソリューションでは解決できない決定的な「壁」が二つありました。一つ目は、自治体ごとに異なる膨大なフォーマットへの対応。二つ目は、請求書類に建物コードが印字されていない場合に、担当者が建物を特定するために書き込む「手書き文字」の認識です。 こうした技術的制約に対し、弊社のグループ企業であるガオ株式会社(以下、「ガオ」)の代表取締役 嘉門が本プロジェクトの提案から運用を主導。ガオは、生成AIの実装・活用において高度な専門性を持っており、Vertex AIのポテンシャルを最大限に引き出すアプローチを実現しました。 ガオ株式会社 代表取締役 / 嘉門 延親 「一般的なOCRは定型帳票が前提ですが、今回のプロジェクトでは、それに加えて非定型な請求書類や現場の『手書き文字』の読み取りも重要な要件でした。Vertex AIの持つ、生成AIの技術で文脈を捉えた解析を可能にしつつ、判定ロジックを明文化することで、業務フローを崩さず過去の傾向から異常値の自動検出までを実現。現場のフィードバックを反映するLLMOpsで継続的に精度を高めています」(嘉門) 具体的なアウトプットに基づいた「実現性の高い提案」が決め手に パートナー選定において、大東建託パートナーズが重視したのは「本当に動くものが作れるか」という一点でした。数あるITベンダーの中から弊社が選ばれた理由は、単なる技術力ではなく、提案の初期段階でお客様の不安を拭い去る具体的な答えを示したことにありました。 柳沢氏は、弊社を選んだ決め手を次のように振り返ります。 「他社の提案が概念的な説明に留まる中、クラウドエースさんは最初の提案の段階で、実際の請求書類のサンプルを用いた読み取り精度の検証結果を提示してくれました。具体的なアウトプットを見せてくれたことで、『このパートナーなら、私たちの複雑な業務を本当に自動化できる』という確信に変わったのです」(柳沢氏) この初期段階で、お客様の悩みに寄り添い、技術的な確信へと繋げる役割を担ったのが、営業担当を務めた弊社の池永でした。 クラウドエース株式会社 事業推進本部 第一事業部 / 池永 貴裕 「お客様が最も懸念されていたのは『本当に自分たちの請求書類が読めるのか』という点でした。そのため、理屈を並べるよりも先に、Vertex AIを使って実際にどこまで読めるのかをプロトタイプで証明することが、信頼をいただくための最短距離だと考えました」(池永) 現場の知恵をAIに宿らせる。Vertex AIのポテンシャルを引き出した運用の設計 本プロジェクトにおいて弊社が重視したのは、Vertex AIというツールの導入だけではなく、大東建託パートナーズの実務を深く理解し、それを確実に成果へと結びつけるための生成AIの運用でした。そのため、プロジェクトの技術設計を主導したガオの嘉門は、実務で使える高い精度を維持するためのプロセス、すなわち「LLMOps(大規模言語モデル運用)」の確立を徹底しました。 嘉門は、その具体的な取り組みを次のように語ります。 「生成AIを活用したシステムは、一度構築したら終わり、というものではありません。私たちはLLMの運用プラットフォーム『Langfuse』を活用し、現場のフィードバックを受けてプロンプトの微調整やテストを高速に繰り返しました。この地道な改善サイクルを裏側で回し続けること。それこそが、Vertex AIの性能を実際の業務でブレずに発揮させ、本当にお客様の力になる仕組みにするために不可欠なことでした」(嘉門) また、本システムは単なる文字読み取りの枠を超え、熟練担当者の判断プロセスを補完する機能も備えています。社内の物件データと請求書類を高度に紐付けるマッチングロジックや、過去の傾向から乖離した異常値の自動検知など、これまで経験則に頼っていた独自の業務ルールをヒアリングし、システムへと実装していきました。 柳沢氏は、こうした開発・運用プロセスにおける対応を次のように振り返ります。 「驚いたのは、こちらの細かな要望や実務上の懸念点に対するレスポンスや、改善のスピードです。単にシステムを導入して終わりではなく、私たちの業務を深く理解した上で、共に課題を解決しようとしてくれる姿勢には本当に感動しました。その結果として、すべての従業員が迷わず操作できる直感的なデザインを含め、現場の運用にピタッとハマる形に仕上げることができたのだと感じています」(柳沢氏) 支払処理の95%以上の作業を自動化。手入力の「1円のズレ」から解放された現場 システムの本格稼働後、先行導入された水道料金の処理において、95%以上という極めて高い自動対応率を達成しました。現場で実際にシステムを使用する加納氏は、導入後の変化を実感を込めて振り返ります。 大東建託パートナーズ株式会社 業務サポートセンター 業務サポート課 / 加納 樹里氏 「以前はお金の処理で『1円のズレ』が発生するたびに、何百枚もの書類をひっくり返して原因を探していました。今ではAIが正確に金額を抽出してくれるため、こうした不毛な作業が一切なくなり、業務のスピードが見違えるほど上がりました。この正確さは、現場にとって大きな感動でした」(加納氏) こうした変化は、現場で働く従業員の心理面にも大きな好影響を与えています。かつては「一文字のミスも許されない」という極めて強いプレッシャーの中で膨大な紙と格闘していましたが、AIによる自動化が進んだことで、そうした精神的な負荷から解放され、心にゆとりを持って仕事に向き合える環境へと進化しました。現場のメンバーからは「もう以前のアナログなやり方には戻れない」という声が多く上がっており、AIの導入が単なる効率化を超えて、職場の空気をより前向きなものへと変えています。 作業から企画へ。多様な人材が輝く組織への転換 大東建託パートナーズでは、障がい者雇用をはじめとする多様な人材の活躍を推進しています。今回のAI活用は、単なる業務効率化の枠を超え、そうした一人ひとりの多様な働き方を支える重要な基盤となっています。 AIが単純な入力作業を肩代わりすることで創出された時間は、今や人間にしかできない付加価値の高い業務へと投資されています。例えば、障がいを持つ従業員がよりスムーズに、かつ意欲的に業務を習得できるよう、個々の適性に合わせた新しい教育カリキュラムの策定や手順書のブラッシュアップといった、組織の土台を作る活動に注力できるようになりました。 こうした変化により、業務サポートセンターは、日々届く膨大な書類の処理に追われる段階から脱却し、蓄積されたデータを活用して自ら全社の業務改善をリードする企画・支援の役割をさらに強めています。一人ひとりの従業員が、作業の完遂だけでなく、自らの仕事が会社の利益や社会貢献に直結していると確信できる環境へ。AIは、誰もが自分らしく輝ける職場を実現するための、強力なパートナーとなっています。 まとめ・今後の展望と継続的なパートナーシップ 今回のプロジェクトを通じて、大東建託パートナーズは全国180以上の営業所における事務作業を最新のテクノロジーへと継承し、全社的な生産性向上を実現しました。しかし、大東建託パートナーズにとってこれはゴールではなく、さらなる変革の始まりに過ぎません。 すでに現場では、水道料金の処理で培ったノウハウを活かし、電気料金をはじめとする他の公共料金への横展開が始まっています。自動化の範囲を迅速に拡大させることで、さらなる業務効率化を目指すとともに、システムを通じて蓄積された精度の高いデータを分析し、将来のコスト予測や拠点運営の最適化提案など、経営判断に資する洞察を導き出せる組織へと進化することを見据えています。 営業担当として伴走を続ける弊社の浅尾は、これからの支援について次のように語ります。 クラウドエース株式会社 事業推進本部 第一事業部 / 浅尾 春臣 「同社が進める『AIと人が手を取り合う働き方』は、テクノロジーを活用し、誰もが自分らしく働ける環境をつくる、先進的かつ非常に素晴らしい事例です。今後は今回構築した基盤を活かし、さらなる業務の高度化や意思決定の支援など、より経営に近い領域でもGoogle Cloudの力を活用いただけるよう、能動的な提案を続けてまいります」(浅尾) お客様が目指す「誰もが活躍できる職場」の実現に向け、弊社はこれからも変革を共に推進するパートナーとして、その歩みを共にしていきます。 利用したサービス 生成AI活用支援 Google Cloudの先進的なAIプラットフォームとクラウドエースの技術・知見を融合し、お客様のビジネス課題を解決する生成AIソリューションを提供します。 この記事を共有する