
Googleが新規格「A2A」発表:MCPを補完するAIエージェント連携、50社超が支持
こんにちは!クラウドエースのエモーショナルエバンジェリスト、ラリオスです。
AI技術の中でも、特に「AIエージェント」が私たちの働き方を変えようとしています。AIエージェントは、日々の繰り返し作業や複雑なタスクを自律的に処理し、生産性を高める力を持っています。PC手配、顧客サービス支援、サプライチェーン計画など、企業はすでにAIエージェントを導入し、業務の自動化・効率化を進めています。
しかし、多くの企業では、導入したAIエージェントがそれぞれのシステム内で孤立している「サイロ化」という課題に直面しています。経理、人事、顧客管理など、異なるシステムのエージェントが互いに連携できなければ、その能力を最大限に活かせません。まるで、別々の部署で働く優秀な社員同士が、うまく協力できないような状況です。
この「連携できない」という壁を壊し、AIエージェントたちがスムーズに協力し合えるようにするため、共通のルールが必要だと考えられてきました。そこで登場したのが、Googleが多くのパートナー企業と共に発表した新しいオープンプロトコル「A2A(Agent2Agent)」です。これは、異なるベンダーやフレームワークで構築されたAIエージェント同士が、安全に情報を交換し、協力してタスクを実行するための、いわば「AIエージェント間の共通語」を目指すものです。
この記事では、AIエージェント連携の未来を変える可能性がある「A2Aプロトコル」について、その背景、仕組み、そして特にAnthropic社のMCPとの違いや関係性にも焦点を当てながら、分かりやすく解説していきます。
そもそも「AIエージェント」とは?
A2Aの話を進める前に、まず「AIエージェント」そのものについて、基本を確認しておきましょう。「AIエージェントって、具体的にどんなもの?」と思われている方もいらっしゃるかもしれません。
簡単に言えば、AIエージェントとは、「特定の目的を達成するために、自律的に考えて行動するソフトウェアプログラム」のことです。ポイントは「自律的」という点。事前に決められた通りにしか動けないプログラムとは違い、与えられた目標や状況に応じて、ある程度の判断をしながらタスクを実行します。近年の大規模言語モデル(LLM)の進化は、AIエージェントの能力をさらに高めています。
具体例を挙げると、Webサイトのチャットボット、カスタマーサポートの自動応答、経費精算や会議室予約といった社内業務の自動化、大量データからのレポート自動生成、在庫監視や発注最適化といったサプライチェーン管理など、実にさまざまです。
AIエージェントは、定型業務や複雑な作業を効率化し、コスト削減に貢献します。その結果、私たち人間はより創造的な仕事に集中できるようになると期待されています。この便利なAIエージェントたちが、さらに互いに連携できたら素晴らしいと思いませんか?そこにA2Aの価値があります。
なぜ今「A2A」が必要なのか?:AIエージェント連携の「壁」
AIエージェントは非常に便利ですが、多くの企業では「システムのサイロ化」、つまりシステムが部門ごとに分断されている状態が、その能力を最大限に活かす上での大きな「壁」となっています。
CRM、ERP、HRMなど、異なる目的のシステム上で、AIエージェントも個別に導入されることが多く、これらのエージェントは開発元や技術基盤が異なるため、標準的な方法では連携できません。まるで、言葉の違う人同士がコミュニケーションを取れないようなものです。
この「連携できない」という壁は、企業にとって無視できない問題を引き起こします。
- 部分的な自動化に留まる: 部門をまたいだプロセス全体の効率化が難しい。
- データが活かせない: システム間で情報が共有されず、意思決定の質が低下する。
- 余計なコストがかかる: 無理に連携させようとすると、個別の開発が必要になり、時間も費用もかさむ。
- 新しいアイデアが阻まれる: 「システム連携ができれば実現できるのに…」というイノベーションの機会を逃す。
AIエージェントの真価を発揮させるためには、この「壁」を取り払い、スムーズな連携を実現する仕組み、つまり業界標準となるオープンな連携プロトコルが求められていました。その答えの一つとして、Googleと多くのパートナー企業が協力して開発したのが「A2A」です。
A2Aプロトコルの設計思想:連携をスムーズにするための工夫
A2Aプロトコルは、AIエージェント間のスムーズな連携を実現するために、いくつかの重要な考え方(設計原則)に基づいて作られています。特に知っておきたい5つのポイントをご紹介します。
- エージェントの能力を活かす: 単にデータを繋ぐだけでなく、AIエージェントが持つ「考える力」や「行動する力」を引き出し、賢く協力し合えるように設計されています。
- 既存技術を活用: Webで広く使われているHTTPやJSON-RPCといった実績のある技術をベースにしているので、開発者が比較的容易に導入できます。
- セキュリティを重視: 企業が安心して使えるように、通信相手を確認する認証や、操作権限を管理する認可といったセキュリティ機能が標準で組み込まれています。
- 時間のかかるタスクにも対応: すぐに終わる簡単な応答だけでなく、人間の承認待ちなどで数日かかるような複雑なタスクも扱える柔軟性があります(非同期処理)。
- 多様なデータ形式に対応: テキストだけでなく、画像、音声、動画など、さまざまな形式のデータ(モダリティ)をやり取りできます。
これらの工夫により、A2Aは実用的で使いやすい連携基盤となることを目指しています。
A2Aプロトコルはどう機能する?:連携の仕組みを解説
では、A2Aは具体的にどのようにエージェント間の連携を実現するのでしょうか?その主な仕組みを4つのステップで見てみましょう。
- ステップ1:お互いを知る(能力発見)まず、エージェントは「自分はこんな仕事ができます」という能力リスト(エージェントカード)を公開します。他のエージェントはこれを見て、「この仕事はこのエージェントに頼もう」と連携相手を見つけます。まるで、仕事仲間がお互いのスキルを知るようなものです。
- ステップ2:仕事を依頼し、進捗を確認する(タスク管理)仕事の依頼、状況報告(「進行中」「完了」など)、結果の受け渡しを、決められた形式で行います。これにより、タスクがどこまで進んでいるかを正確に把握できます。
- ステップ3:協力して仕事を進める(協調)タスクの実行に必要な情報(背景情報であるコンテキスト、中間成果物や最終成果物であるアーティファクト、ユーザーからの指示など)を、メッセージを通じて交換し合います。
- ステップ4:ユーザーへの見せ方を調整する(UX交渉)エージェント間でやり取りした結果を、最終的にユーザーにどう表示するのが最適か(テキストか、グラフか、ボタン付きかなど)を、情報を表示する側のエージェントの能力に合わせて相談し、決定します。
この連携プロセスでは、通常、仕事を依頼する「クライアントエージェント」と、依頼を受けて実行する「リモートエージェント」という役割があります。
A2Aが可能にする未来:具体的なメリットと活用イメージ
A2Aが普及することで、私たちのビジネスや働き方はどのように変わる可能性があるのでしょうか?
期待される4つの大きなメリット
- 生産性の向上: 分断されていた業務プロセスが繋がり、エンドツーエンドでの自動化が進みます。これにより、業務スピードが上がり、従業員はより価値の高い仕事に集中できます。
- コスト削減: システム連携のための個別開発が不要になり、開発・運用コストを削減できます。
- 自由な選択: 特定ベンダーの製品に縛られず、最適なAIエージェントを組み合わせて利用できるようになります(ベンダーロックイン回避)。
- イノベーション促進: 異なるエージェントの組み合わせから、新しいサービスや業務改善のアイデアが生まれやすくなります。
活用イメージ:ソフトウェアエンジニアの採用プロセス
例えば、ソフトウェアエンジニアの採用プロセスで考えてみましょう。
- 指示: マネージャーが普段使っているAIエージェントに「Javaとクラウド経験を持つエンジニアを探して」と依頼。
- 連携開始: そのエージェントがA2Aを使い、人事システムのエージェント、外部候補者DBのエージェント、スキル評価エージェントと連携。
- 候補者選定: 各エージェントが協力して候補者リストを作成し、マネージャーに提示。
- 面接調整: マネージャーが候補者を選ぶと、今度はカレンダー管理エージェントなどと連携し、自動で面接日程を調整。
このように、A2Aによって、まるで裏側で専門家チームが動いているかのように、複数のシステムやサービスを横断する複雑なプロセスが、スムーズかつ迅速に進むようになります。
A2AとMCP:違い、そして未来の関係性は?
ここで、AIエージェントの連携に関連してよく名前が挙がる「MCP(Model Context Protocol)」とA2Aの関係について、もう少し詳しく見ていきましょう。
明確な役割の違い
まず押さえておくべきは、A2AとMCPは目的と焦点が異なるということです。競合するものではなく、それぞれがAIエージェントのエコシステムにおいて異なる役割を担っています。
- MCP(Anthropic提唱):AIの「頭脳」を支援するインターフェース MCPは、主に大規模言語モデル(LLM)のようなAIの「頭脳」部分が、外部のツール(API、データベースなど)や必要な情報(コンテキスト)を効率的に利用するための「道具箱」や「接続規格」を提供するイメージです。AIモデルがより多くの情報源や機能を活用できるように支援します。
- A2A(Google提唱):AIという「実行者」同士のコミュニケーションルール 一方、A2Aは、AIエージェントという「実行者」そのもの同士が、直接コミュニケーションを取り、タスクを依頼したり、共同で作業を進めたりするための「共通言語」や「業務プロセス連携のルール」を提供するイメージです。複数のエージェントがチームとして協力できるように支援します。
今後の関係性とエコシステムへの影響
では、この二つのプロトコルは今後どうなっていくのでしょうか?
現時点では、それぞれが独立して開発・普及が進んでいくと考えられます。しかし、将来的には両者が連携し、相互に補完し合う形で利用されるシナリオが一般的になる可能性が高いと見られています。
例えば、ユーザーからの複雑な要求に対し、まずMCPを使って必要な情報収集や外部ツール連携を行い、その結果をもとに、A2Aを使って他の専門エージェント(例:特定の業務システムのエージェント)に必要なタスクを依頼し、連携して処理を進める…といった流れです。MCPで「能力」を高めたエージェントが、A2Aで「協調性」を発揮する、というイメージでしょうか。
このように、A2AとMCPのような標準化プロトコルが普及・連携していくことで、開発者は特定のプラットフォームに縛られずに、最適なAIモデル、ツール、エージェントを自由に組み合わせて、より高度で複雑なAIシステムを構築しやすくなります。これは、AIエージェント技術全体の進化とイノベーションを加速させる大きな要因となるでしょう。
ただし、どちらのプロトコルが、あるいはどのような形で統合されたものが将来的に主流となるかは、まだ不透明な部分もあります。特に企業システムでの活用においては、セキュリティ基準、ガバナンス、運用管理のしやすさなどが普及の鍵となります。今後の業界動向や各プロトコルの発展を注意深く見守る必要があります。
A2Aのこれから:オープンソースとしての発展とエコシステム
A2Aの将来を考える上で重要なのは、それがオープンソースであるという点です。技術仕様が公開され、誰でも利用や開発への貢献が可能です。特定の企業に縛られず、コミュニティ全体でより良いものにしていくことができます。
すでにGoogleだけでなく、Atlassian、Salesforce、SAP、Workdayなど、50社以上の多様な企業がパートナーとして開発に参加・支持しており、強力なエコシステム(多くの関係者が協力し合う環境)が形成されつつあります。
A2Aはまだ登場したばかりですが、このオープンなアプローチと広範な支持により、AIエージェント連携の標準となる可能性を秘めています。これが実現すれば、さまざまなAIエージェントが協調して複雑な問題を解決する「Multi-Agent Systems」の発展も加速し、真の「AIエージェント相互運用」時代が到来するかもしれません。
まとめ:AIエージェント連携の新時代に向けて、企業が取るべき次の一手
A2Aプロトコルは、AIエージェントの潜在能力を解き放ち、ビジネスプロセスを変革しうる重要な技術です。特にMCPとの関係性を理解することで、AIエージェント連携の全体像が見えてきます。
オープンな標準化によってAIエージェント技術がより身近になり、「協調するAI」が実現すれば、生産性の向上はもちろん、これまで考えられなかったレベルの自動化やインテリジェンスがビジネスにもたらされるでしょう。まさに、AIエージェント連携の新時代の始まりです。
この変化の波に対応するため、企業は何をすべきでしょうか?
まずは、「自社のビジネスや業務において、AIエージェントの連携をどのように活用できるか?」を具体的に考え始めることが重要です。A2AやMCPといった技術動向を踏まえつつ、自社のAI戦略の中で相互運用性をどう位置づけるか、検討を開始しましょう。
- 既存システムやAIを連携させれば、どんな業務が効率化できるか?
- 部門間の連携を強化することで、新しい価値を創出できないか?
- A2AとMCP、それぞれの特性をどう活かせるか?
経営層、ビジネス部門、IT部門が協力し、長期的な視点で議論することが求められます。情報収集やスモールスタートから始めるのが現実的です。
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