Google Cloud Next Tokyo ‘23 セッション Google Maps Platform がもたらす SDGs への貢献と顧客体験向上の両立

Google Cloud Next Tokyo ‘23 セッション Google Maps Platform がもたらす SDGs への貢献と顧客体験向上の両立


こんにちは、クラウドエース Google Cloud 事業部で Google Maps Platform を担当しております関です!

2023 年 11 月 15 日、16 日に 4 年ぶりにリアル開催となった Google Cloud 最大のイベント「Google Cloud Next Tokyo ’23」が開催されました。Google Cloud の生成AI の最新情報が満載のイベントで連日来場客で賑わっていました。AI に特化した内容が多いイベントでしたが、Google Maps Platform も様々なセッションがあり、これまでの Maps API の利用方法から、データ活用に位置情報を組み込む方法や、企業の課題解決へ Google Maps Platform をどう活用するかなど、位置情報をどうビジネスに活用していくか、一歩先の活用方法のアイデアが詰まった内容になっていました。

ここではその DAY 1 の基調講演「Google Maps Platform がもたらす SDGs への貢献と顧客体験向上の両立」の概要をご紹介いたします。

企業が取り組む SDGs


SDGs は持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)で、2030 年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。2015 年 9 月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択されてからは、日本国内の企業でも様々な SDGs の取り組みが行われています。現在、多くの企業が取り組む SDGs には以下のような項目があります。

  • ブランドイメージ向上
  • コスト削減
  • コンプライアンス遵守
  • 顧客体験(CX)改善

特に、顧客体験(CX)に着目する企業が多く、顧客体験の向上を最優先に掲げる企業は全体の 72% にあたります。

Google も「Our goal is to make the sustainable choice an easier choice.」というスローガンの元 SDGsへの取り組みを行っています。Google Maps Platform でも従来のルート検索結果に加えて、エコフレンドリーな排気ガスが最も少ないルートが表示されるようになったりと、SDGs の項目に特化したアップデートが行われています。今年の 8 月に行われた Google Cloud Next San Fransisco ‘23  で Google Maps Platform が環境に特化した位置情報を提供出来る最新の「Environment API 」のリリースを発表しました。

Solar API

画像引用元:Google の新しい Solar API で未来の発電を切り開く
「地球に降り注ぐ太陽光 1 時間分で、世界経済が 1 年間に必要とするエネルギーを補うことができます。残念なことに利用されているのはそのごく一部に過ぎません。」
そんな発見から、Google は 2015 年より太陽光発電に着目し「 Project Sunroof 」という太陽光発電を促進させるためのプロジェクトを開始しました。そのプロジェクトで得た太陽光発電量の予測に関する精度の高い情報を一般に公開して誰でも使えるようにしたのが、今回新しく登場した 「Soler API 」です。現在は、日本でも公式に利用出来るようになり、指定した地点の日照情報、太陽光発電量を予測出来るようになっています。

API は、次の 3 つのエンドポイントのリクエストを受け入れます。

  1. buildingInsights: 建物の場所、寸法、太陽光発電の可能性に関する分析情報を返します。
  2. dataLayers: 特定の場所の周辺地域の未加工の太陽光発電データセットの URL を返します。
  3. geoTiff: エンコードされた太陽光情報(デジタル地表モデル、鳥瞰写真、年間と月ごとのフラックス マップ、時間ごとの日陰)を含むラスターを取得します。

( * 引用 : Google ドキュメント: Solar API の概要

この API はビジネス上でロケーション情報の占める割合が大きいサービスで新たな顧客体験が可能になる API です。実際に企業でも利用が始まっており、事例の 1 つとして東京電力の Suncle(サンクル)という住所を入れると太陽光発電に関わる様々な情報が取得できるサービスが紹介されていました。その他にも不動産サイトで土地の日照情報を提供したり、太陽光を利用したサービスを展開する会社でのデータ提供等、様々な用途で顧客体験の向上が可能になります。

Air Quality API

画像引用元:Air Quality API の紹介: 気候変動に対するレジリエンスの促進
「Air Quality API」は 70 を超える大気質指数(AQI)、汚染物質、健康に関する推奨事項など、特定の場所の大気質データを取得することが出来る API です。2023 年 11 月時点では、500 x 500 メートルの解像度で日本も含む 100 か国以上をカバーしています。

Air Quality API の機能

  1. リアルタイムの大気質指数とカテゴリ: Air Quality API は、500 x 500 メートルの解像度で様々な種類の大気汚染物質の大気質指数の値を継続的に計算します。
  2. 健康に関する推奨事項 :  調査に裏付けられた、一般の人々や敏感な人(子供、高齢者、妊婦、アスリート、ぜんそくや心臓の疾患がある人など)を対象とした、何百種類もの健康に関する推奨事項が提示できます。
  3. 汚染物質の詳細 : 汚染物質の種類、濃度、発生源、影響度など様々な汚染物質に関する詳細情報を取得できます。
  4. 1 時間ごとの履歴 : 一定期間における特定の場所の大気質履歴が確認できます。各レスポンスには、1 時間ごとの大気質指数、汚染物質データ、最大 720 時間(30 日間)の健康に関する推奨事項が含まれます。
  5. ヒートマップ: ヒートマップは、Google マップ上に表示できる AQ インデックスと汚染物質の画像タイルです。

( * 引用 : Google ドキュメント: Air Quality API の概要

環境情報を正確に取得することは従来の技術では難しく、広範囲での情報提供には課題がありましたが、Google のネットワークと優れた ML(マシーンラーニング)を利用しデータの提供が実現しました。この API の登場で土地の安全性を可視化することが可能になり、新たな顧客体験が実現可能になりました。

Pollen API

画像引用元:Pollen API を発表: 世界各地の花粉飛散量に関する実用的情報を提供
「Pollen API」は上記で紹介した Air Quarity API の汚染情報を花粉情報に特化させた API です。
指定した場所の花粉飛散量データを 1 × 1 km(0.6 × 0.6 マイル)の解像度で 5 日先まで取得できます。花粉に関するデータには、花粉の種類、花粉指数と健康に関する推奨事項が含まれています。Pollen API は 2023 年 11 月現在、日本を含む 65 か国以上をカバーしています。

Pollen API の機能

  1. 日別の花粉飛散指数とカテゴリ: Pollen API は、様々な花粉の種類と花粉飛散指数の値を 1 x 1 km(0.6 x 0.6 マイル)の解像度で取得できます。
  2. 健康に関する推奨事項:花粉飛散量に応じたおすすめの健康分析情報を取得できます。健康に関する推奨事項は、花粉飛散指数のレベルで変化し、レベルに沿った情報が取得可能です。
  3. 植物の説明の詳細:植物の種類に関する詳細情報と、推定されるアレルゲン効果を取得できます。説明には、植物の種類、属性、季節、形、色、交差反応、該当植物の写真 2 枚が含まれます。
  4. ヒートマップ: Google マップ上に表示できる花粉指数の画像タイル。

( * 引用 : Google ドキュメント: Pollen API の概要

現在、日本人の 2 人に 1 人が花粉症と言われています。これまで情報としては可視化されていなかった花粉情報を顧客に提示することで、より洗練された顧客体験が実現できます。

Environment API 活用の可能性

新しくリリースされた環境系 API は、旅行、不動産、太陽光、電力など様々な業界のお客様に、顧客体験の向上を目的にご利用頂いています。公演では、実際の業界別活用方法などが紹介されていました。

・旅行業界
ホテルや航空券などの予約サイトは、一度予約が完了すると顧客のサイトへのアクセスがストップするケースが多く、旅行当日や旅行中まで顧客と繋がっていることが難しいことが課題でした。旅行先エリアの花粉情報や、大気汚染指数などを提供し、エリアコンディションに合ったプランの提案など、ワンランク上の顧客体験を届けることでエンゲージメントを高めることに活用できます。

・不動産
サイト内で物件、部屋情報だけではなくその土地の環境情報を提示します。汚染情報や花粉情報、日照情報などの提供でよりディープな顧客体験に繋がります。

・ナビゲーション
自動車のナビゲーションでは、汚染されたエリアを避けて通るルーティング、ナビゲーションが実現出来ます。また、走行時に花粉飛散量の多いエリアに入る前に注意喚起をするなどドライバーの健康管理も可能になります。

Google の地理空間分析

公演では、新しい API の紹介以外にも、昨今の位置情報を用いたデータ活用の幅が広がっていることも紹介していました。Google Cloud Platform でデータウェアハウスとして知名度が高い BigQuery 内にも Google Maps Platform の気象データが入っていたりします。 このように Google Maps Platform 内には無数のロケーション情報や、ロケーションに基づく細かいデータが既に蓄積されていて、その情報は毎日アップデートされています。以下のような技術を活用して位置情報を取り入れたデータ分析を行うことがトレンドになっています。

  1. BigQuery 地理空間分析
    Google Cloud Platform の BigQuery とかけ合わせることで、SQLによる地理空間分析が可能になります。地理空間分析では、地理データ型と GoogleSQL 地理関数を使用して、BigQuery で地理空間データを分析し、可視化することができます。店舗展開をする企業など、位置情報がビジネス上で重要となる場合に活用しているケースが多く見られます。
    ( 参考資料:Google ドキュメント ​​地理空間分析の概要
  2. Google Earth Engine
    Google Earth Engine は地球の様子を衛星画像によって可視化、分析できるクラウドベースの地理空間分析プラットフォームです。40 年以上の歴史的な航空画像、地理科学、1,000 以上の厳選された地理空間のデータセットがあり、そのデータにはほぼリアルタイムの衛星画像が含まれます。このデータセットを使うことで、広大なエリアの航空データの利用が可能になります。
  3. Vertex AI
    より良い分析を行うための最初の壁は、正確なデータを出すためのデータ量と言われています。自社のビジネス課題に沿った分析を行うために、機械学習を取り入れる企業も増加しています。また、分析したデータを可視化することも課題の 1 つになっています。Google Cloud Platform の Vertex AI には Model Garden という既に学習済みの 100 を超える基盤が備わっており、AI を掛け合わせた分析、地図画像の生成などが可能になります。
  4. Photorealistic 3D Tiles

    画像引用元:リアルな 3D タイル
    Photorealistic 3D Tiles は高解像度の画像を使用し地図を 3D で表現出来る API です。ダイナミックな 3D 画像の生成により臨場感のある表現が可能になりました。

まとめ

Google Maps Platform も新しい API の登場や、Google Cloud Platform との掛け合わせで CX(顧客体験)の向上、ビジネスにおけるデータ分析にも利用できるなど活用の幅が広がってきました。クラウドエースも Google Maps Platform の取り扱いを行っておりますので、Google Maps Platform の活用にご興味がある方は是非お問い合わせ頂ければ幸いです。

※Google Cloud、Google Maps Platform、BigQuery、Vertex AI、および Google Earth Engine  は、Google LLC の商標です。
※この記事は迅速な情報提供を重視し、速報として掲載しております。記事内に誤りがございましたら、後日訂正いたします。