2022 年の ChatGPT の登場以降、人間と会話するようにチャットができる対話型 AI や、テキストから画像を生み出す画像生成 AI など、「生成 AI」と呼ばれるサービスが世界中で大きな話題を集めており、あらゆる大企業やスタートアップが生成 AI を組み込んだサービスの開発を急速に進めています。
アプリケーションや業務システムなどのクラウド開発リソースといえば Amazon、Microsoft、Google の 3 大クラウド事業者が大きなシェアを獲得していますが、生成 AI の分野についても各社ともに長年にわたる研究の成果をリソースとして提供を開始しており、プラットフォーマーとしての立ち位置を確固たるものにすると考えられています。
その中でも、生成 AI 開発には Google Cloud がおすすめと言える理由や、Google Cloud を使った生成 AI 開発のユースケースについて本記事で紹介していきます。
目次
Google の高度な AI・機械学習技術を利用できる
1 つ目の理由は、Google が提供する高度な AI・機械学習技術を利用できる点です。
Amazon の AWS や Microsoft の Azure をはじめとして、生成 AI 開発ツールを提供するクラウドプラットフォームは Google Cloud 以外にも多数あります。しかし、その中でも Google Cloud は特に高度な AI や機械学習の技術を持っています。
また、Google は常に AI・機械学習に関するさまざまな先進的なプロダクトを発表してきました。例えば、2015 年には「TensorFlow」というオープンソースの機械学習フレームワークを発表し、多くのエンジニアに利用されています。さらに、現在高い人気を集めている対話型 AI サービス「ChatGPT」も、2017 年に Google が発表した「Transformer」という大規模言語モデルがベースとなっています。
このように、Google は AI ・機械学習の分野において最先端を進んでいます。Google Cloud のサービスを使うことで、常に最新の技術を利用できます。
企業がモデルを独自にカスタマイズできる
2 つ目の理由は、企業がニーズに応じて生成 AI のモデルをカスタマイズしたりチューニングすることが可能である点です。
Google Cloud が提供する「Vertex AI」の Model Garden を利用することで、基盤モデル*である PaLM や、事前学習済みのモデル、オープンソースのモデル、そして今後はサードパーティーのモデルなど多数のモデルの中から、ニーズにあったものを UI 上で選択することができます。
さらに、選んだモデルは直接使用するだけでなく、Generative AI Studio を使うことでプログラミングの知識がなくてもプロンプトをデザインし、モデルをチューニングをすることができます。
また、 Vertex AI のファインチューニング機能を使うことで、企業が保有する独自のデータを事前学習された言語モデルと組み合わせてモデル自体をカスタマイズすることができるため、独自のタスクに特化したチューニングも可能となります。
これらの機能により、Google Cloud ではコストバランスに優れた生成 AI 開発におけるモデル作成を実現しています。
*基盤モデルとは
大量で多様なデータで訓練された、様々なタスクに適応してアプリケーションの基盤にできる大規模な AI モデルのこと。
また、「Generative AI App Builder」という、コーディングの専門知識なしで自社用のチャットボットや検索エンジンを構築できるサービスも用意されています。この機能を活用することで、より手軽に生成 AI をビジネスに導入できるようになるでしょう。
このように Google Cloud では、わかりやすいインターフェースで AI や機械学習、プログラミングの専門知識を持たない人でも、手軽に生成 AI ツールを開発できる環境が用意されているのです。
生成 AI 関連サービスが数多く追加されている
3 つ目の理由は、Google Cloud には日々、新たな生成 AI 関連サービスが数多く追加されアップデートされている点です。
さらに、2023 年 8 月 22 日に Google Cloud が主催する Generative AI Summit で、Vertex AI の大規模言語モデル「PaLM 2」とコード生成・補完向けのモデル「Codey」が日本語対応となったことが発表されました。これに伴い、PaLM 2 や Codey を活用した日本語ベースの生成 AI アプリケーションの普及が日本国内で加速することが期待されます。
*LLMとは
「LLM」は、大量のテキストデータを使ってトレーニングされた自然言語処理のモデルのこと。テキストの分類や翻訳、要約、情報の抽出、テキスト生成、質問応答などが可能。
そのほか、Google I/O 2023 では、Google 検索に AI を搭載し、複雑な質問に対して Web サイトの表示だけでなく、文章での回答が表示されるようになることや、Gmail で件名を入力すると、適切な文面を提案してくれる「Help me write」という機能が搭載されることなども発表されています。
このように、現在 Google は生成 AI に特に力を入れていることがわかります。今後も、より便利で高機能な AI 関連プロダクトが発表されることが予想されます。
Google Cloud を使った生成 AI 開発の具体例
ここからは、記事を読んでいる方が Google Cloud を使った生成 AI 開発をよりイメージしやすいようにユースケースを紹介していきたいと思います。
具体的には、Google Cloud の「Generative AI App Builder」というプロダクトを利用することで、自社独自のコンテンツ検索機能を構築することができます。これは、機械学習の専門知識なしでも簡単にチャットボットや検索アプリケーションを生成できるサービスです。
例えば、大量のコンテンツを保有するメディア企業は、Generative AI App Builder を利用してコンテンツ検索機能エンジンを構築できます。これにより、ユーザーは自分の探している音楽、動画、ブログなどのコンテンツを瞬時に見つけることが可能となります。さらに、会話型のチャットボットを構築すれば、高度にパーソナライズされたコンテンツやサービスのおすすめを提示することもできます。
Google Cloud を利用することで、画像やテキストなどの非構造化データを意味的に類似したアイテムと照合したり、テキストによる画像の検索や、画像によるテキストの検索を実現できます。さらに、サイトに訪れたユーザーの行動に基づいた精度の高い商品のレコメンドをしたり、ユーザーの検索意図を深く理解した精度の高い結果を提供することも可能です。
これらを実現するための機能としては、画像認識サービス「Vision AI」、類似コンテンツをマッチングさせる「Vertex AI Embeddings」、コンテンツの保存と分類を行う「Vertex AI Matching Engine」などがあります。
Google Cloud のプロダクトを使用することで、適切な商品説明の生成やカテゴライズ、精度の高いレコメンドが可能となります。結果として、オンラインショッピングなどにおけるエンゲージメントの向上が期待できるでしょう。
具体的には、「Generative AI App Builder」で提供される「Enterprise Search」を使うことで、社内の大量のデータから必要な情報を瞬時に提供する検索機能を数分で構築できます。自然言語で質問を投げかけると、テキスト、画像、動画、数値、音声など複数種類のデータから、ユーザーの意図を理解した上で、わかりやすくまとめられた形での回答を取得できます。