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[第一弾] Cloud SQLに新エディションが登場!Enterprise Plusの実力は?

こんにちは。クラウドエース編集部です。

Cloud SQL にエディション(Editions)が登場

本日、2023 年 7 月 13 日から新たに EnterpriseEnterprise Plus のエディションが 一般公開(以下、GA)となりました。

これらのエディションは、既存の Cloud SQL の機能を継承しつつ、さらなる拡張が施されています。

Cloud SQLとは

Cloud SQL は、2011 年にリリースされた フルマネージドなリレーショナルデータベースサービスで MySQL、PostgreSQL、SQL Server のデータベースエンジンをサポートしています。

データベースの設定やメンテナンス、管理、バックアップなどを自動化し、開発者がアプリケーションの開発に専念できます。

参考:Cloud SQL とは | Google Cloud ドキュメント

新しいエディションの紹介「Enterprise」「Enterprise Plus」

今回のアップデートでは、Cloud SQL を使用する組織やアプリケーションのニーズに基づいて選択できる 2 つのエディションが登場しました。

従来の Cloud SQL は Cloud SQL Enterprise へとリブランディング(名称変更)となり、既存のインスタンスは自動的に Enterprise Edition に移行します。

Enterprise

Enterprise エディションは、従来の Cloud SQL と同等のコスト、パフォーマンス、可用性を提供します。

既存の Cloud SQL インスタンスは、価格や機能に変更はなく、既存の環境をそのまま運用することが可能です。

なお、GA 時点では Enterprise インスタンスの Enterprise Plus へのアップグレードおよびダウングレードはサポートされていません。

移行する場合は、新たに Enterprise Plus インスタンスを作成し、Database Migration Service を利用する必要があります。

Enterprise Plus

Enterprise Plus エディションは、従来の Cloud SQL が提供している機能に加えて、ビジネスクリティカルなアプリケーションを実行するために必要な最高水準のパフォーマンスと可用性を提供します。

※ GA 時点では、MySQL 8.0 及び、PostgreSQL 14 以降のバージョンをサポートし、SQL Server は今後対応予定。

Enterprise Plus では、様々な機能が拡充されますが、特に以下 5 つが注目されるポイントです。

パフォーマンスが最適化されたマシンファミリ

Enterprise Plus は、より安定したパフォーマンスを提供する、最新の N ファミリマシンを導入しています。

これらのマシンタイプは、比率 1:8 の⾼いメモリ⽐率を備えた 最⼤ 128vCPU、864GB メモリの構成をサポートします。 

※ GA 時点ではカスタム マシン構成をサポートしていません。

データキャッシュ

ローカル SSD を追加のバッファプールとして利用できるようになります。

データキャッシュを有効にすると、Cloud SQL によって⾃動的に管理され、読み取り集中型のワークロードのパフォーマンスが向上します。
GA 時点ではマシンタイプに応じたサイズの容量固定 SSD が提供されます。

99.99% の SLA

Enterprise Plus エディションでは、MySQL と PostgreSQL の両方で、メンテナンスを含む、99.99% の SLA が提供されています。

計画メンテナンス RTO が 10 秒未満

計画メンテナンス中、Enterprise Plus インスタンスはバックグラウンドでローリングアップデートを使用し、ダウンタイムを 10 秒未満に抑えます。

最大 35 日間のポイントインタイムリカバリ

可用性の向上に加えて、追加費用無しで最大 35 日間のログの保持が可能になり、より厳格なコンプライアンスのニーズを満たすことが可能になります。
※ GA 時点では、PostgreSQL のみ対応しており、MySQL は今後対応予定。

Enterprise Plus for MySQL の特徴

Enterprise Plus for MySQL は、OSS の MySQL との完全な互換性を維持しつつ、最適化されたハードウェアとソフトウェアの構成により、従来より優れたパフォーマンスを発揮します。GA 時点では、MySQL 8.0 のみ対応しています。

読み取り集中型のトランザクションワークロードに対応するための新機能として、構成可能なデータキャッシュ機能が MySQL 向けに導入されました。

データキャッシュは、ローカル SSD を二次バッファプールとして利用することで、読み取り遅延を短縮し、スループットを向上させます。

従来の Cloud SQL と比較して、読み取りパフォーマンスは最大 3 倍向上しています。

さらに、組み込みのソフトウェア最適化により、トランザクション コミット レイテンシが最大 2 倍改善され、アプリケーションのパフォーマンスが大幅に改善されます。

Enterprise Plus for PostgreSQL の特徴

Enterprise Plus for PostgreSQL は、OSS の PostgreSQL と完全な互換性があり、GA 時点では、PostgreSQL 14、および、15 に対応しています。
Enterprise Plus for MySQL と同様に、ハードウェアとソフトウェアの最適化により、
従来の Cloud SQL と比較した場合、読み取りおよび書き込みのパフォーマンスが最大 2 倍向上します。

さらに、PostgreSQL の拡張機能である pgvector の導入とEnterprise Plus の性能向上の組み合わせにより、
Generative AI に対応したユーザーエクスペリエンスを構築することが可能になっています。

Enterprise と Enterprise Plus の機能比較表

スペック Enterprise Enterprise Plus
データベースエンジン MySQL: 8.0, 5.7, 5.6
PostgreSQL: 14, 13, 12, 11, 10, 9.6
MySQL: 8.0

PostgreSQL: 15, 14

コンピューティング 最大 96vCPU
最大 624GB
コア:メモリ 1:6.5
最大 128vCPUs
最大 864GB
コア:メモリ 1:8
ストレージ 最大 100K IOPs
最大 64TB
最大 100K IOPs
最大 64TB
パフォーマンス
データキャッシュ 非対応 対応( GA 時点では MySQL のみ)
高可用性と災害復旧
冗長性 リージョン、マルチリージョン リージョン、マルチリージョン
東京リージョンあり
可用性 SLA 99.95% 99.99%
メンテナンスRTO 60 秒未満 10 秒未満
データ保護
自動バックアップ 対応 対応
手動バックアップ 対応 対応
PITR 保持期間 最大 7 日間 最大 35 日間

Enterprise Plus の料金体系

東京リージョン(asia-northeast1)の1時間ごとの料金表

料金(USD) 確約利用割引
(1 年間)
確約利用割引
(3 年間)
vCPUs $0.06980 per vCPU $0.05235 $0.03350
メモリ $0.01183 per GB $0.00885 $0.00566
vCPUs(HA) $0.1396 per vCPU $0.1047 $0.06701
メモリ(HA) $0.0237 per GB $0.01777 $0.01138
データキャッシュストレージ $0.0003 per GB N/A N/A
データキャッシュストレージ(HA) $0.0006 per GB N/A N/A

Pricing | Cloud SQL: Relational Database Service

マシンタイプとデータキャッシュの料金

Enterprise Plus は、より安定したパフォーマンスを提供する、最新の N ファミリマシンを導入しています。

※ GA 時点ではカスタム マシン構成をサポートしていません。

マシンタイプ vCPU メモリ(GB) データキャッシュ(GB) インスタンス料金(月額) データキャッシュ料金 (月額)
db-perf-optimized-N-2 2 16 375 $481 $156
db-perf-optimized-N-4 4 32 375 $961 $156
db-perf-optimized-N-8 8 64 375 $1,923 $156
db-perf-optimized-N-16 16 128 750 $3,845 $312
db-perf-optimized-N-32 32 256 1500 $7,690 $624
db-perf-optimized-N-48 48 384 3000 $11,535 $1,248
db-perf-optimized-N-64 64 512 6000 $15,380 $2,496
db-perf-optimized-N-80 80 640 6000 $19,225 $2,496
db-perf-optimized-N-96 96 768 6000 $23,070 $2,496
db-perf-optimized-N-128 128 1024 9000 $30,760 $3,744

※ インスタンス料金、データキャッシュ料金はいずれもHA構成で計算、小数点以下切り上げ

About instance settings | Cloud SQL for MySQL

料金試算

db-perf-optimized-N-2 を選択する小規模な本番ワークロードを想定して試算してみます。

  • vCPUs: $101.908 × 2vCPU = $203.816
  • メモリ: $17.301 × 16GB = $276.816
  • SSD ストレージ $0.442 x 50GB = $22.1
  • データキャッシュ: $156

合計 $658.732(約92,222円)+ネットワーク下り となります。
※ 月額、HA構成、1 ドル 140 円計算

データキャッシュをオフする場合は、$502.732 (約70,382)となります。

パフォーマンスやSLA、運用コストなど、総合的に判断すると、非常に安価だと言えるでしょう。

Enterprise Plus のユースケース

より高い性能が求められるアプリケーション

Enterprise Plus は、従来の Cloud SQL の性能では十分対応できなかった高負荷のアプリケーションに対応できます。

たとえば、大量のリアルタイムデータを処理したり、高度な分析を行うアプリケーションなどに対する適用が考えられます。

Enterprise Plus の高いパフォーマンスは、これらのアプリケーションにとって信頼性の高いインフラを提供します。

より高い可用性が必要なアプリケーション

ビジネスの継続性を保つためには、アプリケーションが常に稼働し続ける必要があります。

Enterprise Plus は 99.99% の SLA を提供し、計画メンテナンス中のダウンタイムも 10 秒未満に抑えられます。

24 時間 365 日サービスを提供する必要がある企業や、ダウンタイムによるビジネスへの影響を最小限に抑える必要があるお客様に対して、安心してサービスを運用することが可能になります。

PostgreSQL の移行先として

AlloyDB は BigQuery Federation をサポートしていないため、PostgreSQL の移行を検討しているお客様の中には、この点で移行を躊躇している方も多いでしょう。

一方で、Cloud SQL は BigQuery Federation に対応しており、従来の Cloud SQL では対応できなかった一部の要件も、Enterprise Plus では十分に満たせることから、PostgreSQL の移行先として優れた選択肢となります。

MySQL の移行先として

PostgreSQL の場合、AlloyDB が移行先として選択できますが、MySQL の場合は AlloyDB に移行できません。

そこで、この度リリースされた Cloud SQL Enterprise Plus for MySQL が選択肢に挙がります。
MySQL との完全な互換性を持っているため、既存の MySQL データベースをスムーズに移行し、運用することが可能です。

まとめ

本記事では、Google Cloud の Cloud SQL に新たに登場した Enterprise と Enterprise Plus という 2 つのエディションについて詳しく解説しました。

高い SLA とパフォーマンス を発揮する Enterprise Plus エディションの登場によって、より厳しいパフォーマンスが要求されるケースに対応できるようになりました。

クラウドエースは、お客様一社一社のビジネス要件を理解し、ニーズに合った最適なクラウドソリューションをご提案しております。

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