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アジャイル経営に心理的安全性が不可欠な理由とは
こんにちは、クラウドエース編集部です。
次々と新たな技術が登場し、トレンドの変化の激しい現代。ビジネスを成長させるには「アジャイル経営」や「心理的安全性」が重要と耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか。
この記事では、「アジャイル経営」と「心理的安全性」についてわかりやすく解説し、アジャイル経営に心理的安全性が重要である理由や、日本企業が抱える課題をアジャイル経営はどう解決できるのかについて紹介していきます。
目次
アジャイル経営とは?
アジャイル(=素早い)経営とは、名前の通り顧客のニーズにスピーディに対応していくような経営の仕組みです。まずは、アジャイル定義の具体的な定義やメリットについて見てみましょう。
アジャイル経営の定義
アジャイル経営とは「職務を横断して作られた小さなチームが、自律的に判断・行動しながら事業を進めていく経営方法」と定義できます。
アジャイル経営は、エンジニアの方にはお馴染みの「アジャイル開発」という開発手法が元になっています。
アジャイル開発とは、1~4 週間という短い開発期間単位で、計画、設計、開発、テストまでのサイクルを繰り返しながら開発を進める開発手法です。優先度の高い機能から開発を行うことで、素早くリリースすることが可能になったり、ユーザーの声をすぐにサービスに反映できたりといったメリットがあります。
このアジャイル開発を経営手法に応用したものが、「アジャイル経営」です。アジャイル経営では、取り組むべき優先順位の高い事業アイデアから順に、短い期間でサービスや製品として形にしていくことを目指します。
ちなみに、アジャイル開発が登場する前は、「ウォーターフォール開発」と呼ばれる開発手法が主流でした。これは最初に計画や全体の機能設計を決め、それに沿って開発やテストをしていく方法です。従来の、全社的・長期的な経営目標から逆算して各部門が取り組むべきことを上層部が指示するトップダウンな経営は、ウォーターフォール開発に例えることができるでしょう。
アジャイル経営における「スクラム」とは
アジャイル経営について学んでいくと、「スクラム」という言葉を聞くことがあるかもしれません。ここで言うスクラムとは、「さまざまな職種の人で構成された少人数のチーム」のことです。スクラムの大きな特徴は、特定のリーダーを立てずに、メンバー全員が主体となって行動することです。
アジャイル経営では、それぞれのスクラムが自律的に意思決定を行ってプロジェクトを遂行していきます。上司や他部門に承認を得るという無駄なプロセスがなくなるため、意思決定が加速化し、市場や顧客ニーズの変化に素早く対応できるという仕組みです。今やアジャイル経営を実施する多くの企業が、スクラムを活用していると言われています。
アジャイル経営のメリット
アジャイル経営のメリットとしては、意思決定を高速化できること、それにより時代のニーズに即したサービスを提供しやすくなること、イノベーションが生まれやすくなることが挙げられます。
トレンドが次々と変わり、顧客ニーズが多様化している現代において、市場の変化に素早く対応することは、どの企業にとっても非常に重要になっています。
しかし、従来のトップダウン形式の経営だと、それを実現することは難しいです。数年単位の経営計画を作成し、承認を得て、それを各事業部に割り振り実現していくという方法では、計画から実現までに長い時間がかかってしまいます。もちろん、その間にも市場は変化し続けます。計画時点では革新的だったアイデアも、それが実行されるときには既に時代遅れとなっていることもあるでしょう。
一方でアジャイル経営なら、各スクラムに意思決定権があるため、上層部の指示を仰いだり、確認を取ったりする必要がなくなります。短い期間で試行錯誤しながらプロジェクトを遂行するため、市場の変化にすぐに対応したり、サービス提供後に顧客の反応を見ながら改善したりできます。
また、職務の垣根を超えたスクラムを組んでプロジェクトを進めることで、イノベーションが生まれやすくなるというメリットもあります。専門分野の異なる人材が 1 つの課題に一丸となって取り組むことで、これまでになかった視点やアイデアを得られるのです。
心理的安全性とは
アジャイル経営に欠かせないと言われているのが「心理的安全性」という概念です。これは、簡単に言えば「職場内やチーム内で自分の考えを気兼ねなく、リスクなく意見できると常に思える状態」のことです。
例えば、「こんなことを質問すると馬鹿だと思われてしまうかも」「新しいアイデアを思い付いたけれど、どうせ聞いてもらえない」などと感じる場合は、心理的安全性の低い状態と言えます。反対に、「このチームならミスをしても大丈夫」「思いついたことはとりあえず言ってみよう」と感じられる場合は、心理的安全性が高い状態です。
Google 社が実証実験において「心理的安全性はチームの生産性を高める最も重要な要素」と結論付けたことにより、大きな注目を集めました。
参考記事
アジャイル経営に心理的安全性が不可欠な理由
アジャイル経営を実現するためには、心理的安全性が非常に重要になってきます。その理由は、心理的安全性が確保されていない状態では、スクラムがうまく機能しないためです。
先述の通り、アジャイル経営では上司の指示により部下が動くトップダウン形式ではなく、スクラムのメンバーによる対話に基づいて意思決定が行われます。異なる専門知識、異なるバックグラウンドを持ったメンバーが、それぞれの考えや意見を正直に話すことができて初めて、革新的なアイデアが生まれます。
しかし、チームの心理的安全性が低い状態では、メンバーが正直に自分の意見を言いにくくなってしまいます。チームメンバーの特定の人物によるトップダウンとなってしまうこともあるでしょう。このような状態では、多様な意見を基にした意思決定を行うことはできません。つまり、アジャイル経営はチームメンバーの心理的安全性が高い状態で初めて実現されるものなのです。
日本企業における課題とアジャイル経営
アジャイル経営は、現代の日本企業が抱える課題の解決策としても注目されています。
日本企業の抱える課題の一つとして、「他国に比べてイノベーションが起きにくいこと」が挙げられます。「時代の変化に対応したビジネスが生まれにくい状態」とも言えるでしょう。
日本でイノベーションが起きない理由の一つとして「多様性のなさ」が挙げられます。イノベーションは既存知見と新たな知見の組み合わせから生まれるものと言われます。そのためには、異なる専門領域や異なるバックグラウンドを持った人が一体となって、新規事業の創出に取り組むことが有効です。つまり、イノベーションには多様性の確保が必要となるのです。
しかし、日本は他国に比べて多様性のある社会とは言えません。日本で働く多くの人が日本語を話す日本人です。そして企業の内部でも、男性女性、年配若者、大企業出身者スタートアップ出身者などで分断していることが多いでしょう。このような構造であることが、時代に合った革新的な技術や商品が出ない理由の一つと考えられます。
企業がアジャイル経営を実施し、年齢や部門を超えた垣根を超えたメンバーで構成されるスクラムでプロジェクトを進めていくことは、このような状況を打破する有効な手段と言えるでしょう。つまり、アジャイル経営はイノベーションを生み出す環境・組織構造を作るために重要なのです。
なお、アジャイル経営を実現して生産性が上がれば、労働時間を減らせるというメリットもあります。実際にアメリカの企業の中には、アジャイル経営により業務スピードが 300% 向上したという事例もあります。世界的に見ても労働時間の長い国と言われている日本にとって、これは大きなメリットとなるでしょう。
参考記事
まとめ
ここまで、アジャイル経営と心理的安全性の関係性について解説してきました。
余談ですが、弊社クラウドエースも Google Cloud のパートナーとして、Google の仕事術や、働き方について創業時からとても重要視し、組織マネジメントに取り組んできました。なかでも心理的安全性は極めて重要な要素と位置付け、会社のミッションを「正直を仕事にする」とすることで、チーム全体の心理的安全性を高めていくために一人一人が意識しながら業務を遂行できるよう努力しています。
この記事を参考に、時代の流れに合わせたビジネス成長を実現する「アジャイル経営」、そしてそれを支えるための「心理的安全性」の考え方を取り入れてみてはいかがでしょうか。
ここまでお読みいただき誠にありがとうございました。
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