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5分でわかる SoE、SoI、SoR の意味とそれぞれの違い

こんにちは。クラウドエース編集部です。

情報システムの大きな分類として「 SoE 」「 SoR 」「 SoI 」があります。言葉は耳にしたことがあるものの、それぞれの具体的な違いについてはよくわからないという人も多いのではないでしょうか。

この記事では、 SoE、SoI、SoR それぞれの概念について説明し、中でも近年注目度が高まっている SoE のビジネスにおける重要性について解説していきます。

SoR とは

SoR は「 System of Records 」の略称で、「記録のためのシステム」という意味です。
具体的には会計や経理、人事、受発注管理、製造管理のためのシステムなどが挙げられ、大量のデータを正確かつ効率的に記録し、必要に応じて計算を行い出力することが主な目的です。
SoR は企業の業務遂行のために用いられることが多く、正確性・安定性が特に重視されます。SoE、SoL が登場する以前から存在しており、従来型の IT システムと言えるでしょう。

SoEとは

SoE は「 System of Engagement 」の略称で、「エンゲージメントのためのシステム」という意味になります。マーケティングにおいて「エンゲージメント」とは、顧客とのつながりのことを指し、SoE はユーザーとの関係を強化することを目的としています。

従来の IT システムである SoR が企業における業務遂行が主な目的であったのに対して、顧客にとって使いやすく設計されたシステムが SoE であると言えます。また、SoE では顧客のあらゆるデータを収集・分析しながら、新たな需要を見つけたり、ビジネスモデルを創出したりします。

具体的な SoE としては、CRM(顧客関係管理システム)や SNS、グループウェア、レコメンドエンジンなどが挙げられます。

なお、SoE は SoR が発展したものというわけではなく、2 つのシステムは互いにサポートし合う関係にあります。先述の通り、 SoR はあくまで記録を行うための IT システムですが、SoR で得られる正確なデータは顧客との繋がりを創出するために重要だからです。顧客視点を正しく理解するためには、蓄積されたさまざまなデータを活用する必要があるのです。

つまり、顧客との繋がりを作る SoE は、SoR ありきで機能するということです。

SoI とは

SoI は「 System of Insight 」の略称で、「インサイトのためのシステム」という意味です。ここでいう「インサイト」とは、「洞察」を意味する英単語で、マーケティングでは購買行動の根底にある動機や本音のことを指します。

つまりSoI は、蓄積されたデータを分析し、顧客のニーズや購買に至るプロセスを洞察するシステムと言えます。

具体的には、企業が蓄積している膨大なデータを収集・蓄積・分析・加工し、経営の意志決定をサポートする「 BI(ビジネスインテリジェンス)ツール」、「 ERP(企業資源計画システム)」などが挙げられます。

なお、「蓄積されたデータをもとに洞察を行う」という性質の SoI は、それ単体ではなく、基本的には SoE や SoR と組み合わせて活用されます。

例えば、EC サイト運営においては、SoR によって顧客がカートに入れた商品や、購入した商品のデータを蓄積します。そのデータを分析するのが SoI で、分析結果をもとに趣味趣向に近い商品を「おすすめ商品」として提案するのが SoE ということです。

SoE が発展した理由・背景

ここまで、SoE、SoI、SoR それぞれの概念について紹介してきました。現代のビジネス現場においては、この 3 つのシステムの中でも特に「 SoE 」が必要だと言われています。

その背景としては、近年の企業経営において以下の 2 つが重視されているからです。

  • 顧客ニーズの多様化
  • DX の推進

インターネットの普及に伴い、顧客の購買行動やニーズは多様化しています。そのような幅広いニーズに対応する手段として、システムを用いたユーザーとの関係強化が図られているのです。

また、DX 化の推進にも SoE は必須です。DX とはひとことで言えば「データとデジタル技術を活用し、ビジネスにおける激しい変化への対応、業務の変革、競争の優位性を確立すること」と言えます。

データを記録することが実務と直結している人事や経理の業務であれば、従来の SoR で充分でした。しかし、データ記録が業務の主軸とはならない他部門でも IT の活用が始まると、業務の負荷とならないために、ただ単に情報を記録できるだけでなく、入力しやすい UI やストレスフリーな操作性も求められます。ユーザー視点で設計された SoE は、そのようなニーズに応えるためにも重要と言えます。

守りの IT と攻めの IT とは

近年、企業における IT 投資について、「 攻めの IT 」「 守りの IT 」という  2種類の考え方が注目されています。そして、「攻めの IT 」の実現には SoE が必須だと考えられています。

簡単に言えば、「攻めの IT 」とは企業の利益を伸ばすために、IT を活用した新しいビジネスを展開したり、既存のビジネスを変革したりすることです。従来の業務に T を取り入れたり、置き換えたりするだけでなく、IT を使って業務やサービスそのものを刷新することを指します。

一方で、「守りの IT 」は、コスト削減や業務効率化のために IT を活用することを指します。事務作業やデータ処理などのプロセスを IT に置き換えますが、従来のビジネスモデルを大きく変更することはありません。

ちなみに、経済産業省では、攻めの IT について以下のように定義しています。

「攻めの IT 経営とは、IT の活用による企業の製品・サービス強化やビジネスモデル変革を通じて新たな価値の創出やそれを通じた競争力の強化に戦略的に取り組む経営のこと」

ビジネス環境の変化の激しい現代において、企業が変化に対応しながら競争上の優位性を確立するためには、「攻めの IT 」の姿勢が必要と言われています。そして、「攻めの IT 」を実現するために欠かせないと考えられているのが、「 SoE 」です。

実際に、新しいビジネスモデルでありながら、急激に事業を拡大しているサービスには SoE をベースとするものが数多くあります。例えば配車や食品の注文・配達を提供する Uber や、空き部屋の貸借サービスを行う Airbnb などは、SoE によってプラットフォームを提供しています。

このように、デジタル化が進む現代においては、SoR によってデータを収集して企業内部の業務効率化に活かすだけではなく、データを用いて新たなビジネスモデルを展開する SoE が重要だと言われているのです。

ただし、先述の通り SoR と SoE は互いにサポートし合う関係にあります。SoR で得た膨大なデータという情報資産を、「攻めの IT 投資」でうまく活用することで、競合他社との差別化に活かせると考えられています。

SoE の事例を紹介

最後に、SoE を活用した具体的なビジネス事例について見てみましょう。

EC サイト「 Amazon 」

世界最大の EC ショップ「 Amazon 」では、ユーザーの閲覧履歴や購入履歴から、「この商品もおすすめ」といったレコメンドサービスが提供されています。

ユーザー視点に立つと、好みや嗜好にあった商品を手間なく見つけることができるというメリットがあり、企業視点に立つと転換率や売上を上げられるというメリットがあります。

このように、データをもとに顧客にサービスを提供するレコメンド機能は、SoE のひとつと言えます。

配車・食品配達「 Uber 」

配車サービスの「 Uber 」や、食品配達サービスの「 Uber Eats 」も、SoE を活用したサービスと言えます。

同サービスでは、車を利用して収入を得たい運転手とユーザーを GPS 情報を使ってマッチングさせるプラットフォームを提供しています。時代やニーズの変化に合わせ、データを収集し、顧客と直接繋がりながら新たなビジネスモデルを創出していることから、SoE に分類できます。

まとめ

ここまで、 SoE、SoI、SoR それぞれの意味と SoE が重視されている理由について解説してきました。この記事を参考に、自社ビジネスへの SoE 活用を検討してみてください。

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