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老舗書店が一からBigQueryの導入に挑み、データ可視化を実現できた理由

横浜を中心に44店舗を展開する、老舗書店チェーンの株式会社有隣堂。書店としての伝統を守りながらも、多岐に渡る事業を展開し時代のニーズに応える取り組みを積極的に行っている。そんな同社がさらなる発展のための基盤とすべく力を入れ始めたのが、社内データの活用だ。本記事ではBigQueryの導入によってデジタル化への一歩を踏み出した有隣堂と、それを支援パートナーとして後押したクラウドエースの取り組みをご紹介。
(左から)
株式会社有隣堂 システム管理部
春日 秀雄氏、高柳 正義氏、部長 / 石橋 育世氏、小熊 美紗稀氏
クラウドエース株式会社 事業推進本部
セールス / 池永 貴裕、森 菜摘、カスタマーエンジニア / 田中 悠路

さらなるを事業発展を目指し、データ活用への挑戦が始まる

1909年の創業以来、神奈川県を中心に文化の発展に貢献してきた有隣堂。そのビジネスの領域は多岐にわたり、書籍・雑誌・文具の小売や音楽教室の運営にくわえ、民間企業や官公庁向けにオフィス関連商品の供給やドキュメントICTソリューションの提供も行っている。「伝統的な書店というイメージが強いかもしれませんが、実は売上の半分は法人向けビジネスが占めています」と、システム管理部の部長である石橋 育世氏は語る。

また、本や文房具についてオリジナルの世界観を発信するYouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」は34万人(2025年3月現在)を超える登録者を集めるなど、独自の取り組みでファンを獲得しており、その事業領域は着実に広がりを見せている。

より良い企業を目指していきたいという思いのもと、次なる革新として有隣堂が取り組んでいるのが、社内データの活用だ。

「正直なところ、デジタル化自体が全社的にもまだまだこれから…といった状況です」と石橋氏は率直に明かす。

伝票のペーパーレス化やGoogle Workspaceの導入による情報共有の電子化、会議のオンライン化など、少しずつデジタル化は進めてきたものの、社内データの活用や見える化には課題があった。石橋氏によると、「社内でもその必要性すら共有できていない状態だった」という。

同社では、店舗の売上データから経費の明細まで、基幹システムに日々膨大なデータが蓄積されていくものの、十分に活用されていない状況であった。システム管理部でGoogle Workspaceの運用を担う高柳氏は「店舗ごとの売上傾向を分析したり、部門別の経費使用状況を把握したりといった活用、可視化ができていませんでした」と当時を振り返り、まるで宝の持ち腐れのような状態にあったことを明かした。

そこで、こうした課題の解決にあたり、すでにGoogle Workspaceを導入していたことから、Googleが提供するBIツールであるLooker Studioを使って自社内でデータの可視化を試みた。しかし、ここで大きな壁にぶつかる。

「大量なデータの処理が必要となるため売上の可視化画面のレスポンスが非常に遅く、本来なら3秒程度で表示されるべきところが30秒近くも待たされる状況でした。これでは多忙な社長や取締役、各部長といった役職者に提供することは到底できないと感じていました」(石橋氏)
(左から)株式会社有隣堂 システム管理部
部長 / 石橋 育世氏、高柳 正義氏

クラウドエースと共に進めたBigQuery導入、「実践的な支援」だからこそ得られたものとは

この課題を解決するために同社が選んだのが、大量なデータの高速処理を実現するBigQueryの導入だった。そしてBigQueryの導入支援のパートナーとして選ばれたのが、すでに同社がGoogle Workspaceのサポートを受けている吉積情報株式会社のグループ企業であり、国内においてGoogle Cloudのトップクラスの実績をもつクラウドエースだ。

BigQueryの導入に際して、当初は“従量課金制”であることがコスト面でのハードルとなっていた。

有隣堂の営業担当であるクラウドエースの池永は、「従量課金制であることについては多くのお客様が不安に感じる部分です。その障壁をいかにクリアにできるかが我々の重要な役割でした」と語る。クラウドエースの森も「有隣堂さんにおける実際の利用シーンを想定し、概算を見積もり、無料枠の範囲で収まることをご説明しました。また、予算を超えないようにアラートを設定できる機能なども併せてご紹介しました」と、懸念点を払拭していった過程を語る。

「当社のデータ量と規模をクラウドエースに相談したところ、無料枠で対応できる可能性が高いというアドバイスをいただきました。また、全社展開の前に試験的に始められることもわかり、BigQueryの導入を決断しました」(石橋氏)

導入にあたっては、BigQueryの知見を持ち合わせていなかった有隣堂にとって、クラウドエースによるトレーニングとワークショップが重要な役割を果たした。3日間の短期集中型で実施され、その内容は大きく2つのパートに分かれていた。前半は、トレーニングとしてLooker Studioの基本的な使い方や練習問題を通じたスキル習得。後半は、実践的なワークショップとして既存のダッシュボードの改善に取り組んだ。

トレーニングとワークショップを担当したクラウドエースのカスタマーエンジニアである田中は「有隣堂さんでは具体的な課題があり、実現したいことが明確だったので、それを順に追って解決できるように進めました。まずはダッシュボードをスプレッドシートで作成し、その後BigQueryに移行することで、パフォーマンスの改善を実感していただけたと思います」と説明する。

このワークショップはオフライン形式での実施であったことも、効果を高めた要因だったという。有隣堂で基幹システムの運用を担う小熊氏は、「基本的なことから応用まで、すごく丁寧に教えていただきました。対面で直接パソコンを見ていただきながらのレクチャーだったためよりわかりやすかったですし、具体的な課題に対して、その場で解決策を提案していただけた点も良かったです」と評価する。

Googleの運用管理とネットワークサーバー周りの運用を担当している春日氏も「オフラインでの実施が功を奏したと思っています。教材どおりの内容を伝えるだけでなく、実際に困っていることにその場で対応してもらえました。特に印象的だったのは、概念的な説明だけでなく、実際に使えるレポートを作るためのノウハウまで提供していただけたことです」と語る。

こうしたクラウドエースの支援によって、具体的な成果も着実に表れた。たとえば、基幹システムから出力される帳票形式のデータの活用方法について、高柳氏は「私たちだけでは対応できなかった課題でしたが、クラウドエースさんが具体的なクエリまで作ってくれ、そのクエリが他のデータにも応用できる形だったことで、大きく進展しました」と振り返る。

この3日間の集中的な取り組みにより、有隣堂におけるデータ活用の基盤が整っていったのである。
(左から)
株式会社有隣堂 システム管理部
小熊 美紗稀氏、春日 秀雄氏

(左から)
クラウドエース株式会社 事業推進本部
セールス / 池永 貴裕、森 菜摘、カスタマーエンジニア / 田中 悠路

数字からグラフへ、データが語り始める瞬間

BigQuery導入後、最も顕著な改善が見られたのは作業パフォーマンスだ。従来はLooker Studioの画面を開いてから1分近く待たされ、フィルターをかけるたびに再び待たされるというストレスがあったというが、BigQuery導入後は、瞬時に表示されるようになった。また、データの更新作業も大幅に効率化されたという。

「基幹システムからデータを抜き出して加工する作業の時間が大幅に削減され、以前の1/10程度で済むようになりました」(高柳氏)

しかし、それ以上に大きな価値があったのは、分析したデータをグラフやチャートによって視覚化することで得られる新たな気づきだ。石橋氏は「数字だけで見ているのとはインパクトがまったく違います。絶対に社内全体へ広げていくべきだと考えています」と力を込める。

池永は「クラウドエースでは全社員がダッシュボードを活用しています。営業であれば、週単位での商談件数や受注状況、月単位や年単位での実績など、さまざまなデータを可視化しています。有隣堂さんでも同様の展開が期待できると考えています」とクラウドエースでの経験を共有する。

また、導入過程で特に有益だったのは、データベース設計に関するアドバイスだと石橋氏は語る。

「BigQueryを使うにあたって、『データベースの作り方や命名ルールを決めたほうがいいですよ』といった、最初に知っておくべき基本から教えていただきました。自分たちで場当たり的に進めていたら、おそらくわかりにくいインターフェイスになり、後から整理するのが大変だったと思います」

有隣堂の未来を拓く、データ活用の可能性

現在はシステム管理部門内での活用にとどまっているものの、今後は全社的な展開を視野に入れているという。

「毎月の売上速報をこれまでの数値だけのスプレッドシートから、見える化したグラフに置き換えていこうと考えています。役員はもちろん、店長や外商部門の部長、課長にも共有していく予定です」(石橋氏)

さらに、データ活用の範囲も広げていく計画だ。石橋氏は、「たとえば、時間帯別のアルバイト数と売上の関係を分析することで、最適な人員配置に活用できるなど、やれることはいろいろとありそうだなと考えています。また、生成AIを含めたAIの活用は今後、企業の標準になっていくと感じています。当社としても前向きに取り組んでいきたいですね」と展望を述べる。

最後に石橋氏は、こうした展望に向けて、クラウドエースへの期待を次のように語る。

「これまでの支援を通じて、顧客本位で動いてくれる会社だと感じています。技術力はもちろんですが、私たちのような何から始めていいかわからず困っている企業の背中を押していただいたり、新しい可能性を示していただいたりと、非常に心強いパートナーです。BigQueryやLooker Studioの活用サポートだけではなく、今後のGoogleのプロダクト活用においても、引き続きご支援をお願いしたいと考えています」(石橋氏)

※Google CloudおよびGoogle Cloud製品・サービス名称はGoogle LLCの商標です。

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