エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社

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「クラウドエースとチーム一体に」エイチ・ツー・オー リテイリングの Google Cloud 活用を起点にした DX から学ぶ、内製化のコツ

阪急百貨店や阪神百貨店などの百貨店をはじめ、食品スーパー、ショッピングセンターなど多岐にわたる業態を手掛ける関西最大級の小売グループであるエイチ・ツー・オー リテイリング。ビジネスモデルとして「コミュニケーションリテイラー」を掲げ、デジタル技術とリアル店舗を融合し、顧客との深い関係を築いていく。
この方針に基づき 2021 年に DX 推進体制を整え Google Cloud を導入し、クラウド化を推進。クラウドエースとのパートナーシップにより、Google Cloud 活用の内製化チームを立ち上げ、自社ビジネスに精通したチームによる迅速なシステム提供の実現を目指した。
エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社
IT・デジタル推進室 サービスマネジメントグループ長 右田 拓也氏(右)
ストラテジー&ソリューショングループ デジタルソリューション・開発部 村上 奨氏(左)

デジタルを活用し、新たなおもてなしを追求! エイチ・ツー・オー リテイリングの DX

エイチ・ツー・オー リテイリンググループは、「『楽しい』『うれしい』『おいしい』の価値創造を通じ、お客様の心を豊かにする暮らしの元気パートナー」をグループビジョンとして掲げる。
そんなエイチ・ツー・オー リテイリングでは、2030 年に向けて既存事業の再建・磨き上げや、新事業モデルへの挑戦を軸とする長期事業構想を策定している。ビジネスモデルのキーワードとなるのが「コミュニケーションリテイラー」だ。デジタル技術とリアル店舗を融合した顧客とのダイレクトなコミュニケーションを重ねることで、継続的かつ強くて深い関係を築き上げ、それをベースにさまざまなサービス・商品を提供していくことを目指している。

「コミュニケーションリテイラー」について、エイチ・ツー・オー リテイリングで IT・デジタル推進室 サービスマネジメントグループ長を務める右田 拓也氏は次のように説明する。

「デジタル化の加速やコロナ禍を経て世の中が大きく変化するなか、我々もおもてなしのあり方を変えていかねばなりません。デジタルを活用することで、お客様に対して、ものだけではなく体験も含めて満足度の高いおもてなしを提供することを目指しています。そのためには、これまでの購買情報や属性情報など個々のお客様の背景をデータで捉える必要があります。そこで、百貨店や食品スーパー、ショッピングセンターといった事業を越えてグループ内でお客様の情報をファースト パーティ データとして一元管理し、それをベースに新たなサービスや商品開発を行っていく取り組みを推し進めています」(右田氏)

エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社
IT・デジタル推進室 サービスマネジメントグループ長 
右田 拓也氏

現在ではパートナーを含め 120 名規模の IT・デジタル推進室だが、以前は 10 名ほどしかおらず、そのため外部のシステムベンダーに頼る部分が多く、システムの全体像や扱われるデータが見えにくい状態になっていたという。新たなおもてなしを実現すべく、組織全体の IT スキルの底上げを目指し、内製化に向けた IT 人材の育成や外部パートナーとの連携を深めるなど、社内外でさまざまな取り組みが行われ、2021 年の 4 月に DX 推進体制が構築された。

Google Cloud を活用した DX 本格始動。そこで直面した IT スキル不足

エイチ・ツー・オー リテイリングは IT 部門の体制強化を経て、クラウドを最大限に活用し、顧客や従業員向けにサービスを提供する IT 基盤の構築に乗り出した。なかでも肝となるデータ分析のためのデータ ウェアハウスや顧客データベースの開発に向けて、同年 10 月に Google Cloud を導入。しかしここで課題となったのが、自社人材の IT スキル向上であった。当時から Google Cloud による開発を手掛けてきた IT・デジタル推進室の村上 奨氏は次のように振り返る。

「見えにくくなっていたシステムを詳らかにするために、Google Cloud を導入し内製でクラウド化に踏み切ることになったのですが、それに見合ったスキルを持った社員がほとんどおらず、ルール策定もままならない状態でした」(村上氏)
エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社
IT・デジタル推進室 ストラテジー&ソリューショングループ デジタルソリューション・開発部
村上 奨氏

このような課題を解決するべくエイチ・ツー・オー リテイリングでは、Google Cloud のノウハウの豊富なパートナーとの二人三脚の体制を整えることにした。そこでパートナーとして選ばれたのがクラウドエースだ。IT・デジタル推進室 ストラテジー&ソリューショングループ デジタルソリューション・開発部 担当部長の杉山 恵一郎氏は次のように語る。

「クラウドエースは何と言っても Google Cloud のサポートにおいてナンバーワンのシステム ベンダーとして知られていますから、最初に声をかけました。当社は Google Cloud と AWS のマルチクラウド環境であり、それもふまえて当社の内製化の方向性などをしっかりと理解し、社員と同じ目線で支援してもらえるパートナーであると確信しました」(杉山氏)
エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社
IT・デジタル推進室 ストラテジー&ソリューショングループ
デジタルソリューション・開発部 担当部長
杉山 恵一郎氏

こうして 2022 年 6 月からクラウドエースとの二人三脚体制が始まり、クラウドエースのエンジニアも加わり Google Cloud 活用の内製化チームが発足した。

内製化を実現できたのはクラウドエースの「圧倒的な当事者意識」の支援だからこそ

クラウドエースの支援のもと、権限管理などのガバナンス整備や Google Cloud と AWS の用途に応じた棲み分けを意識したうえで Google Cloud  活用のガイドラインを作成した。そのうえで、以前から利用していた Google Workspace と親和性の高いデータ分析系のシステムを Google Cloud 上に展開。インフラ運用やアプリケーション開発などに関するさまざまなサポートをクラウドエースから受けることで、内製化プロジェクトは大きく前進することとなった。杉山氏と村上氏はクラウドエースの内製化支援について次のように述べる。

「当社のスタッフのクラウドに関する知見が十分ではないなか、IT スキルを向上するための勉強会やハンズオン セミナーの開催などをクラウドエースから積極的に支援してもらえたのが大きいですね。これによって Google Cloud 活用の基盤は整ったので、今年の 4 月からは新規アプリケーションの開発や、活用アイデアの社内発信といった次のステップへと進むことができました」(村上氏)

「内製化で重要なのは、自社ビジネスに精通している人間がニーズに応じて迅速にシステムを提供できることにあります。クラウドエースのエンジニアさんは当社のビジネスや課題を深く理解し、同じ目線で開発を伴走してくれました。これによって、我々が持っていなかった IT スキルを補完しながら、内製化のメリットを最大化できたと思います」(杉山氏)
隔てなく接する、エイチ・ツー・オー リテイリングとクラウドエースの Google Cloud 内製化チーム

内製化チームの一員となって開発を支援したクラウドエースはエイチ・ツー・オー リテイリングとの協業を次のように振り返る。

「我々としても一方的に内製化を支援するだけでなく、エイチ・ツー・オー リテイリングさんから多くのフィードバックをいただいたので、同じチームとして一緒に進化、進展、成長ができる関係性を築くことができました」(矢野氏)

「例えば Google Cloud の新しい機能などが発表された際に私から感想や情報を共有するのですが、そこからすぐに新機能を使ったアイデアがエイチ・ツー・オー リテイリングさんから提案されるなど、同じチームならではのスピード感や手応えを感じています」(杉本氏)

「今回のこのプロジェクトを通して、新しい技術もチャレンジしながら、チーム一体となって成功を喜んだりしました。私が勉強になることも多く、エイチ・ツー・オー リテイリングさんの内製化支援に携われて本当に良かったと思います」(菊池氏)

「私も同じ思いを抱いています。当社の新たな技術への挑戦を評価していただけるのはとても心強く、それによって当社のノウハウが貯まり、そこから新たな価値を提供するといった相互利益の関係を築けていると思います」(池永氏)

「このプロジェクトには、当事者意識を持って挑みました。互いに知見を共有し合いながら両社のメンバーでスクラム開発チームが形成されていて、とてもやりやすかったですね」(長野氏)
クラウドエース株式会社
技術本部 システム開発統括部 SRE部 シニアスペシャリスト 長野 太一氏(左上)
SRE部 シニアアソシエイト 矢野 健太氏(右上)
菊地 淳志氏(左中)
技術本部 システム開発部 杉本 栞氏(右中)
営業部 池永 貴裕氏(左下)

このような一体感のあるチームの支援もあり、2024 年 3 月に開催された Google Cloud Japan が主催する「生成 AI Innovation Awards」では、エイチ・ツー・オー リテイリングが開発した AI システム「Google フォームへの問い合わせを生成 AI で一次回答してみた(イルカくん)」が優秀賞を獲得した。

生成 AI Innovation Awards 最優秀賞決定:革新的なアイデアと技術が未来を拓く
https://cloud.google.com/blog/ja/products/ai-machine-learning/the-first-gen-ai-innovation-awards-grand-prize

プロジェクトを通して学んだ内製化のコツとは?

今後エイチ・ツー・オー リテイリングでは、さらなる Google Cloud 活用を進め、より多種多様な内製アプリケーションをグループ内で展開していく構えだ。なかでも生成 AI の活用については、新たなサービスの技術検証を行いつつ、その結果を内製チーム内のブログ等で情報共有しながら、利用促進に注力しているところだという。

「内製化を本格化し、新たなおもてなしを追求していくには、さらに IT スキルを底上げしていかなければなりません。クラウドエースさんには新機能のキャッチアップや当社のメンバーのスキルアップにつながるようなサポートを引き続きお願いしたいですね」と村上氏は期待を寄せる。

最後に杉山氏は、今回のプロジェクトを振り返りながら、内製化のコツについて語ってくれた。

「内製化と言っても最初から 100% 社内でまかなうのではなく、ほどよく外部からの支援を受けながら、内製化率を上げていくのがコツです。今回の取り組みから、クラウドエースさんのような同じ目線になってくれるパートナーと、企業間の壁をつくらずに伴走してもらうことが重要であると実感しましたね」(杉山氏)

※Google Cloud、Google Workspace は Google LLC の商標です。
※AWS は Amazon Technologies, Inc.の商標です。

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