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【速報まとめ】Google Cloud Next Tokyo ‘23 基調講演 Day 1
Welcome to Next Tokyo ‘23
こんにちは、クラウドエース システム開発部 SRE ディビジョンの佐久間と渡辺です。
2023 年 11 月 15 日、4 年ぶりにオフラインでの開催となった Google Cloud のカンファレンス イベント「Google Cloud Next Tokyo ’23」が幕を開けました。このイベントでは、Google Cloud における生成AI の最新動向と将来の方向性についての発表がされました。ここではその DAY 1 の基調講演の内容を要約してご紹介します。
Google Cloud 平手氏の挨拶
まず、グーグル・クラウド・ジャパン 日本代表の平手智行氏より挨拶があり、対面式のイベントを開催できたことに対しての喜びを述べられました。次に、生成AI は今年最も話題となったテクノロジーで、その活用が急速に進んでいる現状と、Google Cloud が生成AI の開発に積極的に取り組んでいることを強調していました。そして Google Cloud は、AI の開発を最優先事項とし、より大胆な進歩を目指して 「大胆かつ責任ある AI」 の開発に取り組んでいると語りました。これを実現するための指針となるのが 「責任ある AI の 原則」 であり、以下の 7 つを掲げました。
責任ある AI の 原則
また、Google Cloud の取り組みとして、以下の内容が発表されました。詳細は次項以降でご紹介します。
- Vertex AI プラットフォームの強化
- Google Workspace と Google Cloud の Duet AI
- Google Cloud の AI 活用セキュリティ ソリューションと信頼性向上への取り組み
Vertex AI プラットフォームの強化
続いて、クラウド AI・インダストリーソリューションズ プロダクト・マネージメント・ディレクターであるメナード氏が、Google Cloud の主要な生成AI 製品と、それらが高度な AI アプリケーションの構築やビジネスの革新にどのように貢献するかを紹介しました。その製品の 1 つが Vertex AI です。Vertex AI は、以下のような情報を提供します。
- 製造業における、顧客嗜好の変化に関するリアルタイム情報
- 医療従事者がより良い患者ケアを提供する方法
- メーカーの新規従業員の効率的なトレーニング方法など
Vertex AI における AI アプリケーション開発は、「Model Garden」 という大規模言語モデルのコレクションを使用して始められます。Model Garden では、開発者やデータ サイエンティスト、AI 使用者が、ユースケースや機能、サイズ、カスタマイズ能力、その他の要因に基づいて必要なアプローチを選択できます。Vertex AI は 100 以上のモデルを提供しており、Google、パートナー、オープンソース コミュニティから提供されたものが含まれています。これにより、開発者は大量のコレクションから選ぶことができ、Vertex AI を利用した新しいプロジェクトが急速に増加しています。今回の講演で取り上げられたモデルは以下の 4 つです。
- PaLM 2
- Codey
- Imagen
- マルチモーダル Embeddings
PaLM 2 は Vertex AI の基礎となる大規模言語モデルです。PaLM 2 を活用することで、すぐに文章の概要を取得したり、文書に関連する質問に答えるように AI をトレーニングしたりすることが可能となります。また、最近のリリースで入力トークンの長さが 4 倍に増加したことにより、約 100 ページ分の日本語テキスト プロンプトも処理できるようになりました。
Codey は、開発者がテキストをコードに変換するためのツールで、最新バージョンではコード生成とコードチャットの品質が最大 25% 向上しました。また、Imagen というモデルはテキストから画像を生成できます。10 種類の関連画像を瞬時に提供し、ブランドの一貫性と均一なユーザーエクスペリエンスを実現します。
さらに、マルチモーダル Embeddings によるレコメンド、セマンティック検索、分類などが可能となりました。これにより、テキストと画像の両方を利用して、よりコスト制御を行いながらテキストの画像の検索、レコメンドができるようになりました。
メナード氏が講演で特に強調していたのは、Vertex AI を構築する際に「エンタープライズ レディネス」を意識しているということです。これは、AI が安全で責任あるものでなければならないという Google Cloud の信念を反映しています。Vertex AI を使用すると、お客様は自分のデータを完全に制御できます。入力データ、メタデータ、モデルの出力、人間のフィードバックなど、これらのデータはすべてお客様のものであり、第三者に使用されることはありません。
さらに Vertex AI プラットフォームが開発者向けの市場で幅広い用途をカバーすることに触れ、その中でも特に Vertex AI Search と Vertex AI Conversation のサービスに焦点を当てました。Vertex AI Search は、様々な情報を予約するためのツールを短時間で構築することができ、企業のナレッジを社員により使いやすくします。一方、Vertex AI Conversation は、人間のようなチャットボットをクリックするだけで作成でき、ローコードの体験を提供します。これらのサービスは、お客様のデータを活用しながら、データ損失の心配なく、AI の機能を最大限に活用することができます。
デモでは、「グラウンディング」を用いて生成AI の課題であるハルシネーションを抑制するアプローチが紹介されました。この手法により、AI による不正確な情報の生成を抑制し、より信頼性の高い AI アプリケーションが実現されることが期待されています。
Google Workspace と Google Cloud の Duet AI
続いて、Google Workspace と Google Cloud に導入される「Duet AI」について発表がありました。
この発表では、Duet AI がユーザーの体験をどのように変化させるかに焦点が当てられました。
Google Workspace における Duet AI の進化
Google Workspace の成長と Duet AI の導入
Google Workspace は既に 30 億人のユーザーを抱えており、有償顧客は 1000 万人を超えていると述べられました。Duet AI はこれらのユーザーの中で、すでに 100 万人のユーザーに利用され、過去 1 年間で 300 以上の新機能がリリースされたと紹介されました。DuetAI はメール、ドキュメント、ミーティングなどの作業において、ユーザーに文脈に応じた提案を行うことで、作業の効率化を実現します。さらに、日本市場を重要視していると述べ、2024 年には日本語にも対応する予定と発表されました。
デモで紹介された機能の概要
デモでは、Googleドキュメントでのブログ作成、Google Meet でのメモ作成、テキストの読み上げ、300 以上の言語に対応するリアルタイム翻訳など、多様な機能が紹介されました。これらの機能は、ユーザーの作業をスムーズにし、生産性を高める重要な要素と言えるでしょう。
Google Cloud での Duet AI の展開
Duet AI による多角的なサポート
Google Cloud では、Duet AI が開発、運用、データ分析、データベース、セキュリティ分野でのサポートを提供すると発表されました。これには、コードの補完や生成、説明が含まれ、Google Cloud に最適化されたモデルとしてトレーニングされていると言及されました。
デモでの実用例の紹介
Duet AI を活用したデモでは、CloudRun でのアプリケーション開発、アラートに基づく問題特定、リアルタイムデータ分析のサポートが披露されました。これにより、開発者とデータアナリストの作業が大きく効率化されることが期待されます。
データベースとメモリストアの強化
データベース分野では、Oracle から Alloy DB への移行を サポートする「Database Migration Service」が紹介されました。Duet AI を用いることで、数秒でスキーマの再設計が可能になります。また、「Memorystore for Redis Cluster」の発表もあり、60 倍のスループット、10 倍のデータストレージ、テラバイト単位のデータ拡張が可能となりました。
Duet AI による効果
Duet AI は、ビジネスプロセスの強化と、データ分析に基づく効率的な作業環境の実現を目指していることが伝わりました。また、今年中の一般提供が予定されており、これによりユーザーの作業体験が大きく変わることが期待されます。
Google Cloud の AI 活用セキュリティ ソリューションと信頼性向上への取り組み
Google Cloud 執行役員ソリューションズ&テクノロジー担当である菅野氏からは、Google Cloud におけるセキュリティへの取り組みが紹介されました。Google Cloud は、高まるサイバーリスクへの対策として、AI とセキュリティを統合することで、以下の 3 つの価値を提供します。
- AI を用いた未知の脅威の事前検知
- 繰り返し作業を AI が自動化することによる生産性の向上
- 複雑な業務を AI が担当することによる人材不足の解消
Google Cloud のセキュリティは、脆弱性情報やマルウェア、攻撃者のプロファイルなどの脅威インテリジェンスが組み込まれた独自のセキュリティ特化型大規模言語モデル「Sec-PaLM 2」を用いて評価されています。現在 Google Cloud では、この AI を活用しつつ
- 最前線におけるサイバー攻撃からの防御
- Chronicle Security Operations を用いたセキュリティ運用のモダナイゼーション
- Google Cloud プラットフォーム自身のセキュリティ強化
という 3 つのユースケースに取り組んでいます。
また、Google Cloud のサービス「Assured Workloads」を利用することで、規制に準拠したワークロードをクラウド上で安全に運用することが可能になります。このサービスは、データを日本国内に限定し、定義されたルールに反する組織ポリシーの検出や暗号化方法の制御を行うことで、管理ミスを防ぎます。Assured Workloads は既に米国と欧州で展開されていましたが、今回日本でも利用可能となりました。現在、官公庁や金融、医療、インフラ業界などで利用されることが想定されています。
菅野氏は、セキュリティが顧客のデジタル トランスフォーメーション (DX) を妨げないよう、ビジネスを守りながら DX を推進するパートナーとしての役割を果たすことを目指していると述べました。
まとめ
ここまで、Google Cloud Next Tokyo ’23 の基調講演 Day 1 の内容を紹介してきました。生成AI は医療、開発支援、セキュリティなど多岐にわたる分野での応用例が示され、そのポテンシャルと責任ある利用が強調されました。また、「すべての人に、AI のもたらす恩恵を届けること」をテーマに、Google Cloud は最適な AI の活用を共に考えパートナーとして共に取り組む姿勢が伝わってきました。
※この記事は迅速な情報提供を重視し、速報として掲載しております。記事内に誤りがございましたら、後日訂正いたします。
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