こんにちは、クラウドエース システム開発部 Data/ML ディビジョンの髙鳥です。Google Cloud のカンファレンスイベント「Google Cloud Next’23」の 2 日目(2023 年 8 月 30 日(太平洋時間))に開催された「Developer Keynote: What’s Next for Your App?」の要約と感想をお届けします。2 日目の Keynote(基調講演) は、1 日目の講演とは異なり、開発者のための基調講演になります。今回は、Google Cloud Next’23 の基調講演の内容をご紹介します。 開発者の思いを要約した歌の生演奏から始まった本講演は、選出された開発者「Champion Inovato」を交えつつ、合間にエンジニアの体験談「LEGACY LORE」を挟むという米国らしいエンターテイメント性を含んだ独特な構成で、とても楽しく聴講できました。本記事では、文章でその楽しさを伝えることが難しい分、主な要点を簡潔にお伝えしていきます。0. 概要と構成以下 4 つの領域について、Google Cloud の次世代ツールのデモが紹介されました。ProductPlatformSecurityData加えて、デモの前に、各領域の重要トピックが 3 点紹介され、ライブの実演を交えて説明するという形式が取られました。 Keynote の動画は既に公開されているため、本記事ではデモの主要なトピックを紹介し、興味を引く技術要素を簡潔にまとめました。これらを以下の項目でご紹介します。目次 Toggle0. 概要と構成1. Product: AppSheet で始める AI 連携 with Duet AI2.Platform: Jump Start Solutions を用いた簡単プラットフォーム構築と CPU Boost によるエンハンス3.Security: Binary Authorization によるセキュアなデプロイと AI で進化した Security Command Center4. Data: BigQuery で完結するセキュアな管理と AI・OSS 連携5.【補足】LEGACY LORE について6.まとめまた、各領域の講演の合間には、エンジニアのレガシーシステムに関する実体験「LEGACY LORE (伝承)」が語られており、こちらも補足として記載しました。 気になるトピックだけでも、参考にしていただければ幸いです。1. Product: AppSheet で始める AI 連携 with Duet AI講演動画AppSheet で AI アプリを作るデモを実施しながら、以下の重要トピックが紹介されました。Build a custom application with AppSheet and Duet AI(=AppSeetとDuet AI を使ってカスタムアプリケーションを構築する)Easily capture data with a phone or tablet(=携帯やタブレットから簡単にデータを取得する)Enhance and automate with AI(=AIを使ってアプリをより改善し自動化する) 興味深かった技術要素について“AppSheet for Google Chat” を使って、自分が作りたいアプリを Duet AI と相談して、AppSheet で作成する機能。 (引用元: Google Cloud Next ’23—Developer Keynote )Vertex AI との連携は、自分で構築する必要がある。従って、現状ではノーコードでの連携は難しそうだと感じました。AppSheet のデータは裏で Cloud Spanner が動いていること。 2.Platform: Jump Start Solutions を用いた簡単プラットフォーム構築と CPU Boost によるエンハンス講演動画 ”Jump Start Solutions” を用いてシステムを構築するデモを実施しながら、以下の重要トピックを紹介されていました。Our responsible to scaling events (=イベントに対してスケールすることへの責任)Make our infrastructure easier to remain(=インフラ保守を容易にする)Build a more personalized customer experience(=顧客ごとに調整した体験を構築する) 興味深かった技術要素について”Jump Start Solutions” そのものについて(参考:公式ブログ)ソリューションは現状 15 個(2023/8/31 時点)で、以前より増えている。CPU Booster を使うと Cold start での立ち上がり時間を短縮できる。(参考:公式ブログ)3.Security: Binary Authorization によるセキュアなデプロイと AI で進化した Security Command Center講演動画コンテナイメージをビルドする際に Binary Autorization で脆弱性を検知するデモと、AI 技術で進化した Security Command Center についてのデモを実施しながら、以下の重要トピックを紹介しています。Secure the dev environment(=セキュアな開発環境)Ensure the build process integrity(=ビルドプロセスの整合性を確保する)Protect app in the production(=本番環境のアプリを保護する) 興味深かった技術要素についてBinary Authorization については刷新されたことはない模様(参考:公式ブログ)Security Command Center と AI の連携(参考:公式ブログ)特にセキュリティ攻撃に対するシュミレーション機能4. Data: BigQuery で完結するセキュアな管理と AI・OSS 連携講演動画”Jump Start Solutions” を用いて BigQuery に分析レイクハウスを構築した後、以下の重要トピックが紹介されていました。Simplify data operations including security(=セキュリティを含めたデータ管理を単純化する)Put our data to work with AI(=AIを利用したデータ活用)Use the best open source and managed tools(=ベストなオープンソースと管理ツールを利用する) 興味深かった技術要素についてBigQuery Studio で利用するノートブックは Colabo Pro であり、Vertex AI にプレビューを実装している。(参考:関連公式ブログ)Cloud Storage 内の動画データを外部オブジェクトテーブルとして定義し、BigQuery 内のリモート関数で外部 AI に対する予測を実行。最新の BigQuery の使い方として興味深かった。BigLake を用いた権限の分離。接続先の Cloud Storage のデータに権限がなくとも、BigLake テーブルに対する権限のみでよい。5.【補足】LEGACY LORE について4 つのテーマについて講話があったので、以下で簡単にまとめました。One litte boolただ 1 つの bool 値を変えるだけで、半年かかっていたシステムについて。共通プラットフォームでの相互連携の重要性を説いている。Zero dayLog4j の脆弱性対応についてGoogle Cloud は、買収による事業拡大をしているため、バックエンドに一貫性がなく、対応が極めて困難になってしまった。しかし、密なコミュニケーションと原始的な方法に立ち返ることで顧客への影響は少なかった。Spannacles(Spannacles は、特別な問題<エッジケース>のチーム内呼称)レガシーからモダンシステムへのデータ移行について。Spanner に Email と Gmail でータを移行する内容。Giantキロバイトメモリの PC からGoogle Cloud のアーキテクチャ(Collosus やBorg)に至るまでの体験について。新しいものを作るためには、しばしばレガシーと呼ばれる過去「巨人(Giant)」から学ぶ必要があるとのこと。 6.まとめ講演のデモを見ていて、Duet AI のように、LLM が開発体験をサポートすることが今後は当然になっていくと強く感じました。 Jump Start Solution によるワンクリックシステム構築を含め、これまでエンジニアに求められていたことが大きく変わる可能性があると感じ、期待とわずかな不安を覚えています。 また、講演の中では、「レガシー」という言葉が頻繁に使われていました。一般的には「時代遅れ」や「遺産」のような意味合いで使われるこの言葉ですが、今回は悪い意味ではなく、「長年使われ続けている優れたソフトウェア」という意味も含んでいるようです。 良い意味で、今回紹介されたツールは新しいレガシー(new legacy)になる可能性が大いにあると思います。キャッチアップが早ければ早いほど容易なので、少しでも興味がある方は、ぜひ動画をご覧ください。 ※この記事は迅速な情報提供を重視し、速報として掲載しております。もし記事内に誤りがございましたら、後日訂正いたします。