CBDC中央銀行デジタル通貨とは 概要や仕組みを5分で入門

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こんにちは、クラウドエース編集部です。

社会のあらゆる物事・サービスのデジタル化が急速に進む中、通貨の新たな形として「 CBDC(CBDC:Central Bank Digital Currency = 中央銀行デジタル通貨)」が注目されています。

今回は、CBDC 中央銀行デジタル通貨の概念やメリット・デメリット、今後の展望について紹介していきます。

CBDC 中央銀行デジタル通貨とは?定義をわかりやすく解説

CBDC 中央銀行デジタル通貨とは、「中央銀行が法定通貨として発行する、デジタル化された通貨」です。
ここで言う「通貨」には紙幣と硬貨、そして中央銀行当座預金が含まれます。

日本銀行の HP では CBDC は「デジタル化されていること」「円などの法定通貨建てであること」「中央銀行の債務として発行されること」 を満たすものと定義されています。

日本銀行 : 中央銀行デジタル通貨とは何ですか?

CBDC と仮想通貨との違い

「デジタルの貨幣」と聞くと、「仮想通貨と何が違うの?」と疑問に思う人もいるかもしれません。

CBDC と仮想通貨の大きな違いは、CBDC は発行元が中央銀行であり、国家が運営・管理を行うのに対して、仮想通貨は特定の管理者・発行元が存在せず、国に依存しない仕組みであることです。

このような違いから CBDC  は、国が価値を担保し価格変動が起こりにくいという特徴があります。
また、流動形態としては従来の現金のように、日銀が発行し、個人の銀行口座を通じて取引が行われます。

一方で仮想通貨は、国家が価値を保証することはありません。
そのため、価格変動も激しいです。
また、発行や取引の承認はネットワークの参加者によって行われ、所有する仮想通貨は「ウォレット」と呼ばれる場所に保管されます。

CBDC 中央銀行デジタル通貨のメリット

このような  CBDC 中央銀行デジタル通貨の発行には、どのようなメリットがあるのでしょうか。

1. キャッシュレス化・デジタル化への適応

1 つ目のメリットは急激な社会のキャッシュレス化・デジタル化に適応できるようになることです。

新型コロナウイルスの影響もあり、近年で社会のキャッシュレス化が急速に進みました。
キャッシュレス決済が一般化した国では、現金の流通残高が低下して、それを手に入れるコストが高くなるケースが想定されています。
しかし CBDC があれば、そのような状況を免れることができます。

また、利用者にとっては現金が不要となれば、物理的な紛失や盗難のリスクが低くなるというメリットもあるでしょう。

2. 通貨発行に関するコスト削減と決済システムの効率化

2 つ目は、紙幣に関するコスト削減と決済システムの効率化です。

現在の物理的な硬貨や紙幣といった通貨は、製造、流通、廃棄のために大きなコストがかかっています。
また、各店舗に置かれるレジや ATM などの管理にも時間や人件費が発生します。
CBDC が実現されれば、このような現金の発行・管理におけるさまざまなコストを削減できます。

また、あらゆる決済システムを効率化できることも CBDC のメリットです。
収入、支出がすべて記録されるため、納税などの手続きが楽になったり、手間と時間のかかる国際送金の手順が簡略化されたりすることが期待されています。

3. 金融包摂の推進

3 つ目に、金融包摂の推進が挙げられます。
金融包摂とは、誰に対しても平等に金融サービスを利用する機会が提供されている状態のことです。

現在、発展途上国では銀行口座を持っていない人が多くいたり、先進国でもデジタル技術の活用を難しく感じる人がいたりします。
CBDC が実現されれば、このような人たちに対しても利便性の高い金融サービスを低コストで提供できるようになるのです。

4. マネーロンダリングや犯罪の防止

4 つ目は、マネーロンダリングや犯罪の防止です。

現金のデメリットのひとつに、匿名性が高いため、マネーロンダリングや脱税、犯罪組織への資金流入などが起きても発覚しにくいことがあります。
しかし、CBDC では取引履歴が全て記録されるため、お金の流れを全て追跡することが可能です。
これにより、違法行為の抑止効果を期待できると言われています。

CBDC 中央銀行デジタル通貨のデメリット

このように、CBDC は全ての人に平等な金融サービスを提供したり、利便性を高めたりするメリットが期待されています。
しかし、デジタル上の新たな通貨によって引き起こされるデメリットやリスクも指摘されています。

1. 金融仲介機能の衰退

1 つ目は、金融仲介機能の衰退です。

CBDC が普及すると、流通している現金だけでなく、個人の銀行預金から CBDC へ資金が流出する可能性があります。
これが起きると、銀行にとっては預金や貸出などの中枢事業が縮小するリスクがあります。
同様に、CBDC が現金の代替として広く普及した場合は、現存するキャッシュレス決済事業者の存続も危うくなるでしょう。

2. 信用不安の伝播の高速化

2 つ目は、信用不安の伝播スピードが高速化することです。

銀行が倒産するなどの噂が流れた際に、預金者が窓口や ATM に殺到する「取り付け騒ぎ」が起こることがあります。
CBDC が普及すると、物理的にお金を引き出す行為が必要なくなるため、その伝播スピードが速まる可能性が指摘されています。

短時間に大量の預金が大量に CBDC に移動すると、銀行の原資が減り、貸出業務などに支障が出ることが懸念されています。

サイバー攻撃や災害時のリスク増大

3 つ目は、サイバー攻撃や災害時のリスクが増大することです。

CBDC はネット上で動く仕組みである以上、サイバー攻撃の恐れが高まります。
また、災害などにより運営システムが停止した場合に決済機能が使えなくなってしまうリスクもあります。

 なお、現在は災害時の対応として、オフライン決済への対応が議論されています。
具体的には、クレジットカードのオフライン認証や IC カードでの代替などの解決手段が考えられるでしょう。

取引の匿名性の希薄化

4 つ目は、取引の匿名性が希薄化することです。

 匿名性の希薄化はマネーロンダリングや犯罪抑止という点でメリットですが、中央銀行に全ての金融の流れを把握されるというシステムは民主主義的ではないことも事実です。

匿名性を担保しつつ犯罪などを抑止するための案として、個人認証においてはマイナンバーカード制度を利用しつつ実際の取引では無記名のウォレットを利用する、一定額までは匿名で使えるようにするなど制度設計案が出ています。

CBDC の将来性・今後の展望

CBDC は、現在のデジタル化の発展に伴い、今後さらに発展していくと予想されています。

例えば日銀は 2021 年に「将来『 CBDC を一つの要素とする決済システム』が世界のスタンダードとなる可能性はある」との考えを示し、CBDC の実証実験を行っています。

CBDC のメリットの一つは、国際送金の簡略化です。
これは、双方の国が CBDC を確立しているからこそ得られる利点です。
また、世界的に CBDC が普及した場合、自国がそれを導入していなければ、経済的なインフラの整備といった点から遅れているとみなされてしまうでしょう。

このような流れから、今後も CBDC の普及は世界各国で広まると予想されます。

CBDC 各国の動向について

それでは、世界各国において CBDC  はどの程度進められているのでしょうか。

先進国のうち、特に CBDC の実現に積極的なのは中国でしょう。
同国では、国内の資金の流れの把握や、人民元の国際化といった狙いから、「デジタル人民元」を開発し、一部地域で実証実験として運用をスタートさせています。
実験対象地域は現在 23 にものぼり、日常の買い物から公共料金の支払いまで、さまざまなシーンでデジタル人民元を利用できるようになっています。

そのほかの主要国においても CBDC の研究は進んでいます。
例えば EU においては「デジタルユーロ」の発行に向けて研究が進められており、その開発は早ければ 2023 年に始まり、2026 年には展開される可能性があるとしています。
また、アメリカでは 2022 年 3 月に「デジタルドル」の発行に向けた課題を検証するよう、大統領から指示が出されました。

このように、日本も含めて CBDC の積極的な調査や実証実験が進められています。
しかし、どの主要国においてもまだ正式発行に至っておらず、研究段階にあると言って良いでしょう。

まとめ

ここまで、CBDC の概念やメリット・デメリット、今後の展望について紹介してきました。この記事を参考に、新たな通貨の形である CBDC への理解を深めてみてください。

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