新たな組織の形『DAO』 と『株式会社』の特徴や違いを5分で解説

  • IT・トレンド記事
5min

こんにちは、クラウドエース編集部です。

NFT や仮想通貨のニュースなどで耳にすることが増えている「 DAO 」という言葉。
「ブロックチェーンを使った、新しい組織の形」と説明されることも多いですが、いまいちピンときませんよね。

今回は、DAO とは何かということについて、従来の組織の代表的な形である「株式会社」と比較しながらわかりやすく説明していきます。
DAO のメリットやリスクについても詳しく解説しているので、DAO への参加を検討している方もぜひ参考にしてみてください。

DAO とは:中央集権的な管理者がいないコミュニティ

DAO とは「 Decentralized Autonomous Organization 」の略称であり、日本語では「分散型自律組織」と呼ばれています。

DAO の特徴を一言で表すと「中央集権的な管理者がいないコミュニティ」と言えます。
これまで、組織の運営にあたっては権力を持つリーダーが中央に置かれることが一般的でした。
社長の意思決定のもとに運営される株式会社などがその代表例ですね。
DAO では、そのようなリーダーを置かず、参加者全員が平等かつ自由な立場で組織運営することを目指します。

このような新たな組織の在り方は、主に「ブロックチェーン」「ガバナンストークン」「スマートコントラクト」といった技術によって実現されています。

ブロックチェーンとは「暗号技術を用いて取引履歴を 1 本の鎖のように繋げて記録することで、改ざん不可能なデータ保存を実現する技術」のことです。
「改ざん不可能」という特徴を持つブロックチェーン上で形成される組織である DAO は、取引履歴や契約などに不正がなく、高い正当性を維持した運営が可能です。

「ガバナンストークン」とは、DAO の参加者に対して発行される仮想通貨です。
これを保有することで、意思決定のための投票権を保有できる仕組みとなっています。
また、ガバナンストークンは売買することも可能です。

「スマートコントラクト」とは、ブロックチェーン上で動く、事前に設定した条件を満たした場合に自動的にプログラムが実行されるという仕組みです。
DAO では、ガバナンストークンの投票によって決定された方針を、スマートコントラクトによって実行します。

DAO と株式会社の違い

ここからは、新たな組織の形である DAO の特徴について、従来の組織運営の一般的な形である「株式会社」と比較しながら詳しく解説していきます。

社長がいない

1 つ目の違いは、社長のような意思決定者の不在です。

株式会社では、社長や役職者など一部の人たちによってトップダウンで経営方針や企業戦略が決められることが一般的です。

しかし DAO では、組織の資金の使い方やルールの変更などについての意思決定は、参加者全員によるガバナンストークンの投票によって決定されます。
参加者全員が役職や年齢に関わらず平等な立場で自律的・民主的に運営できることが、株式会社との大きな違いです。

あらゆる取引・契約が公開される

2 つ目の違いは、組織内で起きたあらゆる取引・契約が公開されることです。

株式会社では、企業経営に関わる重要な取引や契約が、一部の上層部によって密室で行われることも少なくありません。
このような状況では、万が一不正が行われたとしても、それを発見することは難しいでしょう。

しかし DAO の運営方針についての議論は、誰でもアクセス可能な開かれた場所で行われます。
方針の決定は参加者全員の投票によって行われ、最終的な意思決定はブロックチェーン上に記録されます。
ブロックチェーン上の記録は書き換え不可能で、かつ全員に公開されているため、高い正当性・透明性を維持できるのです。

トークンで資金調達が可能

3 つ目の違いは、トークンを発行することによって資金調達が可能なことです。

株式会社を起業したい、上場したいと考える場合には開業資金としてまとまったお金が必要になります。
平均的な開業費用は 1,000 万円前後というデータもあります。

しかし、DAO の場合は「セキュリティトークン」と呼ばれるトークン化された証券を発行することにより資金調達が可能です。
セキュリティトークンとは、株式会社で言う「有価証券」です。
将来性が期待できる DAO であれば、多くの人にセキュリティトークンを購入してもらうことで資金調達ができるということです。

株式公開の場合は承認までに長い時間とコストがかかりますが、トークンであれば資金調達を開始するまでの時間と費用を抑えられるのです。

誰でも参加できる

4 つ目の違いは、国籍、性別、職業などに関わらず誰でも組織に参加できることです。

株式会社においても採用時の国籍や性別による差別は減ってきているというものの、住んでいる場所や年齢の関係から、完全に自由に好きな企業に所属できるというわけではありません。

しかし DAO では、インターネット環境さえあれば国籍、性別、居住地、職業、年齢に縛られず誰でも参加できます。
さらに、DAO では匿名性も認められてます。
実名を明かさずに運営に参加できるということもメリットの一つでしょう。

DAO の課題やリスク

このように、民主的で高い透明性を維持しながら組織を運営できる DAO。
数多くのメリットがありますが、DAO の運営にあたっては認識しておくべきリスクも存在します。

意思決定が遅滞しやすい

1 つ目のリスクは、意思決定が遅滞しやすいことです。

全員が平等な立場で民主的な組織運営を叶えられるのは DAO のメリットですが、意思決定の際にガバナンストークンによる投票が必要なため、時間がかかってしまいます。

これは特に、ハッキングや欠陥が見つかったなどの緊急時においてデメリットになります。
迅速な対応が必要となる場合であっても、全員の投票を終えてからでなければ、対処方法を決定できないのです。

法的に未整備な部分がある

2 つ目のリスクは、法的に未整備な部分があることです。

DAO はまだできてまもない組織形態であるため、法的な整備が追いついていない部分が大きいです。

例えば DAO の運営によって収益が出た場合、誰がどう納税するのか、どこの国が管轄するのかといった点がルールとして決められていません。
現行の法律では、DAO が法人であるのかどうかなどの位置付けが定まっていないのです。

また、消費者保護やセキュリティに関する法律も整備されていません。
ハッキングなどの犯罪に遭った場合も、被害総額が補償されるとは限らないことも認識しておきましょう。

ハッキングリスクの存在

3 つ目のリスクは、ハッキングについてです。

DAO はブロックチェーン上で形成される組織であるため、ハッキングのリスクが常にあります。
実際に、2016 年にはイーサリアムで構築されている「 The DAO 」という組織がハッキングに遭い、当時の価格で約 52 億円分もの仮想通貨が盗まれてしまいました。
同事件においては、ブロックチェーンの記録をハッキング前に戻すことで資産を取り戻していますが、このような犯罪は実際に起こり得るのです。

まとめ

ここまで、DAO とは何か、従来の株式会社との違いは何かということについて紹介してきました。DAO への参加についてお悩みの方や、起業や新たな組織の立ち上げを検討している方は、本記事を参考にしてみてください。

合わせて読みたい